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ダイヤモンドスター  作者: オカピ
中学正編
6/70

桑山ボーイズと初打席


「プレイボール!!」


審判のその掛け声で試合が始まる。

マウンドの日野さんが大きく振り被り足を上げる


ビッ! パァン!「ストライク!」

初球からストライクを取りに行った。

相手バッターは170後半くらいのデカイ左打者


「なーなーマネージャーさーん

相手の選手でやばいのって誰だー?」

「わぁ!!びっくりした!あんたがここで喋ってるとうちも怒られるんだけど!」

「いや監督が相手のことと自分のチームのことは結に聞けって」

「え〜。うちスコアつけてんだけど...」

「まぁまぁ、いーじゃんいーじゃん!」


少し面倒くさそうに結が話し始める


「もー...まず瀬田ボーイズは全国レベルの強豪

だけど、その中で最も警戒する選手は4人。

一番バッターの外岡さん。

3年生で足のあるアベレージタイプのバッター」


キィィン!

話しているとちょうど一番の外岡が打球を前に

飛ばしていた。しかし運悪くセカンド正面だ。

続く2番打者はセーフティを仕掛けるが

キャッチャーの多田さんのフィールディングに

阻止されていた。

日野さんは軽く舌打ちをしてた


「中軸の3番岡さん。瀬田ボーイズで一番本塁打が多い。確か30本くらい打ってると思う。

去年日野さんこの人にホームラン打たれてるのよねぇ〜」

「へー」


初球内角低めのストライクを取ると日野はワインドアップをやめてセットポジションで

球を放り始めた。


キンッ!

軽い打球音が響きサード後方に飛んでゆく。

ダッダッダ... パンッ!

それを御手洗がサード線ギリギリのところで

捕球した。


「アウト!チェンジ!」

あっけなく終わった。なんというか簡単に打たされてるような感じだ。


「?結が言うほどの打線か?これ」

「あんた、日野さんから打ったからって調子乗ってるんじゃないのー?」

「え?」


桑山ボーイズの攻撃は1番の御手洗からだ


「ピッチャーの竹富さんね。最速120kmの速球と

スライダーが武器の投手。でも...」


カァァン!!

御手洗が打球音とともに左打席から既に走り出していた。

打球は伸びに伸びて右中間を真っ二つに割った


「中継確実に〜」

「バカか!焦れ!3つだ!」


そう叫ぶ喜田に驚くセカンドだが既に遅く

御手洗が原付のようなスピードを出し

あっという間に三塁に到着した。


「御手洗くんはこの投手から今年の春3-3

それだけじゃなくても中学通算出塁率は.610

多分中学生で御手洗くん程高い水準の1番も

中々いないと思う。」


少し自慢げに話す結が続ける


「2番は山下さん。ココ最近打率は下がってきてるけどホームランがで初めて来てる。

長打の2番打者って感じ!」

「おいコラ竹富ぃ。フォアボールなんて

つまんねーことすんじゃねーぞ。」

「くっ!!」


取って食ってしまい居そうな見幕で山下が

そう言うと、竹富は怯みながらも振りかぶる。


ビッ!! ブォン!! パァン!!「ストライク!」

バットが勢いよく空を斬る。

いや空気を殴っているようなスイングだ。


「すげぇ球だぜぇ!!」


しかしそのスイングと気迫に押されてか

竹富はフォアボールで無死一二塁とピンチを

作ってしまう。


「3番の武田さんね。

この人以上に嫌な打者はうちにはいないわよ。」


ビッ!! カァァン!!

何往復もするその金属音。今何球目だ??

武田さんだけにもう9球くらいは投げ込んでいる。

嫌な打者、そういう事か。


「ボールフォア。」

「ちぇ。俺3塁まで走った意味ねーじゃん。」


御手洗がなんか言った気がした。


「よろしくお願いします。」


「4番の鎌田さんね。

打率5割近くて本塁打も34本。

この世代No.1って言われてる打者よ。」

「あぁ、まぁこの人は地元住んでて

知らねー人はいないだろーな。」


ピッチャーが振り被る

ググッと背中を半分投手の方に向ける鎌田。

ビッ カァァン! ドォォン!!

俺の時とは比べ物にならない打球が

室内練習場に突き刺さる。





鎌田さんのホームランで4点を奪った桑山は

勢いが付き連打に連打を重ねた。

しかし瀬田ボーイズエース竹富も負けじと奮闘。

試合は桑山ボーイズが6点リードしたまま

4回の守備に着く。


「4回の表、日野さん最終回ね。」

「あー次の回増田さんか。

日野さん全然打たれてないけど変わるんかなー」


スコアは6-0。打たれたのは喜田のツーベースのみ

だった。


「変わると思うよ。ノルマもクリアしたし。」

「ん??ノルマ?」

「うん。これ。」

「!!」


スコアには日野さんの投球内容が書かれていた。

全ポジションに球が飛んでいる。

相手のチームを打たせてたんだ...

