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ダイヤモンドスター  作者: オカピ
中学正編
64/70

負けないもん

ガササッ!


一輝の放った打球は場外へ消える

特大ホームランとなった。


ベースを1周してきた一輝は、ネクストでポカーンと

突っ立っている島崎に声をかける


「ホームランの後、真っ直ぐ投げがちだから

島崎もそれ狙っていけよ!投げ方に騙されず...島崎?」

「え、あっ、あぁ...」

「どうした?体調悪いか??」

「いや、大丈夫だ。行ってくる...」


島崎の様子がおかしい。

ホームランの後が打ちずらいのはわかるけど

あまり力を入れずしっかり自分のバッティングをしてて欲しいな...


そう思いながら一輝はベンチへ下がっていく


「ナイスバッチ」

「さすがは星だな」


そういう仲間に「ありがとー」と

いつも通り返す一輝。

その光景に焦斗、御手洗、そして同じ新3年生達は

言葉を失っていた。 多分島崎もだろう。


その後島崎はヒットを打ったが、5番の梶原が

ポップフライに倒れ、この回は1点で終わった。


そして迎える狭山市ボーイズの攻撃は

先程打席に立ったが2塁の牽制死で打てなかった

狭山市ボーイズ4番、幸村剣心


ボッ! パァァン!! 「ストライク!!」

焦斗の直球を微動だにせず構え続ける剣心


ボッ! パァァン! 「ボール!」 「ボール!!」

2球目、3球目は外れ2ボール1ストライク。

バッティングカウントだ。


(ストレートは3球目見せた...

いくらストレートに強いと言えど、次は頭に無いはずだ

思い切り腕を振れ!焦斗!)


ストレートのサインを出し、焦斗も頷く。


グッ...ボッ!!

ゴォォォっと向かってくる豪速球。

剣心はググッっと身体を溜め、 ボッ!!っと振り抜く


ダンッ!! 瞬間、ボールは瞬く間にライトフェンスに

直撃する。


「なに?!」 焦斗がワンテンポ遅れて反応

「バックセカンド!!」すかさず一輝はライトの島崎に

指示を促す。


トンッ... 剣心は難なく2塁ベースへと到着する。


(押し切られた...そのせいで芯では捉えきれなくて

スタンドまでは行かなかった...焦斗君は凄いな...)


140kmをフェンスまで持っていくパワー。

小動物のような雰囲気からは想像できないだろう。


後続の5.6.7番は抑え切り、2回の裏へ。


3回、4回、5回へと会話進む。


カァァン!!

ドムッ!


5回の裏、本日3度目の打席に入る一輝。

3回の攻撃では敬遠されたが、1アウト1塁で

再び追加点となるツーランホームランを決める。


球場はその傑物を前に、ただ固唾を飲むことしか

できなかった。

それは桑山ベンチも同じだ。


《ピッチャーの交代をお知らせします。》

静まり返った球場にアナウンスが響く。


幸村夏鈴に代わり、レフトを守っていた選手が下がる。

夏鈴はレフトへと促されたが中々動かない。


内野手が全員集まり、夏鈴に交代を促す


「夏鈴、監督の命令だ。な?代わろう」

「...」

「打たれたヒットだって3.4本だろ?

そこまできにすることじゃない...今日は星の調子が良かっただけだよ」


チームメイトがそう励ます


「アタシだって今日、調子良かった。

コースに変化球は決まるし、真っ直ぐも伸びてた...

なのになんで...打たれるの..?」

「夏鈴...」


チームメイトがどうすれば良いのか分からず

言葉が詰まっていると


「姉さん、交代だ。早くグローブ持ち替えてレフトへ

行ってくれ。姉さんがやれることはここには無いよ。」

「!け、剣心!?」


普段姉の尻に敷かれている剣心が強めの言葉を

姉に放つ。

チームメイト達はその態度に驚きと夏鈴が不機嫌にならないかの心配をしていた。


夏鈴はしょぼくれたままマウンドを去り

グローブをはめレフトへと走っていった。


「剣心、良いのかよ?あんなこと言って...」

「うん...こうでも言わないと姉さんは言うことを

聞いてくれないよ。」

「そう...なのか??」

「ただ」


剣心が続ける

「ただ僕の姉さんを泣かせた事を後悔してもらうよ」


スコアボードを目に焼きつけるように見ている

剣心の拳は、固く握られていた。



カァァン! パシッ! 「アウト!」

夏鈴に変わって投げた投手は

ヒットを浴びるも何とか無失点に抑え6回の攻撃へ

勢いの付くピッチングを披露する。



パァァン! 「ストライクバッターアウト!」

9番の選手を三振にし、打順は1番へ戻った。


《1番、レフト、幸村さん》


悔しさを引きずっているのか、険しい顔をした夏鈴が

打席に入る。




…アタシは別に、男子には絶対負けない選手になりたいとか思ったことは無い。

男女、特に中学生になれば筋力に差が出るのは

当たり前のこと。

でもそれを言い訳に練習を怠ったことは無い。


小学4年生の時、始めた野球。

もちろんベンチなど入れるはずもなく、アタシはただ

試合を傍観するだけだった。


キィン!

「セカンド!行ったぞ!」

パンッ! ビッ! 「アウト!」


流れるような美しい守備


キィィン!

「しゃー!ナイスバッチ!」


派手さは無いが堅実なバッティング


アタシと同い年だという彼女のプレーを見て

アタシは男子に負けない。よりも彼女になりたい

という夢ができた。


「ね、ねぇ!」

「ん?」


試合終わり、その子に声をかけてみた。


「結、知り合い?」

「えーっと...」


男の子にそう聞かれ、彼女は困惑する。

顔を忘れたとか思ってるのかな...


「アタシ、狭山ファイターズの幸村夏鈴って言います!アナタのプレーが凄くかっこよかったから...

名前だけ教えてくれますか?!」


勢いに任せ思ったこと全て口にしてしまった。

恥ずかしい。

その子は少し間を置いたあと、頭を下げてるアタシに

手を差し伸べこう言う。


「ウチ、朝日結!よろしくね!夏鈴ちゃん!」

「う、うん!」





ググッ...ボッ!! パァァン!! 「ストライク!!」

夏鈴が昔のことを少し思い出していると、焦斗が

ボールを放る。


男子に負ける負けないはどうでもいい...

アタシは...


ググッ...ボッ!


唸りを上げて迫り来る豪速球に

合わせるようにタイミングを取り踏み込む夏鈴。


カッ!!

アタシはただ...結ちゃんみたいになりたかっただけ...!



キィィン!!


振り抜いた打球は焦斗の足元を抜け

ショートを守る御手洗の横を抜ける

シングルヒットとなる。


一塁に到達した夏鈴は思う


(うぅ...手ぇ痛い...初回より球威上がってる...)

ふと視線に気づく。

桑山ベンチでスコアをつけている結が夏鈴を見ていた。


夏鈴はそれに気づき、痛い手をグッと握りしめ

笑顔で結に拳を突き出す。


ご視聴ありがとうございました!

次回もよろしくお願いします!

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