シーソーゲーム
「今頃桑山と舞鶴は終盤かな〜?」
「そうだな〜。普通に考えれば桑山だろうな」
「わざわざ大阪から来たのに、2回戦で負けるとはな...」「おーいそれ言うなよ〜。」
揺れるバスの中、他の選手達がガヤガヤと話している。
「大吾、バス酔い大丈夫か?」
「おぉ。へいきへいき、てか優心もバス弱いやろ」
「まぁな...桑山の事、気になってるん?」
「そりゃな。まぁ桑山もだけど、やっぱ鷹宮の事も...」
「...あんな奴に負けたの悔しかったわ。俺が最後まで投げられてれば...」
「いや、俺も鷹宮の事気にしすぎて集中しきれてなかった...だから最後も打てんかった...
ってもうええねん。この借りは春夏で返せば。」
「せやな。俺寝るから。ゲロ吐くなよ!」
「お前もな!!」
(...気ぃつけろよ一輝、鷹宮は普通やない。打席に入った時の集中力、勝ちへの執念、全てが異常やった。)
ビッ!! カァァン! 「ファール!!」
場所は移り桑山ボーイズVS舞鶴ボーイズ。
1アウトランナー1塁で鷹宮の3打席目。
2ストライク1ボール。変化をひたすらカットし球数を稼ぐ鷹宮。
(変化全部カットしてるな...やっぱ真っ直ぐ狙いか??)
前の打席で真っ直ぐをツーベースにされたのもあり
一輝は鷹宮には一切真っ直ぐを投げさせない。
かと言って変化も全てカットされている。
(残る変化はずっと見せてないフォーク...でもこの場面ですっぽ抜けとか怖い。どうするか...)
一輝が思い悩みながらもサインを出す。
手元で食い込むカットボール。焦斗が頷きセットポジションに入る。
ビッ!! タァンッ!!インコースのベーススレスレ、
鷹宮が見逃す。 「ボール!!」
「オッケーオッケー!良いコースだぞ!」
そう言いながらボールを返す。
鷹宮が帽子の鍔を触り、左肩→胸へと手を移動させる。
一塁ランナーの木元も鍔を触る。
一輝は違和感を感じ、焦斗にサインを出す。
ビッ! パァァン!! 「セーフ!!」
2回ほど牽制を入れさせるも、木元は難なく戻る。
(盗塁のサインじゃ無い??こっちへの揺さぶりか??
なら変化で勝負させて貰おう。外へもう一度カットだ。)
そう思いサインを出すが、焦斗が首を振る。
(!!...じゃぁ外へスライダー...)これも首を振る。
(一輝、ここは勝負だ。あの小さいリードで走られても一輝なら刺せる...なら速い球で空振り取った方がいい。)
(...)
一輝が少し考える。
(分かった。ここは任せるぞ。インローにズバッと投げ込んでこい!!)
焦斗がコクリと頷き構える。
(長かったな。揺さぶり効いたか??)
鷹宮も考える。
スッ...ボッ!! ダッ!! すると一塁ランナーの木元が駆け出す。「スチーール!!」
完全に投げ終えてからのスタートだった。
(あの遅さなら一輝じゃ余裕!空振ってゲッツーだ!!)インローに完璧に真っ直ぐが走る。
カッ!! だが鷹宮がそのボールを綺麗に拾う。
「ハナから変化なんて待ってないねん。」
キィーーーン!! 打球がライトポール目掛けて飛び込んでいく。
「マジか!」
「ウッソだろ?!」
カシャァン!! 矢のようなボールがライトフェンスギリギリに突き刺さる。
「バックホーム!!」 「クソっ!!」
強い打球とは裏腹に金網のフェンスに当たった為打球が死ぬ。ライトの島崎がすぐさま駆け寄り中継へ投げる。
一塁ランナーの木元はスタートを遅らせていたとはいえ
スタートを切っていたので既に3塁ベースを踏んでいた。
「あのサインは動揺を誘う為のもんや無い、投げたらスタートのサインや。」
「セカン3つ!!」
中継へ渡っていたが、もう既に木元はホームイン。
バッターランナーの鷹宮は楽々3塁へ。
打った鷹宮は得意げな顔をしていた。
(クソっ!完全に次の一手を読まれてた...!タイムとって話し合うべきだった...俺のミスだ!)
「すまん!焦...」
「気にすんな!切り替えていこう!次の二人で切ろう!」
被せてくるかのように焦斗が言う。
(...なんか釈然としねぇ!俺が悪いんだけど!!
開き直ってんの少しうぜぇな!)
そう愚痴を心の中で零すも、「ふふっ」っと笑い
腰を下ろす。
(スクイズ、気をつけろよ。)ファースト、サードに身振り手振りしながら構える一輝。
ボッ!! パァァン!! 「ストライク!!」
走ってこない。動く感じも無く、バッターの白鳥も打ちに行く感じだ。
ビッ! カァン! 「ファール!!」
2球で追い込み有利に立つ。
1球ボールを外し様子を見る。しかし動く気配はやはり無い。
(ツーストライクからもスクイズとかしてきそうなチームだ。最後は「コレ」だ!)
焦斗も頷き足を上げる。
ダッ!! 一輝の予想通り、鷹宮が駆け出す。
ビッ!! 「?!」 白鳥がボールに合わせバントをしたが、ボールが急に沈む。胸元から膝へ落ちるフォークボール。 タンッ!!! ズシャァ!っと白鳥も倒れる。
鷹宮はその場に立ち尽くし、その顔に笑みが消えていた。
ボールを持った一輝が鷹宮へ近ずく。
「そんな隠し球持ってたのか。俺には使うまでも無かったか??」
「俺の判断ミスだ。これ使っとけば、お前も三振だったのにな。」
そう言い一輝が鷹宮にポンッ。っとタッチする。
「アウト!チェンジ!!」
「しゃぁ!天野ナイピー!」
「同点だ同点!こっから取っていこうぜ!!」
ベンチに座り「フー」っと一輝がため息をつく。
「ハイ!」っと結が水を渡してくる。
「さんきゅー。」
「すごい汗。10月なのに!はいタオル。」
「おー。流石にヒヤヒヤしたわ。」
「鷹宮くん凄いね。完全に読まれてた!」
「う、うるせぇ!ちょっとテンパっただけだよ!俺も焦斗も!...でも確かにヤバいな。焦斗も言ってたけど、大吾とは別のベクトルであいつはすげぇ。」
「一輝笑ってる!」
「笑ってねぇ!」
「ふふっ...でも、勝つでしょ??」
その言葉に、一輝は微笑み立ち上がる。
「あったりまえだろ!!さぁ!6番!!は焦斗か!
球速いだけじゃないって見てやれよ!!」
打席に向かいながら焦斗は (うるさい)と思っていた。
「プレイ!!!」
審判の声が響く。
ご視聴ありがとうございました!
次回もお楽しみに!!!




