本気を出せば何でもできる!
チッチッチッチッチ。
「さてそこの少女よ!これはなんの音でしょう!」
……………
「チッチッチッチッチの音」
「…………さすが子供。素直な答えを回答する。君は将来いい子に育つよ」
「そりゃどうも」
…………
「オジサン」
「オジサンというのは私のことかなそうだろうね私のことだろうね、うん、いや、分かっていたよ。分かってはいたけど一応たしかめないとね。オジサンだもんね、お・じ・さ・ん」
「オジサン」
「うん、うん分かっているよ。何回も言わなくても分かっているよ。自分が生粋のオジサンだということはね、え、別に認めたくないわけじゃないよ、やだなあ、認めたくないわけないじゃないか、自分がお・じ・さ・んだということはね。もちろんさあ(笑)」
「オジサン」
「ん?オジサン?そうだよねぇオジサンだもんねぇ。お嬢ちゃん。でもねえ。オジサンもいい加減にしないと怒るよ。だってオジサンだもんねぇ、お・じ・さ・ん。うんうんわかってるわかってる。でもねえ、お嬢ちゃん。24歳でオジサンなんて呼ばれる身にもなって欲しいなんて、まさかあ、思ってるわけでもないこともないんだよ。分かるよね。お嬢ちゃんももう立派な大人だもんね。違うかな?」
「キィィィィィック!」
「待てこの餓鬼ぃぃぃぃぃ!」
「……………宗一、あんたガキ相手になにやってんの…………」
「ん?いやあ、あはあ、何やってる?冗談きついねえ、なにやってる?冗談きついよぉ。見て分からないかい、教育だよ教育。エデュケーションさぁ(笑)」
「教育ねえ?私にはいい大人が子供相手に腹の立つことを言われ、我慢ならず、甲斐もなく憤慨してたようにしか見えなかったけどねぇ」
…………
「まあ一部にはそういう捉え方もあるだろうね」
「ふーん、ところでさあ、あんた持ってるの……………なに?」
「爆弾」
俺ははったおされた。そして大事に抱えていた爆弾をものの見事に奪い取られ、綾からキックを三十発くらい食らったあと、爆弾は川へ投げ捨てられ、どんぶらこどんぶらこと川へ洗濯していたお婆さんのもとへ流れ着いたのち中から生まれた服部半蔵により鬼ヶ島征服の旅へ…………なにぶんキックを食らった衝撃で記憶が定かでないです。あしからず。
場所、仙台
時、夏
俺、近衛田宗一
俺たちの仙台での夏が始まる!
時は西暦20XX年、俺近衛田宗一と、東綾は仙台の街を盗んだバイクで走り出していた、暴走族を海パン一丁で追い掛け回していたところ、びっくりした暴走族たちは誤ってお魚くわえたサザエさんのように激しくずる滑りし、あえなく宮城県警に表彰状を贈られる羽目になった。ああ、めんどくさ。
「で、あとは何をくれるんですか?」
「もう帰っていいよ」
俺と綾は宮城県警のたいそうな門を睨み付けたのち「ケッ」と近くに転がっていた石ころを蹴った。
「なにが表彰状だよ。俺らはおめえらのイメージアップに使う道具じゃねーってんだよ。新聞に載ってたらここで仲間を集めて軟式野球してやんぞって」
「まあ、良いじゃないの。もしかしたらこれラーメン屋に持ってったらただでラーメン食わせてくれるかもしんないよ。ほら。よく芸能人とかがサイン色紙おいてったりするじゃん。その要領で(笑)」
「なんだよ、それ、はあ?なんだよそれ。はっ、まさかまさかそんなことがあるわけ」
ズルズルズルズルッ。
「はあ、うめえ。マジお前賢いなほんとに食えちまったよ。こんなんだったら宮城県警から表彰状いっぱいもらっておくべきだったな。ラーメンただ食いサイコー!(笑)」
「そうだろ、そうだろ、へへ。見なよ。あのラーメン食ってるおっさんたちの辛気臭い顔を。ありゃ金を出すのが勿体なくてああいう顔になってるんだぜ。それに比べたら私たちなんて極楽浄土もいいとこだよ」
おそろしく美味そうにラーメンをすする綾。ほんとだよな、ただより高いものはないなんて言う人いるけど、ただはタダなんだよな。馬鹿だよほんと。何がただより高いものはないだよ、ヘッ。
ラーメン屋には地デジ対応のために買い替えた思しきテレビが置いてある。まあスマホの小さいテレビ画面にばかり慣れた俺たちにとっては、通信料と電力消費と日々戦いに明け暮れている俺たちにとっては天国みたいなもんだ。三時間くらい居座ってやってもいい。さて今日のニュースはどんなもんかな?
俺たちはテレビの画面にひたすら注目して衝撃的なものを見た。