第5話 修業編2
エリナ視点
「今日は気配察知の修行をするよ!」
「はい!師匠!」
「では気配察知のコツはホワホワとしてピクッだよ!」
「ホワホワ……。つまり、出力は最小限に、でも密度は均一に。自分の魔力を空間の『地』として塗り替えるんだ」
私は特訓をする内に師匠の教え方に慣れてきていた。
目隠しの裏で、私は必死に魔力の粒子を操作した。
飛んでくる礫そのものを見るんじゃない。礫によって「押しのけられた私の魔力」の空白を探す。
……あそこ。左後方、30度。気圧が動いた!
――シュンッ。
頬をかすめる熱い感触。でも、避けた。
ユイさんのデタラメな擬音が、ようやく具体的な「波形」として私の脳内に描かれ始めたんだ。
「あはは、避けたね! じゃあ次はもっと広ーく、森の木々まで感じてみて!」
「……分かりました。もっと、遠くまで……!」
私は、自分の魔力の網を限界まで投射した。
すると、私達の元にとんでもない気配が迫ってくるのに気がついた。
「あちゃ~、エリナが来たから察していたけどついに見つかっちゃったかぁ。エリナも気づいた?」
そんなことを言うユイさんの前に一匹の鹿が降ってきた。
『……ようやく見つけたぞ。1000年もの間、我が眼を盗んで潜んでいた不届きな不老の娘よ』
念話!?私はびっくりした。ただの鹿が念話を使ってくるなんて!
すると、ユイさんが私の動揺を感じ取ったのか説明してくれた。
「この魔獣はこの森を守る守護獣らしくてね。私は追い出されないようにこっそりと気配を消して隠れていたってわけ」
ユイ視点
『小娘の気配がしたから来てみればまさか我の目を欺いて暮らしている者がいるとはな。驚きだ』
「見つかっちゃったってことはこの森でごろごろする生活は終わり?悲しいなぁ」
せっかく誰の見にもつかず暮らせる場所を見つけたのになぁ…。
『何を勘違いしてるかは知らんが、我は貴様を追い出す気はないぞ。人間だろうと魔物だろうと森を荒らさないというのなら暮らす権利がある』
「え?そうなの?ってことはわざわざ隠れる必要無かったの!?」
じゃあ見つからないようにしていた私の努力なんだったの?
『そんなことより貴様らは不死の呪いと呼ばれている呪いを解きたいのだろう?』
エリナ視点
「っ!何か知っているんですか?」
私はつい大声を出して聞いた。
『ああ、知っているとも。では交渉をしよう。貴様らはこの森を荒らさないことを誓う。さすれば我が呪いを解く鍵を教えよう』
「わ、分かりました。誓います。森を荒らすようなことは絶対しません!」
私はユイさんの方を向いた。
ユイ視点
「はぁ…誓います」
私は何かすごい圧を感じたので承諾した。
『ふむその心は真であるな。であれば黒霧の神殿へ向かえ。そこに呪いをかけた元凶である邪獣がおる。』
邪獣?ああ、あの結構強いトカゲのような魔物か。
アイツ結構倒すの苦労したんだよなぁ。
『しかし、その邪獣が何やら不穏な動きを見せておる。おそらく邪神を復活させるつもりであろう。それを止め、邪獣を倒すことができれば呪いを解けるかもしれぬ』
ていうか黒霧の神殿ってあの太長い柱がたくさん並んでる所か。あそこまで行くの結構難しいからエリナは連れていけないな。
「エリナ。黒霧の神殿までの道のりは険しい。だから1人で行くよ。あんなやつ私が本気を出せば簡単に倒せるし、正直エリナは足手まといにしかならないから」
私は突き放すようなことを言って行くのを辞めさせようとした。
すると、「嫌です!」と言われた。
「なんで?これは危険なことなんだよ?」
「危険なことだろうとしたこっちゃないです!そもそも私が不死の呪いを解く方法を探したいとお願いしたんですからそれでユイさんを巻き込んで自分は待機なんてできるわけないですよ!ユイさんが危機に陥るくらいなら私が死にます!」
「分かった!分かったから落ち着いて!」
私はどんどん顔を近づけてくるエリナから距離を取る。
「はあ、じゃあ準備するよ?あんまり危ないことしたらダメだからね?」
「はい!師匠!」
エリナは出発の準備を始めた。
エリナ視点
『小娘よ…』
荷物をまとめた私は守護獣に声をかけられた。
「なんですか?」
『貴様にこれをやろう。いつか貴様の役に立つだろう』
すると、私の手の中にお守りが出現した。
「お守り?何か分からないけどありがとう」
「へぇ…案外優しいんだね。守護獣さん」
振り返ると、準備を済ませたユイさんが立っていた。
「じゃあ行こっか。地獄の旅に」




