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第四話 私の想い

朝妃、カムイ、レインの三人は、警役所(日本で言えば警察署みたいな所)に行き、さっき気絶させた男共を渡していた。




そしてよく分からないが、布製の袋を貰い、しかもジャラジャラ言ってたからお金かな?

とにかくそれを貰って、三人はカムイの家へと足を運んだのであった…。







―――――…






「うわぁ…」




着いた先は馬鹿でかいホテル。



何十階あるのか分からないって程の大きさ。




こんな所にカムイは一人で住んでるのか。


凄いな…。




などと感心していると。



二人の姿が無かった。




「アサヒー!何してるの?早くおいでー!!」




ホテルの出入口の所でレインが手招きをして待っていた。




「あっ待ってよ!!」




あたしは走って二人の元へ行った。







―――――…






カムイが鍵を開け、中へ入る。




次にレインが入って、あたしも入る。




中は予想通り凄く広くて豪華だった。



感無量。



言葉にならなかった。



こんな部屋に一人で住んでいるカムイはどんだけ金持ちなのか知りたかった。




固まっていると、またレインに呼ばれ、慌ててあたしは扉を閉め、二人が座っているソファーへと移動した。




「二人共座ってて!僕飲み物持ってくるから!」



そう言ってレイン君はキッチンがある方へと駆けていった。



てか…この人と二人きりは気まずい…。


色んな意味で!!


やだなぁ早く帰ってきてレイン君!!




「そんなとこ突っ立ってないで座れば?」




下からカムイの声がした。

横目でカムイを見ると、頬杖をつきながら窓の外を眺めていた。



あたしは渋々カムイの前へと腰を降ろす。




その時にバッチリ目が合った。



薄紫色の瞳があたしを見つめる。




吸い込まれそうになる程に、妖しく…そして深い。




あたしはそのままカムイの瞳を見つめていた。




カムイは無表情で朝妃を見る。



そして静かに口を開いた…。




「お前は…」



「えっ…」




カムイの声に朝妃は現実へと引き戻された。

しかし視線はぶつかったまま。




「お前は……一体何処の国の奴だ?」



「!!…それは…」




…言える訳ない。



信じてくれないよ。


全く違う世界から来たなんて…。


きっと笑われるだけだ。


だったら……。




「…カムイ…さん」




カムイの眉間がピクリと動いた。

朝妃はそれを見逃さなかった。

カムイの顔を見つめていると、段々とカムイの表情が怪訝そうな表情になっていく。




朝妃はそれを見て、何か悪い事言ったかなぁと、思考を巡らせていた。

しかし答えは分からず、カムイの返事を待つ事にした。




「カムイさん…?」




「あっ…嫌だった?」




成る程。さん付けで呼ばれたのが嫌だったのか。




朝妃は理解した。




だったら…。




「カムイ…?」




チラ見をするようにカムイを見る。

カムイはさっきよりは幾分マシな表情をしていた。




あぁやっぱり…。




朝妃は納得した。


彼はさん付けが嫌だったのだと。




「それでいい。で…アサヒ…だったか?何故お前はあの時、上から降ってきたんだ?」




ドクン…と、心臓が強く鳴った。



冷や汗もかいてきた。




もう…話すしかないのだろうか。




朝妃は暫く考え、そして決意したようにカムイをまっすぐ見つめる。




「……あたしは、お兄ちゃんを探しにきたの」



「兄を…?」




カムイは眉を潜める。

しかしそれ以上は何も言わなく、朝妃の次の言葉を待った。




「うん…此所に居る事は確かなの。だからあたしは探しにきた。お兄ちゃんを見つける為に…」




朝妃が話している間、カムイは何も言わず、ただ黙って朝妃の言葉に耳を傾けていた。




「だから…。っ…」




だから?だからあたしは何を言おうとしているんだろう。


何が言いたいんだろう。


本当は、こんな所に居ないで早くお兄ちゃんを見つけないといけないのに。



急がないといけないのに…。




「アサヒ?」




黙りこくった朝妃を不思議に思い、首を傾げるカムイ。



朝妃は俯いて下唇を噛んだ。



瞼を閉じて…思い出す。



兄の姿を……。









―――…

「朝妃。俺さ…」


「ぅん?どうしたのお兄ちゃん」



あの日…いつものように兄の部屋に遊びに来ていた朝妃。



しかし朝妃は気づいていた。


兄の様子が変だと…。


敢えて何も言わなかったのは、朝妃なりの優しさ。

兄から話してくれるのを待っていた。




朝妃は兄……涼が大好きだった。



他の誰よりも涼が…。




それには理由があるのだが…。







朝妃達兄妹は、本当はあの両親の子供ではない。



本当の両親は、まだ二人が小学生の頃に事故で死んでしまった。



朝妃が小学三年生、涼が小学六年生の時に。



二人は両親の死から立ち直る事が出来た。


それは……たった一人の血の繋がった家族が居たから。


今育ててくれている両親は、本当の両親の親友。

その人達に貰われた。



それから二人は、上手く生活してきたつもり。



たまに壁を感じる時があるが…。



しかしその時には涼がいる。


だから朝妃は頑張って生活できた。



涼が居たから…生きてこれた。



別にあの両親に不満はない。

大事に育ててくれる。

優しい。




でも……やっぱり寂しい。



そんな時支えになるのは…涼の存在。


たった一人の家族の存在。



そんな大事な涼が何か悩んでいる。




力になりたい。

朝妃は心の底からそう思う。



でも無理強いはしない。

だって嫌われたくないから。



兄が全てだから……。




「………いや、やっぱ何でもない」




「えぇ?何それ。変なお兄ちゃん」




「ははっ…。ごめんな」






……それから2日後、涼が消えた。

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