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第1章: 全方位関税は“予告状”だった

2025年春──

アメリカはまた、“関税”という言葉を使い始めました。

けれど、今回それが意味していたものは、

かつてのような国内産業保護でも、単なる対中強硬姿勢でもありません。


それは、もっと静かに、そして深く構図を塗り替える──

ひとつの秩序設計の合図だったのです。




発表されたのは「全方位関税」。

すべての輸入品に対し、一律で10%の関税を課すというものでした。

“解放の日(Liberation Day)”という少し劇的な呼び名と共に。


一見すると、誰にでも平等に課されるように見える政策。

けれど──

実際にはこの制度、90日間の猶予期間が設けられており、ほとんどの国にとっては、すぐに影響が出るわけではなかったのです。


……ただし、中国を除いては。




中国に対してだけは、例外が適用されませんでした。

猶予も調整期間も一切なく、即座に最大245%という、実質“輸入禁止”レベルの関税が課される。


これはもう、関税というよりも“遮断”です。

外交の文法を使わずに、構図そのものを書き換えるような一手。




しかもこの動きは、WTOなどの国際的枠組みをほぼ完全に無視して進められました。


従来であれば、こうした措置には

「協議」や「国際調整」のフレーズが添えられるはずなのに、

今回はそれすらなかった。


アメリカはただ、自国の決定としてそれを執行したのです。




この時点で、私たちは気づいておくべきでした。


これは“怒りの表現”ではない。

そして“貿易政策”でもない。


これは、構図設計国家としてのアメリカが、ペンを動かし始めた音だったのです。




構図を読む視点から見ると、ここで語られていたのはひとつの明確な意志です。


アメリカは、再び「描く側」に立つ。


その構図の第一線は、経済から引かれる。


そして最初に切られるのは、“グローバル秩序の外縁に立ち始めた国家”──中国である。


これが、「全方位関税」に見せかけて打たれた、**極めて構図的な“予告状”**だったわけです。




次の章では、まさにその予告がどう発動したのか。

中国の衛星が提供したたった一枚の画像から、構図がどう塗り替わっていったのか。

それを、追っていくことにしましょう。

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