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ダイヤモンドスター  作者: オカピ
最終章:中学3年春季大会
81/85

完全決着

「一輝!!」

ベンチを飛び出した一輝に先程のふたりではない声が聞こえる。

桑山ボーイズ監督、朝日陽一だ。

朝日は一輝のことをじっと見つめながら続ける


「本当に大丈夫なんだな??」

その言葉に一輝は驚きを隠せず目を見開いた。


監督は知っていた。知った上で俺を出してくれていた。

選手の意思を尊重して、信じて今も打席に送ろうとしてくれている。そういう目だ



一輝は少し微笑み返答する

「はい。大丈夫です。」

朝日は険しい顔のまま告げる

「...分かった。行ってこい!責任はワシにある!!」

「はい!!」

力強く返事をし、一輝は打席へ向かう


ワシは...指導者...教育者失格だ。

目先の勝利に欲を出し選手生命に関わる怪我を見逃し

その重圧も全て1人の選手に背負わせる...

許されることではない。

だが一輝、そこに立てない者の為にも、お前が

地に足をつけて立っていること...

無責任にも誇りに思う。

やり切ってこい...出し切ってこい!!



朝日はそう心の中で激励を飛ばし帽子をベンチに置く。



[3番、キャッチャー、星君。背番号10]

場内にアナウンスが流れ観客達が湧き始める。


「来た!星だ!星一輝だ!!」

「いつもここぞと言う場面で決めてきた星...!」

「デカいのぶちかませー!」


天王空気だった球場を湧かせ、打席に立つ一輝


「おいおい...一輝出てきたぞ?!

あの怪我で行けんのかよ?!」

スタンドで座っている那須野も驚く


「アホやな。怪我のまんま試合に出て

ぶち壊す気かいな。漫画の世界ちゃうっつーのに」

鷹宮がいつも通り毒舌を吐く。

「でも蓮、少し嬉しいんちゃう?」

隣に座る白鳥が聞く

鷹宮は折れて包帯が巻かれた手をぎゅっと握り返答する

「アホ言うな...」



打席に立った一輝を泉が鋭い目で見る。

一輝はその殺気に似た雰囲気を飲み込み泉、

そしてファーストにいる藤を見る。

その雰囲気に逆に泉は圧倒されていた。

その時

「優心!」と藤が声をかける


「点取られてもええ!次は俺からや!

逆転ホームランかましてやるから思いっきり投げろ!」

その言葉に少し唖然とする泉。

しかしすぐ微笑み言葉を返す


「もうお前じゃ天野打てんわ!

心配やから俺が終わらせるから黙って見とき!!」

「その意気や!!」


顔を一輝の方へ戻しセットポジションに入る

2塁にいる新沼を返せば1点差、ホームランが出れば同点

そんな状況下でも投げなければならないのがエース。


足を上げ、思い切り腕を振り抜く


パァァン!! 「ボール!!」

初球、外角に真っ直ぐが刺さるもボール。

2球目、右打者の内角を抉るカットボールが決まり

1ボール1ストライク。

3球目は普通のスライダーが指にかかりワンバウンド

するも北島がストップしランナーを進めない。


すまんと手でジェスチャーする泉

北島は考えていた。

同年代のライバルチームで

ポジションも同じキャッチャー。

打撃や守備力で一輝に劣っている事は認めている。

そんな一輝を警戒しない訳なく泉にフォアボールでも

構わないというサインを出す。


しかし泉は首を横に振る


(星も天野も大吾と真っ向からやり合ったんや。

ここで俺だけ芋引いてられるかよ...!)

(そう言うと思ったわ。ええで優心。

お前の全て!このミットにぶつけてこい!!)


グッ...ボッ!! 凄まじい球威のストレートが

構える一輝のインコースへ吸い込まれる。

パァァァン!!「ストライクツー!!」


その真っ直ぐに呼応するように一輝も全力で振り返す

2ボール2ストライク。セオリーならここで決め球の

ホップスライダーだ。

相手がセオリー通り動く打者なら。


(ここはインにもっかい真っ直ぐや。

詰まらせてフライになればラッキー。空振りすれば

俺らの勝ち!気張れよ優心!!)

北島のサインに首を縦に振る泉。


ググッ...ランナーが居るのを忘れたのかと言うほど

力を溜める泉。

ボッ!!その力を思い切り解放しボールは北島の構えた

ミットに向かっていく


(注文通りや!!)北島が確信した次の瞬間。


カァァン!!

一輝の振り抜いた打球はサードが反応できない程

早いスピードでファールゾーンに飛んでいく。

ボールのもう少し下をすくっていればホームラン。

そう思うほどタイミングは完璧だった。


相手は星一輝。テンポのいい投球が売りの

バッテリーに間が空く。


「かなり間を開けてるな」

「うん。それだけ警戒してるって事でしょうね」

ベンチの焦斗と結が話す


「北島君は相手に球種を絞らせないようにテンポよく

リードする捕手。それには試合前の配球を頭に入れて

試合に望むから実現出来るリード...」

「一輝とは逆だな」

「うん。一輝は予め相手の打者を頭に叩き込む。

そこは北島君と同じ。違うのはリードする際

相手に考えさせてその裏を書く事...今は完全に...」

「一輝のペースって事か...」

「うん...」



(ヒヤッとしたがボールは悪くない。

1球外に外して様子見るぞ)

北島が外に構え、ストレートのサインを送る。

泉は少し考え、首を振る


(!!じゃーカーブを...)

再び首を振る泉

(...分かったよ。付き合うぜエース様。

外に決まるホップスライダー...!今ならビシバシ投げれるハズや!!)

