なんなんだよ、もぉ・・・
風呂から上がると、缶ビールの栓を開け一気に流し込む。喉から伝わる炭酸の刺激が心地よい。
「さっきの女の子、可愛かったけど変な子だったなぁ・・・第一、何だよ『拾ってくれ』って、訳わかんねぇし・・・でも、ちゃんと家に帰ったのか?・・・あんな時間に・・・やっぱり家出なのか?・・・変なのに声をかけられてなきゃいいけど・・・・・・・・・・・くそっ!!」
何故こんな感情が湧いてくるのか自分でも分からないまま寝間着にダウンを引っ掛け、乱暴にドアを閉めると、階段を駆け下りたところで自転車の鍵を忘れた事を思い出す。
取りに戻る事ももどかしいほどに焦っていた私は、そのままコンビニへと駆け出した。
自転車ならものの数分の道のりでも、走るとそれなりに時間が掛ってしまい、余計にモヤモヤした感情が膨らんできてしまう。
数年ぶりの全力疾走でコンビニへと向かった。
コンビニに着き、辺りを見回す・・・居ない・・・家に帰ったのかもしれないという安堵もあったが、それよりも見知らぬ人間に付いて行ってしまったのではないかという不安の方が大きく、真冬だと言うのに私は汗だくになりながら辺りを探した。
「なんで俺・・・こんな事してんだろ・・・見ず知らずの女の子なのに・・・」
はぁはぁと息を切らしながらコンビニの周辺を随分と探し回ったが少女を見つけることは出来ず、仕方なくアパートへ帰ろうと公園の角を曲がったその時だった。
少女は人目を避けるように公衆トイレの裏側の暗がりに座り込んでいた。
少女を見つけた私は、見ず知らずの人間から心配をかけられたという怒りもあったが、やっと見つけたという安堵感から一気に力が抜けてしまい、脱力感に襲われたまま少女に声を掛けた。
「おい、こんな所で何をやってるんだ?」
急に声を掛けられ、少女は一瞬ビクリと身を竦ませたが
「あっ、お兄さん・・・」
「家に帰れって言ったろ!?」
「家には・・・帰りたく・・・」
「なんで帰りたくないんだよ?」
「それは・・・」
少女が俯き加減で見せた悲しげな表情に思わず、彼女が抱えていた小さな鞄を取り上げると溜息混じりに
「はぁ・・・仕方ねぇ、今夜だけだからな。」
・・・言ってしまった。
すると少女の表情は、ぱぁっと明るく変わり
「ありがとう、お兄さん。」
少女は満面の笑みを浮かべていた。