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ダイヤモンドスター  作者: オカピ
中学正編
52/71

青い空

「渉ー!打たせてこいよ!」

「ビビって逃げんなよ!!」

首里ナインが投手の新垣渉に声援を送る。


「星ー!手元で動くぞ!」

「いつも通り行ったれ!!」

桑山ベンチも負けずと声を出す。


2チームのキャプテンとエースの1打席目

試合を決めるとまで言わないが勝者がこれからの試合の流れを作る。


「いっくぜ!!」

新垣がそう言いグッと振りかぶる。

一輝もそれを見て腰を低く構える。


ダンッ! 勢いよく踏み出した前足、その近くを腕が通過する。


「おらぁ!!」

ビッ!!

140km投げたような声でボールを投げる。


タンッ! 「ストライク!!」


「しゃぁ!」

そして空振り三振を決めたように一球一球声を荒らげる。


外いっぱいのコース、一輝は「フゥー」っと口元に

手を持ってきて深く息を吐く。


(まじに遅いな。でもやっぱ出処見えないしタイミングも取りずらい。いいピッチャーだなほんと。

勝ち上がってきたチームのエースなだけはある。

うるさいけど)


続く2球目、100km届いているかも分からないカーブが

外いっぱいに外れる。


「あれは嫌なボールだな」

ベンチの焦斗が呟き、それに振り返り結が聞く。


「緩急のこと?確かに20kmも差があれば遅いストレートでも打てないよね。」

「それだけじゃねぇ。左のアンダースローってのは見た事ねぇけど、腕の振りが全く同じだ。

それであの制球力。球速は違えど天王の泉に近い投球だ」

「う、うん...」


少し不安がる結、グラウンドに目を向けると新垣が

3球目を放ろうとしていた。


「だぁ!!」 ビッ!


2球続けて外のカーブ。

カァァン!!

「しまっ!!」


ボールを身体の内側に呼び込みながら足で堪えていた

一輝の身体が一気に開放される。


「ライトォー!!!」

キャッチャーの中曽根が叫ぶも打球がぐんぐん伸びていく。


ガシャァン!! 「ファールボール!!」


ライトフェンス真横フェンスにボールがぶつかった。

一輝は苦い顔をしながらもボックスへ戻っていく。


「危ねぇ〜!今のはまじで危ねぇ!」

「渉!少し内に入っただけだ!切り替えろ!」

「お、おぉ!」


ショートの比嘉が声をかける。

4球目、5球目の変化球も上手く捌くも全て

ラインの外側に逃げてしまう一輝。


「すいません、タイムお願いします。靴紐が」


5球目のファールを打った後、一輝がタイムを申し出る。


(くそっ!仕留めきれねぇ!球が遅せぇから色々考えちまう...集中力も散漫になってるな...)


靴紐を結び直し再び打席へ立つ。


「一輝が1打席目からペース乱されてる?」

「あぁ。打席で色んなこと想定できるのが一輝の強みだけど、逆に長引くとそれだけ集中力も切れるからな。」


結と焦斗が一輝の異変に気づいていた。


「プレイ!」

審判の再会の合図で再び新垣が構える。


「これで...終われぇ!!」

ビッ!!

「!」


放ったボールは真っ直ぐ一輝に向かってくる。


「あぶねっ!」

タンッ!


身体を捻りボールを避ける。


(ふぅ。これで2-2...)

「ストライク!バッターアウト!!チェンジ!」

「な?!」


ストライクバッターアウト。

一輝には信じられなかった。身体に向かってきた

クロスファイア。球速は完全にストレートだった。

ベンチに戻りヘルメットを脱ぐ。


「最後はなんだ??」

監督の朝日陽一が尋ねる


「...分かりません。確実にストレートだと思いました。ただ、まっすぐとほぼ同じ球速で変化するボールがあるとしたら、多分…ツーシーム?ですかね。」


一輝の言葉に一同がザワつく。


「アンダースローにツーシームなんてあんのか?」

「星が仰け反るレベルの変化量って事なのかよ」


各々が考える中、パンッ!っと手を叩きながら監督が声を上げる。


「今相手の一球に考えている時間はないぞ

初回白田が作ってくれた流れを無駄にするな!

しっかり守ってから、考えるぞ!」

「「はいっ!!」」



2回、3回、4回と両投手ランナーを背負うも無失点が続いた試合展開だった。そして5回の裏桑山ボーイズの攻撃は1アウトランナーなしで1番御手洗に戻る。


ビッ!! タンッ!「ボールフォア!!」

「くそっ!!」


全身を満遍なく使うアンダースローというのもあってか

新垣の制球が乱れていく。


続く2番に入るのは1年の摩耶

新垣が御手洗を意識し牽制を何度も繰り返す。


ビッ! タンッ! 「ストライク!」

牽制の甲斐があってか初球スタートを切らない御手洗。

それでもしつこく牽制を続ける新垣。


(今、新垣さんは御手洗さんに意識が行ってる...

