南極大陸
ここはどこ?私はだれ?
「ここは南極大陸、あなたはバカ」
ここは南極大陸、私はバカ。
「そう、ここは南極大陸、あなたはバカ」
そう、ここは南極大陸、私はバカ。
バカ………それが私の名前なのね。
「そうバカ………それがあなたの名前」
不思議な名前………まるで軽蔑されているよう………。
「素敵な名前でしょう?」
ええ、とっても。なんだか心が洗われるよう。私の名前はバカ………バカ………
バカ………。
私はゆっくりと目を覚ます。朝のさえずりが気持ちいい。太陽が燦々と輝き、草木が生い茂る。森の動物たちは歌でも歌っているかのように心地の良い鳴き声を耳にこだまさせる。
ここが南極大陸………。
「おはよう、目が覚めた?」
私はその時奇跡を見たのかもしれない。シミ一つない綺麗な肌、ふっくらとした唇。整った鼻、そしてぱっちりと大きな目、こんな美しい人は初めて見た。
私が唖然としていると、
「どうしたの?まだどこか具合が悪い?もう少し寝てた方がいい?」
私はまた唖然としてしまった。こんなにやさしくされたことは今までの一度もない気がする。
「ごめんなさい、起こすべきではなかったわね。もう少し寝てるといいわ。今朝食を作るから」
私は焦って何かを言わなければと思った。でもいったい何を………しょうがないから言葉にできることを口にしてみた。
「い、いえ、大丈夫です。ただ、なんだかとても不思議な夢を見ていたみたいで………」
「夢?」
「ええ、とっても不思議な夢」
その美しい少女は安心したように微笑みながら、
「そう、でもまだ安静にしてるといいわ。だってあなた三日も目を閉じたままだったのだもの。今はゆっくり休んで。ね?オネガイ」
まるで天使のような人。不思議………この人になら何でも話せるかもしれない。
「あの………」
「何?」
「あなたのお名前は?」
天使はゆっくりと頷き私の方へ顔を近づけそのきれいな唇を上下させた。
「私の名前はソフィア、ソフィア・セリーヌよ」
「そう………すごくいい名前」
ソフィアは微笑んだ。
「あなたは、あなたのお名前は?」
「私は………バカ………バカというの」