異変と異常
5回の裏、焦斗のタイムリー、一輝の犠牲フライで
一点差に追いついた桑山ボーイズは5番一輝の後ろ
6番新沼がセカンドゴロに倒れる。
そして6回の表裏とどちらも点が入らないまま
桜木ボーイズリリードで試合が進み7回。
アナウンスが球場に響き渡る
《7回の表、選手の交代をお知らせします
ピッチャーの天野君がレフト、レフトの綾部君に変わり、ピッチャー、白田君。背番号、11》
前日と合わせ投球制限の焦斗が下がり2番手の白田が
マウンドに上がる。
「さ!どんどん打たれてい行くからな!
バックの皆よろしく頼むぜ!!」
その白田の声に
「打たれんな!打たせてけ!」
「元気はほんとに良いな!」などのツッコミが
怒涛に浴びせられるが、白田は耳に手を当てそれを聞く
「面白い奴が出てきたな!俺もあれやりてぇ!」
「良兄はいつも面白いからやらなくていいよ」
「お?!そうか?!」
桜木ボーイズも負けじと活気があった。
桜木ボーイズは9番山本が打席に入る。
タァン! 「ストライク!!」
綺麗なカーブがインコースに決まる。
山本はベンチの方を向き、(カーブ来たよ)と
ジェスチャーを送る。
ネクストの那須野がウンウンと頷く
ビッ! カァン!
「御手洗!!」
白田が転がった方を指さし声を出す
パシッ! っと御手洗が上手く捌きファーストへ送る。
「1アウト!いいボールだ白田!」
「おぉ!」
テンポの良い投球でアウトを取る白田に声を掛ける一輝
すると
「これがホントの桑山ボーイズなんだな..!一輝!」
「良平...ははっ。あぁ!これが俺達だ!」
「まじにぶつかり合う。俺の好きな試合展開だ。
燃え尽きるまで、全力でやろうぜ!」
親指を立てながらそう話す那須野に一輝もえみが溢れる
ザッ!ザッ! っと右打席に入り足場を整える那須野。
そしてグッと構えるといつもの那須野とは雰囲気が
変わる。
(気遅れするなよ白田。人と競わず自分のスタイルで
勝負するのがお前の強みだ!)
一輝のサインに頷き、白田がワインドアップで構える
ビッ! カァァン!!
鋭い打球がレフトポール目掛けて飛んでいく。
「ファールボール!!」
(ちょっと早すぎたな...早めに曲がるからバットも早く出すぎちまった...)
「...よしっ!」
冷静に分析し打席で気合いを飛ばす
グッ...ビッ! タァン! 「ストライク!!」
外に決まるスライダーで2ストライクとカウントは有利になる。
ビッ! タァン! 「ボール!」
ビッ! タァン! 「ボールツー!」
カウント2-2とバッティングカウントになる。
(次だ。次のボールで決まる...)
那須野が考える。
(...低めでいい。思いきし腕触れ白田!)
そのサインに少し戸惑いながらも白田は頷き
足を上げる。
ググッ...ビッ!!
「!!」
そのボールに那須野は驚く
「お、遅せぇ!チェンジ...アップ...!」
カァァン!!
