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美魔女登場

 未来をマンションのエントランスまで送った帰り道、私の携帯に見知らぬ番号からの着信があった。


「もしもし、優樹?」


「おう、ちゃんと帰ったみたいだな。」


「うん大丈夫、ちょっと待ってお母さんに代わるから。」


「初めまして、未来の母です。この度は娘がとんだご迷惑を・・・昨日から家にも帰らず、連絡を取ろうにも携帯は部屋に置きっぱなしでしたし・・・心配で捜索願を出そうと思っていたところに帰って参りまして・・・本当にご迷惑をおかけしました。」


「いえ、こちらこそお母さんには何の連絡もせずに泊めてしまいまして、申しわけありませんでした。」

「未来ちゃんが家に帰らなかった責任は私にありますし、家を飛び出したのにも何かしら理由があったからだと思いますので、あまり怒らないであげて下さい。」


「そうですね、私が仕事の関係で留守がちなもので、未来にも寂しい思いをさせてしまって・・・。後日、改めて御礼に伺わせて頂いきます。」


「いえ、御礼なんて!!たまたまコンビニで座り込んでいたのが気になって声を掛けただけですから。」


「そういう訳には参りません。後日、優樹さんのご都合に合わせますので是非伺わせて下さい。それでは・・・」


 未来の痣のことに触れないように話すのは心苦しかった。


「優樹ゴメンね、お母さん強引だから・・・」


「優しそうなお母さんじゃないか、あんまり迷惑をかけるなよ。・・・だけど、お前は絶対に無理はすんな!!何か有ったら・・・無くてもいいから俺の部屋に遊びにくること。」


「うわっ!!女子中学生を部屋に誘うなんて・・・どんだけ飢えてんのよ。」


「お前・・・今度会う時は本当に飢えててやろうか?」


「キャーッ恐~い、アハハ・・・じゃあまたね、優樹。」


「おう、またな。」


それから数日は未来とメールや電話のやり取りはあったものの、彼女が私の部屋に来ることは無く、いつもと変わらない日々を過ごしていた。




そんなある日、その日はバイトが休みだったので講義の後、友人数人とカラオケに向かっていると、見覚えの無い番号からの着信があった。


「ご無沙汰しております。未来の母です、先日も申しましたが御礼に伺いたく思っておりまして、優樹さんのご都合を伺おうかと・・・。」


「今日でしたらアルバイトも休みですし、時間ありますけど。」


「そうですか、では今夜伺わせて頂いてよろしいでしょうか?」


「分かりました。では、今夜。」


そう言うと電話を切り、友人に


「ゴメン、急用だわ。」


「今の声、女だよな?」


「まぁ、女には違いないけど・・・お前らが考えているような下世話なものじゃないからな。」


「くぅ・・・優樹ってば、私を捨てて女に走るのね・・・」


「走るも何も、お前には気持ちの1%も向けたことはないわ。じゃあ、すまねぇけど帰るわ。」


「おう、報告は必須な~。」


友人に手を振りながら急いで部屋の戻ると大掃除を開始、リビングとトイレだけでもと思い、念入りに掃除をした。


夕方6時を少し回った頃玄関のチャイムが鳴った。


「はーい、今開けます。」


 玄関を開けるとそこには、肩よりも短い真っ直ぐな黒髪にきりっとした目つき、フレームの無い眼鏡を掛け、スーツの姿が良く似合う美人で、見るからに『出来る女』といった感じの女性と未来が立っていた。


 女性は『Office REN 代表 村崎 香奈』と書かれた名刺を差し出すと深々と頭を下げながら


「初めまして、未来の母です。先日は娘が大変なご迷惑を・・・。」


「いえ、こちらこそすみませんでした。年頃の女の子を無断で部屋に泊めてしまって・・・本来ならば無理にでもお宅に送り届けなければならなかったのでしょうが・・・。」


「それは、この子の我侭だったのでしょうし、気になさらないで下さい。」


「・・・っと、立ち話もなんですし、散らかってますが中にどうぞ。」


「いえ、私たちはここで結構です。それとコレ、お口に合うか分かりませんが。」


「ご丁寧にありがとうございます。」


「それでは、私どもはこれで・・・。」


「わざわざありがとうございました。」


未来の母親は再び深々と頭を下げ


「未来とこれからも仲良くしてやって下さい。」


と言うとドアを閉めた。


未来の母親の美しさを噛み締めるように玄関で立ち尽くしていると、未来から電話がかかってきた。


「今日は急にゴメン、お母さん強引だから。」


「そんなことは気にしなくていいけど、お母さん若いし、美人だしで驚いたよ。」


「若くて美人なのは私も自慢。」


「自慢って、お母さん幾つなんだ?」


「たしか、31歳じゃなかったかな?」


「えっ!?31!?…お前14歳だよな?えっ!?…って事は・・・お前、お母さんが17歳の時の子供!?」


「そうみたいだね、お母さんが高校生の時に私が産まれたって。」


「だからかぁ、あんなに美人で若くておっぱい大きいんだな。」


「私もお母さんの娘だから、そのうち大きくなるかもよ。美人なのは今でもそうだし、お客さん買うなら今のうちだよ!!」


「う~ん、クーリングオフできるなら。」


「当店ではクーリングオフは受け付けておりません!!」


「じゃあ、今回は見送りということで。」


「優樹って、めっちゃ失礼なやつ!!」


「アハハハハ」


「じゃあ、また遊びに行くね。」


「おう、いつでもいいぞ。」


後になって聞いた話だが、未来の母親は高校の頃に社会人と交際していただが彼女の妊娠が発覚した途端に全く連絡が取れなくなり、それっきりになってしまった。

一時は堕胎も考えたらしかったが、結局は高校に通いながら未来を産み、両親の援助を受けつつ大学まで卒業し、卒業後は小さなIT系の企業に就職。

数年後そこで学んだノウハウを活かして小さいながらも会社を設立し、その経営者として毎日が忙しく、帰宅が深夜に及んだり、出張で帰れないといった事も多々有ったそうだ。


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