第3章:怒れるアメリカにブレーキはない
紅海の構図は、静かに転換点を越えました。
構図を読む私たちにとって、それは“衛星画像が使われた”という一点にとどまらず、
その後の動きによってさらに確信へと変わっていく流れでした。
そう──アメリカが本気で構図を処理し始めたことが、
明らかになっていったのです。
2025年3月15日、アメリカはイエメンのフーシ派に対して、
「オペレーション・ラフライダー」と名付けた空爆作戦を開始しました。
発端はフーシ派による紅海での商船・軍艦への攻撃。
けれど、それだけでは済まない、とアメリカは見ていた。
問題は、その背後にイランの支援構造があるとされていること。
そして、衛星画像という“情報面の加担”に中国の影が差してきたこと。
では、アメリカはどう動いたのか。
・ディエゴ・ガルシア空軍基地には、B-2ステルス爆撃機×5機が配備され、
・イラクには、B-52長距離戦略爆撃機部隊が展開、
・海上には、**空母打撃群2個(USSカール・ヴィンソン、USSハリー・S・トルーマン)**が進出。
──これらは、明らかにフーシ派だけを相手にする規模ではありません。
これはむしろ、**「フーシを止められないなら、親玉ごと責任を問う」**という構図そのものだったのです。
イランは、フーシ派を“支援はしているが、直接指揮しているわけではない”という立場をとっています。
ですが、アメリカにとってそれは関係ないのです。
「攻撃を止められなかった」
それはすなわち、**“止める力も責任も果たさなかった”**という構図になる。
これはもう、外交論ではなく、
構図の連帯責任という判断基準のもとで、動いているのです。
そして──
ここでこそ見えてくる、今回の本質があります。
アメリカのこの一連の行動を、誰も止められないという現実です。
・ロシアはウクライナ戦線で消耗を続け、
・中国は衛星画像供与の釈明で防戦一方、
・欧州は紅海封鎖の経済打撃に追われ、抗議どころではなく、
・国連は……いつものように、決議も調停もできない。
世界は、アメリカに対して**「実質的に何も言えない・何もできない」構図**の中に、
既に移行してしまっていたのです。
ここでひとつ、重要な視点を置いておきましょう。
このアメリカの動き──
それは“怒り”ではありません。
感情的な暴走ではなく、
戦略の連動。構図の展開。未来の設計。
怒っているように見えても、
実際は“構図を処理している国家の手つき”である。
これが、2025年春のアメリカが見せていた実像です。
次章では、この“構図処理国家”が次にどこを見据えたのか。
GNSS秩序、そして北斗の信用排除という、未来構図の前倒し現象を語っていきましょう。
いま世界は、“誰の衛星で座標を取るか”という、
測位の秩序線を引き直す段階へと入っています。