「「何?!」」
踏ん張りを効かせたその下半身で踏み止まり
那須野はボールに上手く合わせバットを振り抜く
「焦斗ー!!!」
打球は左中間に勢いよく飛んでいく。
バッ! と飛びボールを掴もうとした焦斗。
「無理するな!」
ドッ!! ボールに届かずその場に焦斗が伏せる。
「外野はそこまでなのか...」
そう呟きながらも那須野は快速を飛ばす。
「3つだ!!山崎!!」
一輝はカバーに入ったセンターの山崎に声をかける。
「いいや!俺は帰るね!!」
そう高らかに宣言しながらダンッ!っと3塁ベースを
踏む那須野。
パンッ!っと中継に放った山崎。そして
「舐めるなよ!!」と言いながらホームへ送球する
御手洗。
ビッ!! 「「!!」」
瞬間、送球が左に逸れる。
その様子を見た那須野は一直線に進む。
パンッ!! っと逸れたボールを一輝掴みタッチしに行く
瞬間、グルっと進行方向を変えながら避ける那須野。
「まだだ!!」ダンッ!っと右手を地面に付けながら
追いタッチをしようとした瞬間。
ビキッ! っと右手に痛覚が走る。
「ぐっ...そぉぉぉ!!!!」
と言いながら那須野にバシッ! っとタッチする一輝。
「は?!」
那須野は追いついた一輝に驚きながらそのまま
スライディングをする。
「...アウトー!!」
そのコールに球場が湧く
「打った那須野もすげーけどその後の見事な連携!!」
「あのキャッチャー身体が伸びたぞ!!」
「暴走してんじゃねー!素人ー!」
「アホゴリラー!!」
など罵詈雑言を飛ばされるが舌を出しながら頭を
ポリポリする那須野。
ふと一輝の方を見ると、右手を抑えながら俯いていた。
「一輝...??」
「...」
那須野の呼びかけに何も返答しない一輝。
「お、おい、平気かよ??」
一瞬の間が空き、バッと顔をあげる一輝。
「いや〜!めっちゃギリギリ!
お前足速すぎるよ!避けんのもうめーし!」
「いや...平気なのか?一輝...??」
「ん?なにが?早くベンチ戻れよ!しっし!」
そう笑顔で言いながら左手で追い払う仕草をする一輝。
「あ、あぁ。平気なら良いんだけど...」
そういいベンチに下がっていく那須野。
その後の2番打者を打ち取り攻守交替。
ベンチに戻ると一輝は円陣にも加わらずロッカールームへ一人で座る。
右手をぐっぱぐっぱさせ、少し腫れた部分を氷で当てる
「一輝??」
その声にバッと顔を向ける一輝。
そこにはマネージャーの結が立っていた
「どうしたの??右手...」
「あぁ、いや...ちょっとさっき擦りむいてさ。
バイ菌入っちまったら嫌だなーって。」
「そう...なの...??」
「あぁ!てか俺ネクストか!急がねーとな!」
そういい結を避けながらグラウンドに戻る一輝。
その後ろ姿を心配そうに見守る結。
レガースを外しヘルメットを被ろうとしていると
パァァン!! っと破裂音が響く。
焦斗が投げてんのか??悔しいのはわかるけど
オーバーワークは駄目だろあのバカは。
そう一輝が考えていると
「なんかあったか??」と焦斗が顔を覗かせる
「いや、なんでもな...って焦斗?!」
驚く一輝に焦斗も驚く
「なんだよ??」
「え?!お前がブルペンで投げてんじゃねーのか?!」
「なんでだよ...相手の投球練習見てみろよ」
「相手って...吉川...は?!」
一輝が目を向けたマウンドには
センターを守っていた那須野が立っていた。
「良...平?!」
「あぁ。あいつピッチャーもやるんだとよ...」
「まじか...」
良平がピッチャーやることにはもちろん驚いた。
だがそれ以上に驚いたのはその真っ直ぐの球威だ。
長年焦斗のボールを取っている俺が聞き間違える
程のスピード。
《7回の裏、桑山ボーイズの攻撃は
4番、ライト、島崎くん。》
島崎が打席に入る。
グッと構えると那須野もグッと振りかぶる
ググッ... その異様に力が溜められたフォーム。
高くあげている足。そして...
ボッ!! パァァァン!! 「ストライク!!」
その急速に球場がざわつく。
141km。野手投げでこの球速だ。
パァァァン!! 「ストライク!!」
その無茶苦茶なフォームに凄まじい球威球速。
島崎もたじろく。
ボッ! パァァン! 「ストライクバッターアウト!!」
「くっ...!!」
「よっしゃ!1アウト!!」
グッとガッツポーズする那須野。
そして流れるアナウンス
《5番、キャッチャー、星くん》
世代の怪物同士がぶつかる
ご視聴ありがとうございました!
次回もよろしくお願いします!!