まるで守備練習をしているように...

いや、打たしていたのは多田さんとも言える。


「打たれたのは喜田くんのツーベースだけ。

それ以降は打たれてないね。」

「やっぱ凄いバッテリーだな...

これが全国ベスト4のバッテリー!」

「ふふっ」


結が少し笑う。


「一輝。キャッチボール」

「ん?あぁ。了解。」


焦斗が声をかけてきた。

6回から投げるんだ。この位から肩を作って

おいた方がいいだろう。

ブルペンに向かう途中焦斗と話す。


「日野さんってまじすごいな。

制球ビシビシじゃん」

「打たして取るの擬人化みたいな人だからな。」

「多田さんも凄いな!ミット動かない捕球に

あの送球の正確さ!」

「ふっ...負けんなよ?」


焦斗が少しニヤリとして俺に言う。

俺は「お前もな!」と言いブルペンに向かった。


2番手の増田さんは少し制球に難があり出だしは

悪かったがその後立ち上がり無失点に抑える。

そして5回の裏、同級生の島崎がブルペンに

走ってきた。


「星、6番の多田さんの代打だ。」

「え!まじ?行くわー!焦斗!ラスト!」


ベンチに戻ると鎌田さんが打席に入っていた。

今日はホームラン1本ツーベース2本の大活躍。

だがその打席ではグリップを左手。

芯を右手で持ちバントの構えをしていた。


「練習試合で4番がバント...?」

「よくやることだよ。

あの人全国でも2回犠牲してるし。」

「えっ、あっそうなんだ。」


島崎が丁寧に説明してくれた。

何となく嫌われてると思ってたけど普通に話してくれるんだ...


「?なに??」

「いやっ、別になんでもない。」

「早くバット振っておけよ。

ポップフライとかやめてくれよ」

「お、おう!」


コンッ

上手くは無いけど塁を進めるには十分なバントをした鎌田さん。


5番の柴田さんが打席に入る。

俺はネクストでブリブリバットを振っていた。


キィィン!!

レフトへの痛烈な当たり。打球が速いが

2塁ランナーの山下さんは帰ってこれそうだ。


パシッ ビッ!!

「ストーーーーーップ!!」

3塁コーチャーが止める。


レフトの喜田の送球だった。凄いボールだ。

てかあいつ春は背番号5番なのに今レフトなんだ。


レフトから鋭い送球をした喜田だったが

その顔は誇らしげでもなく

むしろ怒りに満ちてるような顔だった。


(ざけやがって!俺らを守備練習代わりみてぇに...

俺らはこんな練習台になるチームじゃねぇ!!)


「代打星です。」


高島コーチが審判に声をかける。

「ヨシっ!いくぞう!」俺は自分を鼓舞する。


ネクストサークルの砂を少量バッテにつけ擦り

バッターボックスに入る。

1番後ろからバット1個分。そこを自分の足に

慣らすように少しだけ掘る。

左手でバットを持ちホームベース外側内側が

届くか確認をする。いつもの距離感だ。

身体の前で2.3回ほど手首でバットを回す。


いつも通り。いつもやってる事をやるだけ。


ピッチャーが振り被る。初回よりだいぶ足が上がっていない。ずっと投げてる疲れだ。

変わったばっかの打者には様子見でボール球が

来る。それがセオリー。


ビッ! バシッ!

やや外に外れたスライダー。

ビッ!パァン!

次は入れてきた。内のまっすぐだ。

やはり球威はかなり落ちてる

ビッ!!

次は外のスライダー。

俺は躊躇うことなく踏み込みバットを振る


カァァン!!


ライナーで飛んで行ったボールは

ライトポールギリギリを逸れた。

あと数センチ内側ならホームランだったのに...

一瞬、球場がザワついたがファールだ。


(今のはブラフだろう。来い。来いや星!!

お前なら犠牲フライくらい打てんだろ!

学童全国の時もそうだった!

大振りしてやったのは...)


その時、喜田は思い出す。

学童全国大会での出来事を。


(そうだった。あいつはこういう

シチュエーションだったら必ず...!!

「一球外せぇ!!!」


ビッ!!


喜田が叫んだ時には遅く、既にボールは一輝に向かい投げられていた。

そして一輝はグリップに左手、右手はバットの芯を握っていた。そう、バントの構えだ。


コォォォン!

鈍い音が響く。


ボールはマウンドから降りていたピッチャーの頭の真上を大きく超えた。


ダンッ!と大きく跳ねたボールを見ると

3塁ランナーは楽々生還。

前進守備をしていたショートは取る体制を

崩したが持ち直し一塁へ送球。


ズザァーー

頭から行った一輝も一塁でセーフだった。


9-0 星一輝、中学初打席、初安打初打点を記録




ご視聴ありがとうございました。

次回初試合最終です。

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