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どうしてこうなった

 どうしてこうなった?


 

 ただいま旅の途中なり。



 ちなみにどっかの知らない商人のキャラバンの護衛をしている自称兄もとい元ドラゴンの男。名前はウィルらしい。って本名はまだ知らないんだもん。



「とりあえず、俺の名はウィルな。そしてお前は妹のベルだ」



 ベルって名前はちなみに村娘Aだった時の名前なので、マミの意識が戻ってからは実になじみがない。まあ、とりあえずっていうくらいだから、あの男の名前も本当かどうか怪しい。ごく普通にある名前だしね。


 それになんで妹扱い?まあ、マミの今の年を考えたら仕方ないのかも。



 10歳は前世でも今生でも十分にまだ幼い。あと数年したら、子供が生まれるようになったらきっとたぶん、村人Bの嫁になり、あの村で子供を産んで育てて年を取って亡くなる人生だったはず。


 それでも、10歳は子供と言っても十分に村にとっては働き手だった。


 村の女の子たちは小さいころから村人たちの子供のお守りをさせられた。当たり前のように料理その他家事全般は仕込まれた。


 男の子だったら、村の共同の畑とかの重労働があったし、周辺の森で狩りもしなければならなかっただろう。


 前世の世界と違い、物にあふれて様々な教育がされた平穏な世界じゃないのだから、この世界の小さな村では自給自足は当然、村の周辺の森に薪拾いに行ったり、食べられる草や薬草を集めたり、男たちが狩ってきた動物の処理、うう、これが一番苦手だったががんばった。

 

 それが生きていくうえでの当たり前のことで、前世の時のようになんで生きていくのかなどと考える余裕もなく、毎日を精一杯生きる。今日も無事に生き延びられたと感謝するのが当たり前。


 それこそ、病気になったら、役立たず。とにかく毎日生きていくことだけが当たり前の毎日では、役立たずは自力で病気を治すか死ぬしかない。一応は最初は薬草とか与えられるが、それでも治らないようなら、村人たちは平然と切り捨てる。


 自分が生きていくことが精一杯な世界で、他人にまで優しくできたなら、それは自分の死につながる。やせた土地で実りも少なく、村の人口も制限されていた。つまり、働かざるもの食うべからず。

 

 前世の記憶での物語でしかなかった姥捨て山、実際にありましたよこの世界に。ついでに言うなら、子供たちも口減らしの対象。役に立たなかったら平然と捨てる。


 捨てられないように必死に働くしかなかったわけだから、まあ、子供と言っても生きる本能に必死だったわけで、そういう関係だから、マミがドラゴンの生贄にされても親も悲しまないし、親に捨てられたマミもそんなものと理解するしかない。


 

 ウィル(仮)に連れられて行った先は、見たこともない大きな町だった。もちろん、前世のごく普通の町感覚ではない。中心部に一応商店街らしきものがあったと思うがやはり、前世のさびれた村感覚。


 そこで、ウィル(仮を付けるのも面倒なのでこれからは略)は前世でよく読んだ小説の冒険者っぽ格好。ゲームで言うと初心者装備?シャツ数枚とズボン数枚と皮鎧っぽいものと歩きやすそうなブーツとリュックサックの親戚みたいなものを買った。


 私には村娘Aよりもちょっと立派なブラウスとスカートを同じく数枚ずつとやはり履きやすいブーツと小ぶりなリュックサックもどきを買い、それに着替えさせられた後、あの屋敷で着せられた服と靴をお金の代わりに置いてきた。ちなみにあの服と靴ってかなり高価なものだったらしい。古着屋の主人が「これは王都でもめったに見られない極上品ですな」と感心していたのだから。


 おい、そんなもの気軽にこんだけの服と交換でいいのかって問い詰めたかったが、ウィルはさらに店の主人から多少お金っぽい物を受け取っていたので、かなりの値段が付いたのだろうな。あれは前世で言う名のあるブランドのオートクチュールの一点もの並みの価値があったんだろうと思うことにした。


 そのあと、武器屋で結構大きめの大剣を買い、マミには小ぶりの短剣が渡されたが、こんなものをどうやって使えというのかと思ったが、仕方なく、自分から口を利く気がなかったので受け取っておいた。


 あとで、なんとなく、短剣の鞘ごと紐でくくってスカートの内側に縫い付けた。よく小説やゲームでは太ももの内側にって設定あるけれど、あれってやっぱりさ歩きづらいし、短剣が突き刺さって足に怪我したらどうなのよって思うから、マミ的にはスカートの内側に縫い付けることしか思いつかなかった。


 実際、短剣使ってマミが何かできるなんてこれっぽっちも思わない。前世でも普通の一般人、今生でも村娘Aには短剣を振り回すほどの力も技も持っていない。まあ、出来るとすれば、包丁がわりに料理にでも使うかってそんな気分だ。


 それから、ウィルはマミをその街の宿に残すとどこかに出かけて行った。



 それで今、旅の途中。



 ウィル曰く、冒険者として生活していたが、親を流行り病で亡くして、妹一人だけを置いていくわけにはいかないし、仕方なく冒険者を辞めて、妹と一緒にいられるように商人の護衛として雇ってもらうことにしたらしい。


 冒険者という言葉に、ああ、やっぱり異世界なんだなあと何気に感心してたのは内緒の話。


 ちなみにウィルの冒険者のクラスはかなり高かったらしい。それもそうだなドラゴンだし。


 なもので、あっさりとこの商人キャラバンの護衛の仕事にありついたそうだ。


 商人キャラバンといってもいろいろあって、このキャラバンには女も子供もいる。いくつかの家族単位で生活しながらあちこちを回っているらしいのでマミがここにいても違和感がないらしい。



 この商人キャラバンの子供たちはみんな男の子ばかりだった。まあ、当然なのかも。普通女の子は旅しないよね。



 なのでただ今絶賛かまわれ中。



 髪をとかされては、様々な髪形にされている。まるっきり、お姉さんたちの玩具状態だ。次々にかわるがわる様々な髪形を試されている。


 恥ずかしいからいい加減やめてほしいと思いながらも、マミは言えずにいる。

とりあえず、せっかくの異世界、旅行をさせてみることにしました。

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