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ダイヤモンドスター  作者: オカピ
中学正編
70/73

児童施設の天才

「5回!締まっていくぞ!」

「「しゃぁぁ!!」」


戸山と交代した一輝が野手たちに声をかけ

それに皆が大きい声で答える


5回の表、桜木ボーイズの攻撃は

6番鈴村。


打席に入った瞬間、彼は実感する。

桑山に何かが起きたことを


(なんだ…この感じ…2打席目なのにプレッシャーは

1打席目以上だ…)


パァン!っとミットを叩き一輝が構える。

サインを確認した焦斗が深く頷き足をスっと上げる。


ボッ!! パァァン!!「ストライク!!」


(速いけど。球速は変わらない…変わらないけど…

なんか…変?)


ボッ! パァァァン!! 「ストライクツー!」

テンポよく真っ直ぐを投げる焦斗。

そして3球目


ボッ!! パァァァン!! 「くっ…!!」

「ストライクバッターアウト!!」


「よしっ!ナイスボールだ天野!」

「後ろ打たせて良いからな!楽にいけ!」


さっきまでとは違い、桑山ナインに活気が着いてきた


パァァン!「ストライクバッターアウト!!」

パァァン! 「ストライクバッターアウト!!!」


6.7.8番を連続三振に仕留めると

焦斗は小さいガッツポーズをする。


「よっしゃぁ!このまま攻撃行くぞ!」

「しゃぁあ!!」


盛り上がる桑山ボーイズを見て

ベンチに居た那須野良平が震える


「これが…桑山ボーイズなんだな…一輝!」


何処か嬉しそうにそう言う那須野。


「お前ら!3点じゃ足りなそーだな!

全員で1点もぎ取って行こうぜ!!」


そう言いながらグラウンドに駆け出していく那須野。

すると


「良兄!帽子とグローブ忘れてんぞ!!」

「点取る前に点取られない為に守備があるんだよ!」


全員が一斉にツッコム。

帽子とグローブを取りに戻る那須野にマネージャーの

吉良明里が那須野に問う


「ねぇ良ちゃん?」

「ん?なんだ??」

「今…楽しい??」


その言葉に一瞬足が止まる。

そして笑顔で答える


「あぁ!!過去最高に楽しいぜ!!」

「…そう…良かった」

明里の笑顔を見て、彼は今度こそグラウンドに出ていく


彼の笑顔を見て明里は数年前を思い出す



〜6年前〜


「今日みんなとここで一緒に生活することになった

那須野良平君だ。みんな仲良くして行こうね」


良ちゃんが施設に来たのは6年前。

まだ私も良ちゃんも小学2年生、7歳の時だった。


「初めましてー!那須野良平です!小2!

この前まで町田に住んでました!!よろしく!」

「町田って東京なの?神奈川でしょ?」

「町田は東京なんだけど?!横浜住んでるからって

そういうの良くないよー?!」


そういう返しにも元気よく挨拶したのを今でも覚えてる


「小2なら明里ちゃんと同い年だねー」

「明里ちゃんの方が大人っぽいなー」

「俺の方が身長高い!

全然小2って見られないけどなー!」


最初は変に元気だし身長だけで大人っぽいとか言って

子供な子だなっていう印象しか無かった。

施設は22人居るけど私達以外はみんな年下。

良ちゃんはそんな子達ともすぐ仲良く遊んでいた。


「良兄野球一緒にやろー!」

「野球ー?やった事ないよ俺ー」

「良兄運動神経いいからできるよー」

「じゃー…やるか!!」


良ちゃんが初めて野球のボールを触ったのがその時

だった。


小さい子達と野球をやっているのが嬉しかったのか

自分からキャッチボールに誘うようになっていた。


ある日、みんなが寝静まった夜、タンッ!タンッ!

という音が庭から聞こえてきた。

私は施設に泥棒が入ったんじゃないかと思って

みんなが使っていたバットを持って私は施設長を探しに行った。


すると、庭を見ていた施設長を見つけた。

私は駆け寄り話す


「施設長!泥棒が…」

そう私が声を出した瞬間、目に写ったのは

壁当てをしている良ちゃんの姿だった。

施設長はその姿を黙って見ていた。


再び良ちゃんの方に目を向けるとボールが跳ね返り

それを良ちゃんが取ろうと手を伸ばす。

しかし、ボールを取らずその場に固まってしまった。


ポタっと涙が良ちゃんから零れる。

「父ちゃん…母ちゃん…」

そう言い彼はその場にうずくまってしまった。


施設長に聞いたけど、良ちゃんの両親は

仕事で海外に行っていたらしい。

そして日本に帰る為の飛行機で…


彼が今まで振舞っていた気丈な態度を振り返ると

私も涙が勝手にこぼれた。


啜り泣く私の声に良ちゃんが気づいて目をぐしぐしと

拭きながらまた元気よく声をかける


「あ!施設長!明里!ごめんごめん!音で起こしちゃった?!いやー!結構壁当てでも楽しくてさ!」


赤い目のまま彼はそう話す。

そして施設長が口を開く


「良平。野球、楽しいか??」

「え?」

「野球、やってみないか??」

「いや、でも、野球はお金が…」

「子供がそんな心配するんじゃない。

任せなさい。ワシが監督もやってやる。

野球用具も当てがある。

もう我慢なんてするんじゃない。好きに生きなさい」


その言葉に、拭った涙が再び溢れる良平。

それは明里も同じだった。

2人は施設長の胸で泣き、夜を明かした。




〜現在〜


「一点を返した桑山ボーイズ!1アウト1.3塁で

迎えるのは…!!」


観客がそう興奮しながら話すとアナウンスが球場に響く


《5番、キャッチャー、星君》


「来た!今日初打席!

ここで一発出れば一気に逆転だ!!」


一輝の登場に球場全体が湧く


ビッ! タンッ! 「ボール!!」

桜木バッテリーも警戒してか中々ストライクが

決まらない。

すると


「秀太ー!辰哉ー!思い切り打たせてこーい!

俺んとこ来れば全部アウトにしてやるぞー!!」


センターから声が聞こえる。

キャプテンの那須野が大きな声でバッテリーを盛り上げる。


「「良兄…!!」」

バッテリーが良い笑顔でその声に励まされる。

桜木ボーイズ。このチームは施設長が立ち上げ

施設に居る子供達の大半が所属しここまでやってきた

チームだ。


グッと足を上げ

ビッ!っと放る。


カァァァン!!

そのボールを一輝が思い切り振り抜く。

打球は伸び、左中間。しかしまだ球は落ちてこない。


「行った?!行ったぞ!!これ!!」

「いけー!入れー!!」


叫ぶ桑山ボーイズ。


「「良兄!!!」」

「良ちゃん!!!」


その声に答えるように那須野が駆け出す


(施設長(かんとく)、俺、この施設で、このチームで

野球出来てほんとに幸せだよ…!!

勝ちたい…勝ちたい!このチームで!みんなと!)


ガッ!っとフェンスに足をかけ、その勢いのまま

飛ぶ那須野。


パンッ! フェンスを超えた打球をがっちりと掴む

那須野。


「ほ、ホームランキャッチ?!」

「なんなんだよアイツ?!」


ホームランボールを取ったのを確認し、驚きながらも

3塁ランナーの焦斗がタッチアップを成功させる。


「ツーアウト!」とバッテリーに指を見せながら

那須野は笑っていた。


「アイツ…すっげぇ!!」

そしてそのプレーに、思わず一輝も笑いながら

声を出してしまう。




ご視聴ありがとうございました!

次回もよろしくお願いします!

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