ツェツィーリアは俺のヨメ
なあなあ、お前今暇そうだし、私の相談に付き合ってくれないか。
遠慮せず忌憚ない意見を言って欲しい。
付き合ってくれるか、ありがとう。
ツェツィーリアは俺のヨメ、いや将来的な嫁で、現在は婚約者だ。因みに私の一人称は普段私、だが、ことこのセンテンスに限っては俺、を使ってみた。
カッコつけちゃって〜、とか言わないでくれ。切実な事情があるんだ。...実はここだけの話、ツェツィーリアは一人称は「私」が好きみたいなんだ。
私は、この国の王太子だ。いや、私はいわゆる電波系ではない。ってお前、からかうなよ。っ、というのも、私は生まれた時から、前世の記憶というやつを持っていたので、二十一世紀には珍しくなっていた王権の強い王国というものに違和感があるのだ。おい、お前もだろ、全く。
俺嫁ツェツィーリアは、透き通った水色の可愛らしい猫目に細くて高い女優さんみたいな鼻梁、細い面を柔らかく波打つ銀髪で彩っており、それはもう可愛らしくて美しくて、美幼女から美少女に変わりかけていることを表すかのような、もはや色気すらある唇から紡ぎ出される言葉は、それだけでこの世の真理にすら思える。
どうだ、羨ましいか。あーハイハイ嫉妬してるんですね〜。
あ....まぁ、ツェツィーリアレベルは中々ないしな。悪い悪い。元気だせよ。お前にこんなこと言うべきじゃなかったな。
といっても、私自身もそれなりに、というかかなり顔は整っているし、妹や他の幼馴染のボーイズも中々の美男美女揃いなので、私がツェツィーリアを愛しているのは容姿だけが理由なわけではない。
おい、当たり前だろ。私をなんだと思っているんだ。ツェツィーリアファンクラブ会長だぞ。義父にもこの座は譲らないぞ。
まだ結婚してないのに義父とかマジでないわ、とか言わないでくれ。私の中では決定事項だ。お前、次はドヤ顔するなとか言うつもりだろう、ズバリか。
ただ、性格を理由にして恋をしていると大声で宣言する人に私が前世も今世も常々言ってやりたいと思っているのは、性格も顔と同様、その人を構成する要素の一つに過ぎないってことだ。
すなわち、私たちは人間という考える葦として、いろいろな条件を最も高い基準で、または高い優先順位で満たす相手に恋をしているのだと言える。
そういう点で、大人達が子供達の恋を、恋に恋しているといって嗤うのは、自分たちをも恋に恋しているといって嗤っているのと同じだよな。
例えば、ミニスカ女子高校生がファミレスで、「○○君って、性格も良くて、勉強もできて、運動もできて、チョーカッコいいよネ〜、マジヤバい〜♥︎すき〜♥︎♥︎」と言っているのと、ボタンを上から二つ三つ外したお色気ムンムンの女性事務員がシャレオツなBARで『○○君って、収入高そうだな』と思いながら、「ねぇ、今日は、帰りたくなぃ...♥︎」と言っているのは、根本的には同じことだろ。そう思わないか?
オイッ、話が長いからって腰を上げないでくれ。仕方が無い、私の秘蔵のツェツィーリアの写真一枚やるから。え、いらない?お前、マジで聖人みたいに欲がないな。
変に哲学的なことをいったが、私が言いたいのは、俺嫁ツェツィが容姿も中身も最高だということだ。
本人に了承をとっていないのにツェツィ呼びをするのはキモいとか言わないでくれ。
オホン。三歳でツェツィの婚約者となった私は、彼女の愛する人になるべく、それからずっと彼女の好みの異性のタイプについて研究し続けている。因みにツェツィーリアは最近の男子の傾向に反して、グイグイくる系のドS男子が好きだ。鼻筋が高く通っている男が好きだし、雰囲気イケメンは許さない系女子だ。髪は黒髪が好きだ。声の好みはまだはっきりとは判明していない。
あっお前、ツェツィの好みを知ったからって、ツェツィに近づくなよ。ツェツィは俺のだ。
ンンッ。自惚れも若干、ほんの若干入っているかもしれないが、これらは私にほぼ完全に一致している。そう思わないか?ほぼ、というのは声の好みはまだはっきりとは判明していないからな。
私は君も知っているとおり、王子キャラにしては珍しくサラサラの黒髪だし、もちろん鼻筋は通っているし、ツェツィの困っている顔も泣き顔も大好きだから、多分Sだ。まあ、これに関しては、ツェツィーリアならどんなときも好きだけど。
ただ、どうしようもなくて私に助けを求めてくるときのツェツィーリアは最高に可愛いんだ。そんなときは彼女を何処かへ閉じ込めて私以外何も目に入らないようにしてやりたくなるよ。
いや、そのっ、お、王国は元々、し、神獣の立てた国だとされているので、王家の者は番いというか、自分の相手の女性をベタベタに溺愛することが多いのであるからして、わっ私がヤンデレなわけではないぞっ。
...失礼。ただ最近、ツェツィーリアの七歳の時、馬をみて「サラブレッドなんだ」と言ったのを聞いてびっくりした私のせいでツェツィーリアが落馬してからツェツィーリアは雰囲気が少し変わり、しかも、七歳までの記憶も無いようだった。元々蜂蜜みたいだった髪色も、銀髪に変わった。ツェツィーリア本人は、白髪だと思っているらしい。綺麗なのにな。
最近ツェツィーリアが冷たくなったから、私はなんとも攻めあぐねている。昔はもっとチョロイン属性だった筈なのに。
おい、ツェツィーリア逃げてーとか言うな。っていうかツェツィーリアの名を呼ぶな。減る。
周りの美形の多さからして、乙女ゲーム的何かが起こりそうだなと思っていた入学パーティでは、俺史上最強の男の娘が挨拶に来ていただけだった。いや、実際は女顔の男の子なだけだったが。しかもツェツィーリアレベルには到底...ね。男装だと思い込んでいたツェツィーリアはマジでぐう可愛だった。
はいはいキモくないキモくない、席も立たない。いや、お願い、立たないで。
それ以来、ツェツィーリアは「あの薔薇はそういう....!!」とか、「薔薇薔薇しい...!!」とか呟いたりしていて、なんか近寄りがたいんだ。っていうか、俺は男になんか興味ないからな!ツェツィーリアが、好きなんだ。俺にはツェツィーリアしかいないんだ。
浮気夫の言い訳みたいだとか言わないでくれよ。
今日こそは俺嫁ツェツィーリアの心を奪おうと、私は今日もツェツィーリアのいるフルストイ家に向かう。