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決戦、宇宙の果て

ーお前達は此処で待て、決着はすぐにつくー

 建太達が見ている前で、黒豹の姿の輪郭がぼやけ始め、透明になり、完全に消えた。

ーいきなり消えたらお前達が不安がるから、ゆっくり消えてやった。大サービスだー

 黒豹が何処にいるのか分からなかった。だが、皆は黒豹の目に見えない大きな体内にいるような感じ、温もり安らぐ気分の中にいるような感覚を持った。

 その心地好い感覚が消えた時、皆は勇躍として決戦の場に向かう黒豹の姿を心に浮かべた。


 黒豹やドラゴンレベルの宇宙意識は、人間が次元を変え多様に存在し生息する世界の全てを知っている。知っているが関りを持たない。

 ドラゴンが関りを持とうとしたのを感知し、関わりを阻止すべく行動して、黒豹も関りを持たされた。

 黒豹がエネルギーの探知網を広げた。ドラゴンのエネルギーと接触した。

 人間には見えないエネルギーにも色が有る。ドラゴンその物の色。違う色が一色。その一色も少し輝きが違う色が混ざっている。肉体がある人間意識の色と、肉体が消滅し完全に離脱した人間意識の色。黒豹はドラゴンの力が増大した理由を理解した。

 黒豹が感知出来ない所で、肉体から完全離脱した人間意識に接触していたのだ。

 純然たる意識であるから支配は出来ない。格を上げてやるとか甘言を弄して、人間意識が自らの意志でドラゴンの意識に吸収されるように仕向けたのだと、黒豹は結論付けた。

 黒豹はドラゴンのエネルギーに対して、強烈な意志を発した。

 宇宙意識に言葉は必要ない。思うこと、感じることがそのままイメージになり伝わる。あたかも自分が思い、感じるかのように。情報量は3D映画の比ではない。

 意志波に反応したドラゴンは意識全体をシールドした。共通語で言う所の、聞く耳は持たない、完全拒絶と黒豹は判断した。

 今こそ決戦の時。黒豹は自分のエネルギーを一枚の布のように薄く広げ、巨大なエネルギー布を、ドラゴンのエネルギー体に覆い被せ、餡を包む饅頭の皮のように、包み込もうとした。

 ドラゴンは黒豹の意図に気付き、ゴム風船のように膨らみ、膨張したが、力であるエネルギーが尽き、完全に包み込まれてしまった。多くの善良な協力者を得た黒豹のエネルギー量が、ドラゴンのそれを数段上回った。

 広がりを度外視して、もしこの光景と光を人間が見ることが出来たらどうだろう。

 サフィアのように青くきらめくドラゴンのエネルギーを、ルビーのあざやかな赤に輝く黒豹のエネルギーが覆う。

 次第次第に赤が青を覆い、エネルギーは光を透過させ、青が赤に混ざり、次第次第に青が紫に変わり、赤、紫、青の三色になり、最後は紫一色になる。

 豪華なイルミネーションショウも霞む、光まばゆい、壮大、絢爛豪華な天体ショウに見えるだろう。

 黒豹はドラゴンを包み込んだまま、エネルギー放射が周囲に影響を与えるのを避ける為、次元を移動した。宇宙意識に時空の制約はない。

 宇宙の果て。何も存在しない無の世界。果ての概念が成り立たないのが宇宙そのもの。無の世界が果ての世界。

 黒豹はドラゴンに対し、許されざる行為を糾弾してエネルギーの分解を宣言した。

 ドラゴンは宇宙全体の為にした行為だと反論したが、黒豹は躊躇せずに激烈なエネルギーパワーを照射した。

 ドラゴンは黒豹に包み込まれ、じわじわとエネルギーを失うかのように弱体化した。

 黒豹の放ったパワーでドラゴンのエネルギーが燃えるように一瞬赤く輝き、次の瞬間、青白い塊と、輝きの違う、多数の淡いピンクの塊に分解して、それぞれの人間意識は瞬時に消え去り、元の世界に戻った。

