ホンモノ
3月下旬。駒沢公園野球場
この日は全国大会本戦1回戦
桑山ボーイズVS狭山市ボーイズが行われようとしていた
観客席はザワザワと観客が話す声が聞こえる。
そして聞こえるのは高校野球のスカウトの声もだ。
「桑山の星くん、天野くん共にまだ進学が決まっていないとはな...ウチにもチャンスあるんじゃないか?」
話すのは埼玉の強豪
花坂徳英スカウト寺野
「いやいや。あのレベルが決まってないわけ無いじゃないですか。私の読みでは「あの高校」だと思うね」
寺野に返すように話すのは広島光栄高校スカウト島田。
「噂では天野が40以上。星に関しては60校以上
スカウトの声がかかっているらしいからな。
まぁまず間違いなく大阪の「桐皇高校」からもかかっているだろうな。」
3人目は京都の王者京都祇園高校スカウト館山
3人が話していると
「プレイボール!!」と審判の声がかかる。
《1回の表、狭山市ボーイズの攻撃は1番、ピッチャー
幸村さん》
狭山市ボーイズの1番打者は幸村夏鈴。
強豪ボーイズで女子でありながらエースナンバーを
背負い、打者としても1番を任されている。
桑山ボーイズ初戦のマウンドを託されたのは
エース天野焦斗。
捕手はいつも通り相棒の星一輝だ。
一輝のサインに頷き、グッと足を上げる焦斗。
ボッ! カァァン!!
「?!」
初球、一塁線へ痛烈な当たりが飛ぶ。
ファーストを守っていた桑山ボーイズ新2年生摩耶は
飛びつくが取れない。
「フェア!!」審判のコールが球場に響く
「バックセカンド!!」一輝が叫び、フェンス際の
打球を島崎が冷静に処理。
ビッ!っとセカンドに投げるも夏鈴は2塁へ到達。
打たれた焦斗は「まじか」というような顔をしていたが
「焦斗!!」と一輝に言われ我に返る。
フーッと息を吐き冷静になる。
パァァン! パァァァン!
「ストライクバッターアウト!」
2番、3番を三振に切って落としツーアウトとなる。
そして
《4番、サード、幸村くん》
小動物並の雰囲気しかないその男が左打席に入る
「お、お願いします!」と審判にぺこり。
一瞬一輝を見たがすぐにマウンドにいる焦斗に照準を
合わせる。
その瞬間、ブワッと、ナニかが溢れる。
「な、なんだ?何か...変だ」
セカンドを守っていた桑山ボーイズ新3年生新沼
ライトを守っていた同じく新3年生島崎はその態度の
急変ぶりに寒気を覚える。
「相変わらず打席に立つとすげー雰囲気だな...
ね?夏鈴ちゃん」
ショートを守っていた御手洗が夏鈴に声をかける
「御手洗くん、久しぶりだね。君は変わらず可愛いね」
「可愛い言うな!」
一輝、焦斗、結と同じ学童チームだった御手洗も
もちろん幸村姉弟と面識がある。
(焦斗、わかってるな。結のデータによると真っ直ぐの
打率が6割越え、得点圏に至っては7割超えだ...
だからって日寄るなよ!!)
一輝のサインに頷きグッと足を上げる焦斗。
ボッ! パァァン!!「ボール!!」
アウトローギリギリを見極められる。
「OKOK!ローボールOKだぜ焦斗!」
一輝がそう話しながら立ち上がろうとした時
ボッ!! 「え?!」 パァァン!!
「ア、アウト!!チェンジ!!」
立ち上がると同時に一輝が放った2塁牽制はドンピシャに決まり、2塁ランナーの夏鈴をアウトに取る。
「ぁ...あぁ...」
凄まじい送球に2塁ランナーの夏鈴、バッターボックスの剣心は唖然とする。
「な、なんてバカ肩や...メジャーリーガーかいな?!」
「中学生とは思えん...攻守共に既に中学生の域を超えてる...」
スカウト陣、観客が動揺する。
1回の裏、夏鈴がマウンドに上がる。
《1回の裏、桑山ボーイズの攻撃は
1番、ショート、御手洗くん》
いつも通り御手洗は左打席へ入る
グッと構え、夏鈴のボールを待つ。
マウンドの夏鈴はググッっと足を上げる。
「なんだあの構え?!」
桑山ベンチ、観客から声が漏れる
左足を思い切り後ろにし、背番号が見えるくらい身体を捻る。
そしてビッ!っとオーバースローで放られる。
パァァン! 「ストライク!!」
(な、なんつー変則投法だよ...!
しかも女子なのにオーバースローか...)
タンッ! カーブが外に決まるも「ボール!」と判定
される。
(星が言ってたな、今日の審判判定狭めって...
確かに狭え...これは投げずら...)
タンッ! 「ストライクツー!」
(…お構い無しにストライク...いいピッチャーだぜ
クソッタレ)
ビッ! キィィン!
「剣心!」 パンッ!
際どいボールを剣心ががっちり掴む。
ビッ! パァァン! 「アウト!!」
守備範囲ギリギリ、抜けそうなボールを掴み
御手洗をアウトにする。
走力の高い御手洗をギリギリの位置からアウトにできる
守備力。
剣心も走攻守揃うボーイズリーグトップクラスの
選手という事を見せつける。
キィィン! パンッ!
2番摩耶はピッチャーライナーに討ち取られ
5球で2アウト。テンポがいいのが彼女の投球だ。
《3番、キャッチャー、星くん》
ウグイス嬢のアナウンスに球場が期待の歓声を上げる
桑山ベンチでは討ち取られた御手洗、摩耶が
他の選手たちへ情報共有している。
「夏鈴ちゃんの投球はスピードこそねぇが
初打席で捉えんのきちーな」
「そうですね。ダイナミックな投法に騙されますが
真っ直ぐはそこまで来ません...」
「オマケに緩いカーブ...遅いだけに引っ掛ける可能性
は高ぇ...あの投法だ。ガス欠もはや...」
カァァァン!!
ベンチで話しているチームメイトの会話が途切れる。
ガササッ!
一輝が打った打球はレフトフェンスを超え、
ネットを超え場外へ消えていく特大ホームランとなる。
ポイッとバットを放り、一輝はダイヤモンドを回る。
ご視聴ありがとうございました!
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