注目選手
ボーイズリーグ春季全国大会
初戦を突破した桑山ボーイズは同日に行われる
2回戦の為休息と昼食を取っていた。
「中間テストがよー、あと数週間後ってやばいよな」
「それな!俺んとこなんて数学の範囲広すぎるからな」
「お前は広くても関係ないだろ。全部赤点なんだから」
たわい無い話をしながらスタンドで昼食を食べていると
「俺ちょっとトイレー」と一輝が席を立つ
「俺も」と焦斗が一緒に席を立ちトイレへ行く
「剣心がさー夏鈴と同じ高校がいいから女子野球部が
あるところにしか行かないとか言っててさー」
「あのシスコンも大概にしないとな」
話しながら2人で歩いていると
目の前に1人の男が立っている。
「星くん、天野くんだね??」
2人は足を止める
「はい、そうですけど...」
「俺はこういうものだ」
そう言うと男は名刺を渡す。
そこには桐皇学園野球部部長・大塚と書いてあった
「とう...皇?!桐皇の部長さんが...どうしてここに...」
「もちろん、君達2人をスカウトしに来たからさ。
本当は監督さんを交えてお話したかったが
歩いている君たちを見たら声をかけずには居られなくてな。どうだい??」
「「...」」
2人が答えずにいると男は続ける
「はっきり言おう、君達の世代は異常だ。
天王ボーイズの藤くん、泉くん。
舞鶴ボーイズの鷹宮くん、桜木ボーイズの那須野くん。
中附ボーイズの長房くん。そして君達がさっき戦った
狭山市ボーイズの幸村くん。
全員が全員、年齢が違えばその世代の顔になった
役者揃いだ。桐皇は君達全員が欲しいんだ。」
名前が上がった選手は全員がスポーツ記事に乗ったような面子ばかり。正直、そんな夢のチームがあれば俺は
一緒に目指したい...甲子園を
ただ...
「すいません。今は大会中という事もあるので
僕からの返事はまだ保留しておいて貰えますか??」
「俺もお願いします」
俺の言葉に焦斗が続く。
男はフッと笑い話を続ける
「わかった。すまなかったな。これからまた試合というのに声をかけてしまって。」
「いえ...」
「きっと他の高校からも声は掛かっているだろう。
でも我が校は君たちに1番いい席を用意して待っているよ。」
「はい...ありがとうございます!」
スタスタと歩いていく男はそのまま
トイレに入っていった。俺たちは並ぶのが気まずいから
外に出てくるのを待ってから入ることにした。
再び出てきて向こうもカッコつけて出ていった手前、
少し恥ずかしそうにしていた。
そしてまた立ち止まり俺に言う
「あぁ、そうだ星くん。」
「え、はい...」
「チームの変化には敏感にね」
「え....?」
そう言い、今度こそほんとにどっかに行ってしまった
昼食が終わり少ししてからチームのアップ時間になる。
その間も俺と焦斗には張り付いたように記者が群がる
「両チーム集合!!」
アップが終わりベンチ前から勢い良く全員が飛び出す
桑山ボーイズの先発は新2年生小川
キャッチャーはいつも通りキャプテンの星一輝。
立ち上がりは悪かったが師匠の焦斗譲りの豪快な投球で
相手チームを完封する。
そして...
キィィィン!! ドムっ!!
今日4打席目に立った一輝が3本目のホームランを放つ
ベンチに戻った一輝は皆の声援に包まれながらも
いつも通りレガースを付ける。
喜びを分かち合う仲間。
しかし桑山ナインはこの試合、ホームランを狙う者、
派手な守備をしようとして落球するなどのプレーが
見られた。
試合は6-4で勝ち、桑山ボーイズは2回戦を突破。
明日は春季全国大会準決勝
相手は神奈川の桜木ボーイズだ。
帰りのバスでは勝利を喜ぶ声が上がる中
3年生の空気は良くなかった。
結がSNSをチェックしているとある記事が目に留まる
《桑山ボーイズ、秋春全国制覇なるか?!》
《主将星一輝、エース天野が率いる桑山ボーイズの
快進撃はどこまで行くのか?!》
結はその記事を見て悪い予感が当たったのを確信する。
一輝と焦斗を持ち上げる記事、それもその記事だけではなかった。
バスを降り桑山ボーイズグラウンドに着いた一行は
各々解散。だが一輝は監督室に呼ばれる。
コンコンっとノックし入る一輝
「失礼します。監督、お話とは??」
部屋には監督の朝日、コーチの高島、山城がいた。
「お疲れさん。すまんな、試合終わりに」
「いえ、大丈夫です。」
「早速だが一輝、今のチームはどうだ??」
その質問に一輝は疑問を覚えながらも答える
「勝ち進んでいるので状態は悪くないと思います...
選手一人一人も勝利に向かって全力です!」
「…明日は勝てるか??」
「? はい!もちろんです!」
その答えに朝日は目を細めフーっと息を吐く
「お前は何も分かっていない」
「え?」
「お前はキャプテンでありながら何も見えておらん。」
「それは…どういう…??」
「明日の試合、先発は天野で行く。
キャッチャーは戸山だ。」
「な?!どういう事です?!」
動揺する俺に構うことなく鋭い眼差しで監督は続ける
「キャプテン、いやキャッチャーとして今のお前を
チームに置く訳には行かない。ベンチで試合を見ながらら頭を冷やせ。」
「な、納得できません!」
「話は終わりだ、出ていきなさい」
その後も何度か抗議をしたが相手にされず
一輝は監督室を後にする。
監督室に残ったコーチ陣が監督に聞く
「監督...良いんですか??」
「なにがだ」
「真意を伝えなくて...相手は4年前に作られた
新米のチームとはいえ、去年の夏も今年の春も全国に出場しているチーム!星にしっかり話して明日も星を出すべきでは?!」
「そうです。いくらなんでも投げやりでは??」
説得する高島、山城に朝日が言う
「これはあいつ自身がキャプテンとして、1人の選手
として自覚と覚悟を持たなければならない事だ。
でなければ今後、一輝は潰れる。
教育者としてそこは教えなければならない。」
「…監督...」
春の全国大会準決勝、桜木ボーイズ戦がはじまる
ご視聴ありがとうございました!
明日も投稿予定です!