 青白い塊もサフィアの青いきらめきに戻り消え去った。

 大きな使命を果たした黒豹のエネルギーは輝きを増し、赤く美しくきらめいていた。

 黒豹が戻って来た。再度黒豹の姿を創って健太達の前に現われた。高揚が少し体のサイズを大きくしていた。

 嬉しい気分が伝わって来て、健太は成功を確信した。

ーお疲れ様でした、使命を果たされましておめでとうございますー

ーありがとう、分かるかー

ー嬉しさいっぱいの気分を送って来て、分かるかもありませんよー

 黒豹に表情があったら、満面に笑みを浮かべていると健太は思った。

ーお前達には世話になった、成し遂げられたのはお前達のお蔭だ、今のドラゴンにこの世界を維持する意味はなくなったからこの世界は消滅するだろう、これから、協力者を人間意識の世界に送り、お前達も元の世界に帰すー

 健太が名残惜しそうに聞いた。

ードゥンヌとはもう会えないんですよねー

ードゥンヌは私と共に闘ってくれた、元の世界での幸せを願ってやれー

ーギュ何とかも元の世界で幸せになるんですかねー

ーギュオウディダも行動を共にした奴等も、協力を拒んで去っただけだ。我々に敵対したのではないー

ー我々を見捨てたんですよ、そんな寛容にはなれませんー

ー誰しも自分の身を守る権利を持っている、奴らが残っていたら、何か変わったかー

ー気持ちの問題ですー

ー同じ人間同士、許してやれー

 健太は不承不承頷いた。

ーケンタの気持が分からないでもない、去った奴らと、力を貸してくれたお前達と、元の世界に帰る時に差を付けてやる、どうだ、ケンター

ー何をして下さるのですかー

ーこの世界のエネルギーの幾らかをお前達に分け与えよう、お前達意識の基礎エネルギー量が僅かに増大するが、人間世界の中でのパワーは大きい。今の力をそのまま維持して元の世界に戻る、お前達は元の世界で超人となる、その力をどう使おうと自由だが、世界の秩序を乱したら即刻、与えたエネルギーを剥奪するー

ーそのような心配があるのなら、私達に力を与えない方がよろしいのではー

ーお前達は善良な人間だ、だが、強大な力や、他に対する圧倒的な優越感が人間の精神を狂わせる時もある、お前達人間と関わって、人間への興味が湧いた、ある意味私の人間観察の道楽だー

ー私達は実験台ですか、酷いですよ、みんな、思い通りになって黒豹様を楽しませるなよー

 実験材料にするなら、実験内容など明かさない。黒豹の優しい戒めだと健太は思った。

ー元の世界で生き返って、気が付いたら超人ですか、訳が分からなくて大混乱ですよ、それも人間観察ですかー

ー分かった、私から人間の幸せの為に力を与えられたと記憶に残してやろうー

 健太が単純な疑問を聞いた。

ー黒豹様のお指図なんで、万が一にも間違いはないと思い、ますが、気になるので聞いてもいいでしょうかー

ーなんだー

ー私、事故って此処に来たんですが、私の肉体死んでないですよね?ー

ー皆にも言っておく。ここに引き摺り込まれた者は、肉体が存在するのが条件だから死んでいない。ケンタとクルトは肉体の生命力が安定した時に戻るが、安定しなかったらどうなるかー

ーそんな、肉体がなかったら、幽霊になってしまうじゃないですかー

ー冗談だ、意識のエネルギーを与えた。肉体は正常になって意識が戻るのを待っているー

ー黒豹様でも冗談言うんですか。お願いしますよー

ー皆、永遠の別れだ、別れを惜しめー

 短い期間の関わりであったが、異人間種、異世界、非日常的な体験が、気持ちの交わりの密度を高め、お互いを親友のように思っていた。

 皆は心から別れを惜しんだ。抱擁しながらお互いのこれからの幸せを願った。

 黒豹は相手を想う人間の心に触れた。これも欲の一つか。こんな欲は麗しいと黒豹は思った。

ーお前達、覚悟は良いかー

 黒豹は皆を見回してから、姿を消した。皆の意識も消えた。


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