叩くなら...)

そう思いサインを確認する。


朝日監督がサインを出し、摩耶は帽子の鍔を触る


スッ...ビッ!!

ダンッ! 新垣が投球したのを見てから御手洗が駆け出す。

「スチール!!」

「スタート遅れた!刺せるぞ中曽根!!」


カッ!! バットがボールを捉える。

「なにっ?!」

キィィン!!


打った打球は一二塁間を抜ける。


ダッダッダ!! ダンッ!

スタートを切っていた御手洗が2塁ベースを力強く踏む


「ば、バックホーム!!」

ビッ!! ライトの大城が捕球しすぐ様投げ返す。

タンッ!


「ちっ!帰れなかったか。」

3塁ベース上で悔しそうに舌打ちをする御手洗。


1アウトランナー1.3塁。迎える打者は3番星一輝。

首里ボーイズに緊張が走る。

首里ボーイズ監督がタイムを取りマウンドに選手が集まる。


「ピンチだけど、相手が星でもここは勝負すべきだ。

4番の島崎はこの大会2本ホームラン打ってるし、簡単には行けないだろ。」

「あぁ。強い打球は身体で止めてやる!渉!思いっきり投げろよ!」


チームメイトが話している時、新垣は空を見上げていた。


「何してんだアホ」

そう言いながら比嘉が新垣のケツを蹴飛ばす。


「いって!え?あぁ。いや、地元の空もこっちみたいに真っ青に晴れてんのかなーって」

「は?」

「沖縄からこっち来て、空見る度に思い出すんだよな

俺でもこんなに強い奴らと戦えてるんだって...」

「渉...」


空を見上げ微笑む新垣に比嘉が話す。


「何度挫折しても、馬鹿にされてもここまでやってきたのはお前だ。星を抑えろ。そんで皆で優勝旗持って帰んぞ。」


そう言い一人スタスタショートに帰っていく。


「あいつ、たまにああいうこと言うよな!」

「詩人だからな。」

「…でも、その通りだよ。渉!お前が作り上げたチームだ!打たれても誰も何も言わねぇよ!」

「そうだ!思っきし投げろ!ぜってぇ止めてやるからな!」


チームメイトの言葉に新垣は少しボーッとしていたが

すぐに笑顔になり親指を立てて返す


「おう!!後ろは任せた!!」

「しゃあ!!締まっていくぞ!!」

「「しゃぁ!!」」


タイムを終え、各々が守備位置へ戻る。

ロジンをポンポンっと手に着け、真剣な眼差しで

一輝を見る新垣。


「そんな遅いたまじゃ誰もアウトにできない」

「野球をやるセンスがない」

「比嘉の金魚の糞」


(いつだってそうやってバカにされてきた。)


グッっと構える。


(球が遅いから遅くても打ち取れる投げ方に変えた)


タンッ! 「ストライク!!」


「いいぞ渉!!」

「打たせてこい!!」


ビッ!!

(負け投手になりそうな時、助けてくれたみんなに報いる為に...)


カァァン!! 「ファールボール!!」


「星ー!かましてやれぇ!!」


ビッ!!

タンッ! 「ボール!!」


「いいコースだ!!」

「ロー攻めてけ!!渉!!」


グッ...

(このボールに全部乗っけて、ミットに放り込む!!)


ビッ!!


新垣が放ったボールは一輝の身体に向かっていった。

しかし、一輝はここから変化するのを読んでいてか、

バットを思い切り振り抜く。


クンッ!! 「いけぇ!!」


ブンッ!!! タンッ!!!


先程まで声が響いていた球場が静まり返る。

そして新垣が一番に声を上げる。


「しゃぁぁぁあ!!!」


「ストライク!バッターアウト!!」


「うぉー!!!!」

「ナイスボール渉!!!」


続いて審判、そしてバックを守っていたチームメイトが

叫ぶ。

それはまるで優勝を決めたチームの様な盛り上がり方だった。


「くっ...」

一輝はその場で空を見上げた。


「くそっ...空青いな...」



桑山ボーイズVS首里ボーイズ

5回2アウト1.3塁。

首里ボーイズエース新垣が吠える。

ご視聴ありがとうございました!

間が空いてしまい申し訳ございません!!

次回もお楽しみに!

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