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ダイヤモンドスター  作者: オカピ
第2章:中学2年夏の選手権大会編
21/96

ココロの強さ

試合前、球場に1番早く到着し早々にアップをしている人影がいた。


「おぉ。日野か、早いな」

「...鎌田か。お前こそな」

先に到着しアップを始めていたのは

桑山ボーイズのエース日野陸。

主将の鎌田賢は2番目に到着した。


「試合をするのが待ちきれんくてなぁ。

お前もそうなんだろう??」

「まぁ...な。」

「リベンジしたいと思っているのは

日野おまえだけじゃないぞ。みんなだ」

「あ?何がだ」

「全国さ。全国常連と言われたチームだが、

3期生が全国ベスト4になってからというもの、

桑山うちは一度もベスト4以上に入ったことは無い」


鎌田は少し寂しそうにそう話す


「フン!まぁキャプテンのお前はそうやって

気負うだろぉな。」

「お前もだろう?日野。」

「...」


日野は数年前の自分を思い出す。


〜2年前〜


小学生から野球を始めて県大会ベスト8まで行った

俺は、意気揚々と地元の強豪、桑山に入った。

だけどここに入って良かったなんて思ったことは

1度たりともねぇ。

小学生の時は身長が多少小さくてもそこまでの

ハンデにならなかった。

バッティングもピッチングも。

入団した時、俺は下から数えた方が早いくらい

身長が足りなかった。

それでも負けじと走って投げて走って投げての

反復練習を繰り返してきた。


「お前はチビだから130kmなんて夢のまた夢。

投げられる訳がねぇだろう!」

ある日先輩に言われた一言。


先輩のなんてことの無い一言が俺の心をキュッとした。

1年の時はおろか2年の夏もベンチに入れず

両親に申し訳ないと思う気持ちと自分への怒りでどうにかなりそうだった。

豪速球を投げたい、空振り三振を取りたい。

それが俺の目標で信念だった。


「陸は小さくてもすごい投手だよ」

「日野!お前のスライダーはキレキレだなぁ!

これに真っ直ぐを混ぜられたら簡単に打てん!」

翔真や鎌田の気遣いなのか本心なのか分からないでも俺をここまで押し上げてくれたのは

チームメイトがあいつらだったからだろう。





薄暗い球場。まだ静かな朝だ。

目を開け日野が鎌田に告げる

「...鎌田ァ」

「ん?」

「行こうぜ。全国...」

「おぉ!もちろんだ!」



試合開始から30分後。

キィーーーーン!!

一瞬の静寂が嘘のように球場全体が

歓喜の声を上げる。

その打球を放ったのは、中附ボーイズ2年生エース

長房泰斗。バットをポイッと放り一塁へ向かう


「長房ー!!!ナイスバッティングー!!!」

「3ランホームランー!!!!」


盛り上がる中附ベンチ。

「はぁはぁはぁ...」

「陸!!」

息を切らす日野に多田が駆け寄ろうとしたが

マウンドで日野が多田にジェスチャーを送る

「大丈夫だ。来るな。持ち直す。」


まだ2回、うちの打線なら取り返せる。

ここでエースがへこたれるのが1番最悪だ。

ここを凌いだらみんなが...



「ストライクバッターアウト!!」

無慈悲にも審判が手を上げコールする。


「か、鎌田さんも三球三振...」

「あいつ...本当に2年生なのかよ...」


続く打者も三球三振、その次も。

初回もそうだ。

長房は涼しい顔でマウンドを降りていく。


まだ2回...いや...これから3回か。

3回...あと4イニングしか攻撃がない。

3点とる?あいつから?どうやって?


日野は頭の中でマイナス思考を止めることが

できなかった。


グラブを持ち、マウンドに向かう。

すると長房が待ち構えていた。


なんだこいつ...

マウンド降りたのにまた戻ってきたのか??


「つまんない。」

ぽつりと長房が呟く。

「は?」

俺は思わず口にする。


「全国常連とか言われてたから

楽しみにしてたのに。

結局僕が去年いなかっただけで全員大したことないんじゃん。」

「て、てめぇ...」

今にも殴り掛かりそうな日野は右手をぐっと

握りしめる


「まぁエースがこんなおチビさんなら当然だよね早く帰ってゲームしたいからあんまり粘ろうとしないでね。」

「...」


何も言い返せなかった...

才能って言葉が大嫌いだ。

天才って言葉が耳障りだ。

そんな奴らに負けないで努力する

自分に酔っていたのも大嫌いだ...


「ボールスリー!!」

3回の守備。日野の制球が荒れ始める

日野は空を仰ぎ、ある2文字が頭によぎる


負けんのか...俺らは...

崩れて行く...俺の3年間...1人の奴に...


「ピッチャーーー!!!ビビってんのかー!!」


悲観的になっていた日野に大きな声がレフトから聞こえてきた。

バッと顔を向ける日野


天才は嫌いだ。同じ努力量なのに俺より数歩...

数十歩前を歩いていきやがる...

誰かが何かを叫んでる。俺はレフトへ顔を向けるとそこには俺の嫌いな天才がいた。


「ホームラン打たれたからってなんですかー?!

ホームランなら俺だって日野さんから

打ったことありますよー!!」


「一輝??」

ベンチにいる結がキョトンとした顔で一輝を見る


「いっきの奴...ハハッ!そうだレフト!

言ってやれ!」

続いて鎌田が可笑しそうにそう続く。


「あんなデカブツに打たれたからって

なんなんだ!俺だってできますよ!!

だから早くこの回切り上げて俺の打席に回してください!!」

「...デカブツー?」

一輝の声に長房が眉をぴくつかせる


「そうだぜピッチャー!!何へこたれてんだ!」

「まだ序盤ですよ序盤!

俺ら打線のこと信じてくださいよ!!」

山下と御手洗も続いて野次を飛ばす。


「摩耶!早いけどプルペン付き合ってくれ!」「え?あ、は、はい!」

焦斗がベンチ内で声を上げる。


「ピッチャーへこたれてんなよ!

身体のデカさは心でカバーするんだろ!!」

日野は再び呼ばれた方に顔を向ける

「岸山...」

向けた方向...スタンドではベンチ入りを果たせなかった3年生、岸山も大きな声をメガホン越しに出す。


「ちょっとレフトの子!

相手を煽るような発言は控えて!」

「はい!!すいませんでした!!」

一輝が審判に注意される。


「フフ...」

日野が少し微笑みセットポジションに入る。


そうだな。そうだったな。

技量は努力で、タッパの差はココロの強さで...

カバーしていくんだったな。


ミチチッ...リリースの瞬間、そう音を立てる

日野の指先。


パァァン!! 「ストライク!」


「そうだ!それだ日野!お前のピッチングは攻撃のピッチングだ!!」

持ち直した日野に嬉しそうに声をかける鎌田。


パァァン!! 「ストライク!!」

パァァン!! 「ストライクバッターアウト!」


俺は桑山ボーイズエース...日野陸だ!


吠えた日野。そして後ろの電光掲示板の球速は134kmを計測していた。


ご視聴ありがとうございました!

明日も投稿予定です!

感想お待ちしております!

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