だれ?この美女は?
その年のバレンタインには
「チョコ作ってみたんだけど、他にあげる相手もいないし・・・一応お世話になってるんだし、仕方ないから優樹にあげるよ。手作りなんだから有り難く思ってよね。」
とツンデレ全開な言葉と共にチョコレートを貰ったが、これが彼女なりの精一杯の感謝の表現だというのは分かっていたので
「おう、サンキュ。でもあげる相手が居ないんなら作らなくてもよかったんじゃないのか?」
「なっ!!だ、だって・・・」
「アハハ、ツンデレ娘め!!でも、俺のためにわざわざありがとな。ホワイトデーはバイト代を貰った直後だから期待しとけ。」
「・・・そんなんじゃないんだってば!!」
「はいはい、未来ちゃんから俺への愛情たっぷりのチョコレートいただきまーす。」
と頭をグシャグシャに撫でてやりながらチョコを食べると
「違うって言ってるのに・・・」
などと、ずっとブツブツ言っている未来の姿がとても可愛かった。
ホワイトデーには少し洒落たレストランを予約し
「未来、14日はお返しにイタリアンレストランを予約してあるからな、少し大人っぽい格好してこいよ。」
「えーっ!!大人っぽい格好ってどんなの?」
「そうだな~、こう胸元のガバーッと開いたドレスとか・・・ってお前が胸元の開いたドレス着たら全部丸見えになっちゃうか。」
「優樹だけだし、私の胸を笑うヤツは・・・でも本当にどんな格好すればいいの?」
「あんまり深く考える必要はないよ、ラフ過ぎなきゃ大丈夫だから。どうしても分からなかったらお母さんに相談してみな。」
「ラフ過ぎない・・・ラフ過ぎない・・・」
ブツブツと念仏のように繰り返す未来の姿を見て私は大爆笑してしまった。
ホワイトデー当日、私の部屋にやってきた未来はクルリと回ると
「これならどうよ?」
普段は結んでいる黒髪を下ろし、白のハイネックセーターに茶色のロングスカート、そこにセーターと同系色のコートを羽織り、薄くメイクも施していて、とても美しく、いつもの幼い感じではなく女性として十分な魅力を発していた。
「・・・えっ、あぁ、似合ってるよ。」
「未来ちゃんが可愛すぎて言葉も出ないか?」
「バッ・・・なっ、何を生意気なこと・・・それよりお前、化粧なんてできたんだな。」
「今日はお母さんが家にいたから頼んでやってもらった。」
「そうか・・・お前ちゃんとした格好すると美人なんだな・・・」
「・・・っバカ、急に変な事いうな!!照れるし・・・」
「アハハ、それでこそいつもの未来だ。じゃあ行くか。」
レストランでは最初緊張していた未来も、料理が運ばれてくるとその美味しさに目を輝かせ、大喜びしている様子だった。
「優樹、美味しいね。」
「そうだな、たまにはこんな食事もいいな。」
「こんなって?」
「中学生の保護者として・・・」
「ほほぅ、その中学生に見惚れてたのはどこのどなたかしら?」
「見惚れてねぇし、お前が変わり過ぎて驚いただけだ。」
「それを見惚れてたって言うんだよ、ゆ・う・き・く・ん。」
悔しかったが、未来の変わり様に驚き、言葉を失ったまま見つめてしまっていたのは事実だった。
レストランを出た後はゲーセンでプリクラ撮ったり、某雑貨店で買い物したりとちょっとしたデートを二人で楽しんだ。