春の全国大会予選
3月上旬。府中関東村球場
パァァン!
「ストライクバッターアウト! チェンジ!」
春の全国大会西東京市部予選。
1回戦桑山ボーイズVS狛側ボーイズ
3回の表の守備をランナー出さず切り抜いた
桑山ボーイズは7-0とコールドの勢いで裏の攻撃に
入ろうとしていた。
3回の裏、先頭の9番新沼が安打を放ち、1番打者の御手洗がランニングホームランで9-0。
あと一点取り4回の表を凌げばコールド成立だ。
「どんどん変化の制度増してきたな焦斗」
「あぁ。このチームにはもう変化もそんなに投げなくて平気そうだな。」
「結〜今何球??」
「今36球〜。いいペースだね!」
「OK。この回3点とって次の回で〆るぞ!」
「決めてこいよ一輝」
「おう!」
カァァン!! ドンッ!
一輝が打席に入り初球、振り抜いたバットがレフトネットを超え、2塁ランナーの摩耶と帰り
11点目の場外ツーランホームランとなった。
パァァン!「ストライクバッターアウト! 整列!!」
桑山ボーイズは1回戦を11-0と圧勝に終わり
ダブルヘッダーの今日、2試合目に挑む。
2回戦は東大和ボーイズ。
1回戦先発した焦斗はもちろん、キャッチャーの一輝もベンチで控えていた。
長期戦が予想される今大会、今どきキャッチャーの併用も珍しくはない。
代わりにマスクを被った新3年生の戸山は白田、神崎、
そして焦斗に弟子入りしたという新2年小川をしっかりとリードした。
この試合も8-1と5回コールドで勝ち切り
桑山ボーイズは3回戦へと駒を進めたのだった。
試合終了後にミーティング、解散となり
各自帰路に着く。
一輝、焦斗、結がいつも通り帰っていると
「天野さん!」と、焦斗を呼ぶ声が後ろから聞こえる。
振り返ると今日2試合目を投げた新2年の小川と摩耶が
後ろにいた。
「「お疲れ様です!」」
「おー!摩耶!小川!おつかれー...どした?」
「あの...天野さんに2試合目の自分のピッチングを評価して欲しくて...良いでしょうか!」
どうやら焦斗にアドバイスを貰おうと声を掛けてきた
らしい。
焦斗も「いいよ」と返事をして2人だけで話していた。
座り込んでミッチリ今日の反省会をし始めたので
俺と結、それに摩耶もそこで待つことにした。
「小川はちゃんとしてるなー。先輩にアドバイス貰いに来るとか。」
「ねー。ていうか焦斗がちゃんと面倒見てるのが意外」
「確かに」
そう俺と結が話していると、ふくれっ面で摩耶が割って入る
「一輝君もなんか俺にアドバイスくれないかなー!」
「なんだよ摩耶〜。レギュラーで出てるお前に言うことなんて特にねーよー」
「いっぱいあるでしょー!試合出てるって言っても
俺まだ2本くらいしかホームラン打ってないし...」
「2本でも上出来だろ〜。去年の俺はまだ今の時期
ホームラン打ってねーぞー」
「一輝君去年の今頃まだ入団してないじゃん...
今何本くらいなの??」
「ん?27本。あ、今日の入れたら29か」
「1年弱で29?!自慢かよ!」
「へへっ」
ホームラン自慢、野球やってたら誰もがする
くだらない自慢だ。
俺と摩耶が話しているのを結は目を細め呆れた顔で見ていた。
翌週、3回戦青梅スタジアム
カァァン!!っと快音が鳴り響く球場。
ドンッっとバックスクリーンに放り込まれる1発。
(よし、これで30本目...)
俺は心の中でそう思いベースを一周する。
「あいつやばいわ...先週から3打席連続かよ...」
「くっそー...あいつばっか目立ちやがって〜!」
仲間の熱い視線を受けながら悠々とダイヤモンドを1周。
3回戦も勝利し来週の決勝戦に駒を進めた。
試合後、色んな高校かのスカウトの話が来たと監督から
知らされたけど、こっちは数えんのも覚えんのも
もうやめた。
「しゃ!じゃー帰ろうぜ結!焦斗!」
「ちょっと待って!これ重いから!」
「頑張れよ〜」
「そこは持とうか?でしょ!!」
俺と結がそんな会話をしていると
「相変わらず元気だね」と声を掛けてきた一人の男。
「ん?あぁ!長房!長房じゃん!」
そこに居たのは中附ボーイズエース長房泰斗。
去年の夏俺らと接戦をした男だ。
「この後試合か?!どことやんの!」
「多摩大?ボーイズってとこ」
「知らないボーイズだな...結?」
「うん。多摩大ボーイズ...去年の春も夏も秋も
2回戦まで行くのがやっとってチーム...らしいけど」
「かんけーないね。勝つのは僕らだよ。去年の夏の分はきっちり返させて貰うから」
「へへっ!何度やっても勝つのは俺らだぜ!」
長房はニコッと微笑みその場を去っていく。
「長房くん、変わったね」
「あぁ。いい顔だな」
俺らは帰るのをやめて試合を見ていく事にした。
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