最強世代
パァァン!!
「ボールバック!!」
天王ボーイズのキャッチャー兼キャプテンの
雨谷の声でボールがバックされる。
1番は御手洗だ。予選大会では出塁率4割を超えた好打者。ハイアベレージを残している。
「速さはあまり感じないが、ベンチから見てても分かる変化のキレ具合だな。」
「捕手もいい。あのキャッチングじゃ審判もストライクコールしたくなる。」
「最強チームとか言われてるだけあるな。」
ベンチで3年生が話していると、審判がコールを告げる。
「プレイ!!」
試合開始だ。
(さーてと...どう打ってくかなぁ...)
スッ...ビッ! パァァン!! 「ストライク!」
(うっ...!!打席の外から見る時と全然違ぇ。
力感のないゆらっとしたフォームから球が伸びてきやがる...長房が豪快な剛腕投手だとしたら、この泉は
技巧派であり本格派...こりゃ大変だわ)
パァァン!! 「くっ...!」 「ストライク!!」
あっという間に追い込まれる御手洗。
打ち方を変え少しバットを短く持つ。
(冗談じゃねぇ...3球ストレート三振とかやめてくれよ...)
ビッ!
(てかこいつ...)
パァァン!! 「ストライクバッターアウト!」
(テンポが鬼速えぇ!!)
三振を喫した御手洗は、戻り際、山下に声をかける。
「真っ直ぐ3球、テンポ速め、ネクストより速く感じます。」
「おっけぃぃ!!」
「頼んます...」
スッ...パァァァン!! 「ストライク!!」
(うぉっ...こりゃ確かに速えぇわ。日野と球速は
変わりねーのに...ただ、俺に真っ直ぐ4球も見せていいのかよ?!)
スッ...ビッ!! 「らぁぁ!!!」 キィーーーン!!
「ファールボール!!」
「惜しい!芯は食ってるぞ!」
(さぁ次はどうする?!変化来いよ...変化ぁ!)
スッ...ビッ! 「?!」
(浮き球...行ける!いや...身体に当たる!!)
泉が投げた球は110km後半程の球が山下の左肩目掛けて飛んでくる...と思った瞬間、「ドロッ」と軌道を変え、膝元いっぱいに決まる。
「ストライクバッターアウト!!」
(え、えぐい...なんだそのカーブ?!)
山下は悔しい筈が、何故かニヤケてしまった。
「おい、いっき!変化来たぞ!気をつけろ!」
「...」
「?おい!いっき!」
「え?!はい!」
「大丈夫かよあいつ?!」
トントン...っとベースの角を叩く。
(大丈夫だ。集中している。気は散ってない。
打つ...勝つ...少しでも焦斗を援護する!)
スッ...ビッ!! パァァァン!
先程の2人より若干力が入ったストレートが胸元インハイに刺さる。
「ストライク!!」
スッ...ビッ!! ドロンッ... 「くっ...!!」
パァァァン! 「ストライクツー!」
(カーブが来た。想定通り。この捕手とは波長が合う。次は俺なら外に逃げるカーブだ。)
スッ...ビッ!! ドロンッ... 「来た!!逆方向に...」
そう思った瞬間。天王ボーイズのファーストが藤なのが頭をよぎる。
「っ!!」 パァァァン! 「ストライクバッターアウト!チェンジ!!」
出塁率3割超が並ぶ桑山ボーイズの上位打線を
三者三振に抑え、泉はいつもの如く、喜びもせず
マウンドを後にする。
「くそっ...」
「どんまいどんまい一輝!ほら!防具着けるの手伝うから!」
結衣がそう言って励ます。
パァァァン!!
「フゥー....」
焦斗の投球練習中、天王ボーイズの3年生達が話していた。
「しっかし藤といい、泉といい、あの星って奴といい、お前らの世代はとんでもないなぁ!」
「そうっすか?普通ですよ」
「普通ちゃうわ!!お前もっとマウンドではしゃげ!喜べ!犬みたいにな!」
「ぶっちゃけ行かれる思いましたよ。余程大吾の事意識してんやろか。」
「「...」」
「まぁなんや...お前らよぉ分からんけどシッカリ頼むで。ほんまお前ら居らんかったら負けてしまうわ。」
「いや援護してくださいよ。」
「プレイ!!」
(競うわけでは無いけど...泉が力で押してきたんだ。
お前も我を出して良いからな。思いっきし来い!)
コクッ と焦斗が頷き、足を上げる。
グッ...ボッ!!! パァァァン!!!
「す、ストライク!!」
審判がたじたじする程の快音は球場の空気を変えた。
139km。とてもでは無いが、中学生が投げるボールでは無い。
(は、はぇー!こんなん無理やん。プロかて)
パァァァン!!
連続の空振り三振に切って捨てると、
次は3番投手の泉だ。
ボッ!!! カァァーーン!!
初球をバックネットに当たるファールボールにする泉。
ボッ!!! キィィィーーン!
続く2球目はライトフェンスに当たるもこれまたファールボール。
2年生の怪物同士が目を光らせ睨み合う。
(今日の一輝は...もしかしたらダメかもしれない。)
(今日の大吾は、いつもと違う。)
(なら俺が...)
(俺が...)
((流れ持ってきてやんねーと!!))
パァァァァン!!!
「くっ!!」
「ストライクバッターアウト! チェンジ!」
2人の怪物が三者連続三振で試合が始まった。
ベンチに戻った一輝は座って昔のことを思い出す。
親父が死んだ小6の秋...あと少しで中学生という時だ。俺は自宅に引きこもっていた...
ご視聴ありがとうございました!
次回も明日更新予定です!
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