コンビニ前の不思議な娘
「ねぇ、お兄さん、私を拾ってくれない?」
この一言が、私と彼女の不思議な関係の始まりだった。
新しい年まであと数日となった12月末のある日、深夜0時過ぎにアルバイトを終えた私は、店長が夜食にと持たせてくれた豚の角煮を自転車のかごに乗せアパートへ帰る途中だった。
私のアパートへは大通りから公園の脇を抜けるのが一番の近道なのだが、その日は買い置きのビールが切れていたのを思い出し、少し遠回りしてコンビニに立ち寄り、缶ビール2本と翌朝の朝食用にサンドイッチを買って自転車に跨った時にふと気が付いた。
コンビニから漏れる明かりを避けるようにして暗がりに誰かがしゃがみ込んでいる。
浮浪者かと思い目を凝らして見たが、服装から女性のようだった。
下心が全く無かったと言えば嘘になるが、そのときは『こんな時間に何故?』という気持ちが先に立ち、暗がりに膝を抱え、顔を隠すように座っていた女性に近づき声をかけた。
「お嬢さん、こんな時間に何してんの?」
女性は突然声を掛けられビクッと肩をすくめると、恐る恐るといった感じで上げた顔を見て私は驚いた。
高校生?いや、下手したら中学生なのか?
少し釣りがちの大きな目と、黒髪が印象的な少女だった。
「こんな時間にこんな所に居たら危ないよ、早く家に帰らなきゃ。」
「・・・・・・」
無言で私の顔を見つめる少女
「どうした?早く帰りなって!!」
「・・・・・・」
それでも私の顔をじっと見ていた。
「ちゃんと家に帰るんだよ!!」
私がそう言い残し、自転車で帰ろうとすると少女は
「ねぇ、お兄さん、・・・私を拾ってくれない?」
「はぁ!?何言ってるんだ?」
「私を拾ってくれないかな?」
「何言ってるんだよ、犬や猫じゃあるまいし。」
「じゃあ、猫としてでも構わないから拾ってよ。」
「言ってる意味がわかんねぇよ、変なことばかり言ってないで早く家に帰りな。」
そう言い残すと私は自転車を走らせアパートへと帰った。