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嫌なモノ

 どれくらいの時間が経ったのだろう、うたた寝をしていた私はハッと目を覚まし、時計を見ると時刻は2時を少し回ったところだった。


「1時間くらい寝ちゃってたな・・・・・・・・・っと!!」


 少女の存在を思い出し、リビングを見回したが少女は居ない、寝室にも・・・


 まさかと思い、浴室の前に行くと出してやった着替えがそのまま残っていた。


 ドアをノックし、声をかけたが何の反応も無い。

 仕方なくドアを開け、脱衣所から再び声をかけたがやはり反応はないままだったので、さすがに心配になり


「おい、開けるぞ。」


 浴室のドアをゆっくりと開けると、浴槽に浸かったまま気を失っている少女の姿があった。


「おい、どうした?大丈夫か?」


 私は慌てて浴槽に近寄り


「おい、おいってば!!・・・エッ!?・・・これ・・・」


 少女の小さな肩を揺すりながら声を掛けたが反応がない。

 急いで少女を浴槽から引き上げると、身体にバスタオルをかけ寝室のベッドに横たえた。


「おい、大丈夫か?どうしたんだ?」


 声を掛けながら身体を揺するが反応が無い、慌てていた私は救急車を呼ぶなどの対応も出来ず、ひたすら少女に声を掛け続けた。


 それから数分後、少女はうっすらと目を開け


「あれ?私・・・お風呂に・・・」


「よかったぁ、気が付いて、お前風呂で倒れてたから慌てたよ。」


「そうかぁ・・・ゴメ・・・って私、裸じゃん!!」


 慌てて身体を隠そうとする少女


「仕方ないだろ、俺も慌ててたし・・・」


「見た・・・よ・・・ね?」


「・・・うん・・・」


「そうかぁ・・・見られちゃったかぁ・・・ゴメンね、嫌なモノ見せちゃって・・・」


「・・・いや、そんなこと・・・っと、お前本当に身体なんともないのか?」


「ちょっとフラフラするけど平気、多分のぼせただけだと思うし。」


「長風呂してのぼせただけか?それならいいけど・・・ホラ、一応デコに氷でも当てとけ。」


「うん、ありがとう。」


 私は話を変えたい一心で


「ところでお前飯は食ったか?」


「そういえば何も・・・。」


「それなら俺と一緒に食おう、今日はバイト先の大将が豚の角煮を持たせてくれたんだよ、もし嫌いじゃなかったら一緒に食ってくれ、一人での晩飯にも飽き飽きしてたところだからな。」


「うん、食べる!!」


「じゃあ、まずは着替えだな。」


「あーっ、忘れてた!!」


 悲鳴を上げるようにバスタオル姿の少女は浴室へと駆け込んでいった。


 少女は私のジャージに着替えるとリビングにやってきた。


「やっぱり大きかったかぁ、でもお前が着れそうなのってそれくらいしかないから我慢してくれよな。」


「うん、大丈夫。」


「ほれ、角煮と飯とインスタントだけど味噌汁もあるぞ。」


「うん、ありがとう。それじゃあ、いただきまーす。」


「はい、どうぞ。」


「なにこれ、美味しい。」


「プロのお手製だからな、美味いはずだよ。」


「いつもこんな美味しいのを食べてるの?」


「いつもって程じゃないけど、余り物があったら持たせてくれるな。」


「羨ましい・・・」


「ところでお前、名前は?」


「あれ?言ってなかったっけ?えーっと、私『みらい』って字を書いて『未来みき』と言います。14歳の中学2年生です。」


「えっ!?中2!?幼い顔しているとは思っていたけど・・・中学生とは」


「うん、中2。それより、ごめんね、急に泊めてもらって。」


「あんな所に一人で置いとけないと思ったから、俺が勝手にやったことだし、気にする必要ないよ。因みに俺は『優しい』に難しい方の『樹』で『優樹ゆうき』21歳で、そこの大学の2年生だ、よろしく。」


「そうかぁ、大学生なんだぁ・・・21で2年生ってことは…」


「余計な計算はしなくてよろしい!!」


「ねぇ、ところで難しい方の『き』ってどんな字?」


「ほら、コレ!!」


 私は少女の手を掴むと、手のひらに『樹』の文字を書いた。


「分かったか?」


「・・・う、うん。」


「どうした急に?しおらしくなって・・・ってお前、顔真っ赤じゃん、大丈夫か?」


「…だって、急に手なんか握るから・・・」


「何?もしかして照れてんの?可愛いなぁ、おい。」


「…そんなの!!恥ずかしいに決まってるでしょ!!男の人に手を握られたんだから。」


 ハニカミながら私の肩をバシバシと叩く少女の姿が、とても初々しくて可愛らしかった。


 食事を終え、食器を洗いながら少女に


「ベッドはお前が使っていいから、もう寝な。俺はソファーで寝るから安心しろ。」


「ありがとう、でも私がソファーでいいよ。」


「ダメ、家主の命令は絶対!!」


「でも・・・」


「絶対!!」


「分かった、ありがとう。」


「じゃあ、俺は風呂に入ってくるからお前は本当に寝とけ。」


「うん、分かった。」


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