深く頷きセットポジションに入る泉。

そしてスッと足をすり足で動かす


ビッ!!

ボールが放たれたほんの一瞬、一輝には世界が遅く感じる。



なんか...すげースローだ...

ボールが見える...コレ、スライダーだ。多分。

こんな感覚...初めてだな。


カッ!!

瞬間、バットの芯にボールが食いつく


「「?!」」

天王バッテリーはそのアジャストに寒気を覚える


カァァン!!

外の浮き上がるスライダーを右方向へ素直に返す。


「「ッ!!大吾!!」」

ファーストに守っていた藤に声をかける2人。


(180ある大吾のタッパや!あの低弾道なら取れる!!)


「うぉぉぉ!!!」

叫びながら藤が高くジャンプする。


バチぃ!! 勢いの着いた打球は藤のグラブを弾き飛ばす

「くっ!!」


ダンッ!!

藤がボールを零したのを確認する前に、2塁ランナーの

新沼は3塁ベースを蹴っていた。


「成田!!バックホーム!!」

天王ボーイズライト、成田が弱まった打球にいち早く

反応しボールを拾う


「ギリギリだ!」

「いや間に合うか?!」

観客も堪らず立ち上がり声を発する


「新沼ー!!走れー!!!」

「突っ込め新沼ー!!」

張り裂けそうな声で桑山ベンチが叫ぶ


「突っ込め新沼ー!!!」

一塁に到達した一輝も右手の痛みを忘れるほどの

大きな声で叫ぶ


「こっちだ新沼ー!滑れー!!」

ネクストバッターの島崎が大きいジェスチャーをする

パンッ!!とボールがホームへ返される


大きな砂埃を立てながら新沼が滑り

追うようにキャッチャー北島がタッチをする。


「....」

先程の盛り上がりが嘘のように静寂が球場を包む

その静寂を審判が破る




「.....アウトー!!!ゲームセット!!」


「「うぉぉぉぉぉ」」っという怒号のような叫びが

球場全体を揺らす


「勝ったのは天王!!天王ボーイズだー!!!」

「王座奪還!!春季全国大会を制覇したのは

王者天王ボーイズだぁぁ!!!」


その判定にベンチから飛び出していた

桑山ボーイズのメンバーが膝から崩れ落ちる。


一塁からその光景を見ていた一輝は立ち尽くしたまま

だった。



終わっ...たのか...

これで...本当に...終わりなのか...


立ち尽くす一輝の肩にポンっと手が置かれる

天王ボーイズ主将、藤大吾だった。


「大吾...終わったのか?」

「...あぁ。」

「そっか。また負けちまったんだな。俺ら」

「あぁ。」

「あー...そっかぁ。届かなかったか〜」

「あぁ。」


そう言いその場でしゃがみこむ一輝


「強えな。天王おまえらはほんとに」

「あぁ。せやけど一輝。」

「んー...?」

「俺がやってきた野球人生で今日ほど楽しく

手に汗握った試合はない。野球、やってきて良かった」

「...俺もだよ」

大吾に差し出された左手に左手で握り返す一輝。

そのままその場に立たせてもらう。


「じゃ、整列するか大吾」

「あぁ。一輝」


一輝と大吾がホームへ歩いていくと選手達で壁が

できていた。


「なんで...!!なんでアウトなんですか?!

タイミングはこっちが早かったでしょう?!」

「タイミングはギリギリだった。

しかし北島君のタッチの方が早かった。」

「そんな...そんな訳...ぐっ...ぐっ...」


そこには地面に伏せながら審判に抗議している新沼

が居た。


「新沼...!やめろ!お前に落ち度はない!!」

「そうです新沼さん!」

「新沼!!」

伏せている新沼を桑山ナインが宥める


「俺の...俺のせいで...うぅ...ぐっ...」

「お前がアウトなら、誰も文句言わねーよ」

膝まづいて泣く新沼に一輝が声をかける


「星...」

「御手洗に負けず劣らずの走塁技術と瞬足のお前が

アウトになって、誰が不満になるんだよ?

新沼、整列しよう。誰も彼も綺麗に終われないが

俺らは良くやった。そうだろ??」

「ふっ...ぐぅ...すまん...星...」


肩を貸しながら新沼を起こし整列をする両チーム


「長いこと審判をやってきた私にとっても

一生忘れられない試合でした!!双方、礼!!」

「「ありがとうございました!!!」」


春季全国大会。2-0で勝者天王ボーイズ。






「じゃーすまんが頼んだぞ高島」

「はい。病院の後しっかり家まで届けます。

選手達のことはよろしくお願いいたします。監督」

「あぁ。」

タクシーを呼び一輝を病院に連れていく為

高島が同乗する


「一輝。」

「! はい。」

「無能な監督を許してくれ

お前は最後までキャプテンだった。ワシの誇りだ」

「...ありがとうございます。」

座席に座ったまま頭を下げる一輝。

そのまま車は走り病院へと向かう



「高島コーチ...やっぱ負けるって辛いですね」

「あぁ。俺もお前らなら勝てると思っていた」

「...怪我も同じくらい...辛い...ですね」

「あぁ。俺もお前と同じくらい辛い」

「...ぐっ...ひぐっ...」

「泣くな。最後まで立派だった。

まだ始まったばかりの野球人生だ。これからも大変

になっていく。その度にお前は強くなるぞ」

「ぐっ...はいっ...うっ...うぅ...」


ポンっと一輝の頭を撫でる高島の手は暖かかった


ご視聴ありがとうございました!

次回もよろしくお願いいたします!

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