歌う娘
うたという媒体は力強いのだ、と
年甲斐もなく一緒に踊った夜から思っている
うまく歌えばいろいろな人に心を伝えられる。
あちこちで歌われて、僕の心が世界が、波のように伝播していく。
歌を作るのは難しいけれど。
歌う娘がいて、
かわいい服を着て、とても人気。
彼女のうたにはみんなが共感して、みんなが歌う。
いろんなテレビで紹介されて、海だって渡っていく。
でも誰かがふとそのうたの歌詞を知りたくなって、
ネットで検索したときに、やっとその人は
そのうたと初めて出会うのかもしれない。
初めて、気づくのかもしれない。
みんな訳も分からず歌っているけれど、
その奥にある思いが、
あまりにもきれいでバカバカしいということに。
うたになって軽くなる言葉、重くなる言葉、
愛してるあいしてると馬鹿みたいにのたまい続けるうたがあって、
キスしてキスしてと狂ったように言い続けるうたがあって、
いい子は損ばかりねと一言だけ言ううたがあって、
重くなる言葉、軽くなる言葉。
歌う娘が倒れた、
彼女はきっとあと数年の命だけど、
でも彼女のうたは死なない、
うらやましいね。
紅白歌合戦の衣装は面白いです。