表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダイヤモンドスター  作者: オカピ
中学2年生編
14/43

合宿⑤

AM9:30

「集合!!!」

主審の掛け声で両チームが整列する。

「「よろしくお願いします!!!」」


チームは後攻で守りからだ。

「プレイ!!!」


初球、日野さんの真っ直ぐがいきなり俺のポジションのライトに飛んできた。やや右中間気味だ。

腰を下ろし、足を付き、丁寧に取る。

セカンドに返そうとした時、

「ふたーーーつ!!!」

多田さんの大きい声が聞こえた。

慌てて顔を上げると、一塁を蹴って二塁に向かうランナー。

(やばい!!)そう思い、身体を起こし、二塁に投げる。送球は逸れたがレフトの山下さんがカバーしてくれた。

(あ、焦りすぎた...やばいかも...)

そう思う俺とは裏腹に、センターの香山さんは

「丁寧に行こう。」と声をかけてくれた。

日野さんも指を1つ刺し「ワンアウトだ!4つ帰るぞ!」と、声をかけてきた。


なんだ?外野手は小学生の時やってたし、

中学に入ってからも外野ノックも何度か受けたのにぎこちない。


後続を打ち取り攻撃に入る。

御手洗が当然のように出塁し盗塁を決める。

山下さんがエンドランですぐに得点圏に持って行った。だがそんな仲間のプレーも素直に喜べずにいると、焦斗が声をかけてくる。


「一輝、どうした?なんか考え事か?」

「ん?あぁ。なんでもない。ごめんごめん。」

そう言い俺は声を出す。


この回は4番の鎌田さんの犠牲フライで一点を取るも、続く5番の柴田(2年生)が続かず終わる。

ベンチからグラウンドに足を踏み入れた時、さっきのプレーがフラッシュバックする。

一塁ベンチからライトへの道中、何故か分からないが

足がすくんで中々ライトに辿り着かなかった。初めてのことだった。

2回は飛んでこず、ホッとした自分が嫌になっていた。打席に入る前、結衣が「かっ飛ばせ!」と言ってた気がする。

初球はキレのあるカーブだった。手が出ずストライク。続く2球目は真っ直ぐがストライクに入る。

相手キャッチャーは俺を安牌と見るやいなや

最速でカウントを取りに来た。


(集中しろ。何も考えず来た球を運ぶだけだ。)

ビッ!! ボール球になるスライダーを空振った。

瞬間、「走れ!!」と山下さんの声が聞こえた。

キャッチャーが後逸していた。

一塁目掛けて全力疾走する。

「セーフ!」塁審の声が聞こえる。


顔を上げると俺の代わりにベンチの島崎(2年)がいた。


「え?島崎なんでいんの?」

「え?いや俺コーチャーだから...」

「あ、あぁ。そうだったそうだった。」


作った笑顔で答える俺に島崎は

「顔擦りむいてないか?絆創膏持ってくるか?」

と声をかけてくれる。

「いや、大丈夫大丈夫。ありがとう。」


情けなくも気を使わせてしまった。

その後あとが続かず討ち取られ、もう一度ライトに向かう。ライトに着くと、さっきまで先輩だった

キャッチボールの相手が島崎に変わっていた。


「星、もうわかってると思うけど今日は芝の影響で球足遅いから次来た時は捕球体制変えてみろよ。」

「あ、うん。」

島崎は少し困惑したような顔をしていたが、

キャッチボールを終えてベンチに戻った。


5回、1-0から日野さんに変わり増田さんがマウンドに上がると、相手打線が爆発。1-4とリードを広げられる。

1アウト1.2塁。打順が1番に戻った時。

ビッ!! キィーン!

俺の方に打球が飛んできた。


(来た。2塁ランナーは帰るはず。前に出て取...)

後逸してしまった。センターの香山さんがカバーに

入ってくれたおかげで1点は取られたが2.3塁にできた。後続を討ち取り、交代。うちは5番からの攻撃。

エラーをした俺を、高島コーチは変えるだろう。


そう思ってベンチに戻ろうとすると

「星!!」と、コーチャー準備していた島崎が再び声をかける。


「気にすんなよ。自分のバットで取り返せばいいんだ。」

「いや。おれは多分もう交代だ。グラブ置いたらコーチャー変わるよ...」


島崎はまたしても困惑した顔をしていた。

島崎を抑えてライトに入ったのにこのザマだ。

自分が情けなく思っていると、

「何をそんなに思い詰めてんだよ。」と島崎が言う。


「もしかして俺の代わりに出たこと気にしてんのか?そりゃ悔しいけど、同じチームでいる以上こうなる

事なんて珍しい事じゃねぇだろ。」

「う、うん。」

「俺の知ってるお前はチーム盛り上げてチームの為に戦う奴だろ??お前は覚えてないかもしれねーけど。小学生の時、おれはお前らにボコボコにされたんだよ。」

「え、あ、そうだったのか?」

「でも別にそれで嫌いになったとかはねーぞ。

むしろ俺の代わりに出て腑抜けたプレーしてるお前の方がおれは今怒りを感じてる。胸張ってやれよ!グラウンドに立つお前は誰よりも輝くべきなんだよ!」


ベンチに戻り、バットを握る。

打席に入り、ベースの角を叩く。

何を戸惑うことがあったのだろう。人に嫌われたく無かったのか?俺は。人の為に手を抜くなんて。

それこそ嫌われるっつーのに!!


ピッチャーが振りかぶる。

ビッ!! カァーーーーン!!

俺の打った打球はライトフェンスに飛び込んだ。

ベースを周りベンチに戻らず、一塁コーチャーボックスに向かう。


島崎がいつも通りの無表情で、顔の横に手を出す。

おれは何も言わず、その手に思いっきりタッチをした。






ご視聴ありがとうございます!

自分事ですが、昨日今日の草野球で

熱中症気味です...

みなさんも気をつけてください!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