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とある職場の一年半  作者: やゐゆゑよ
9/16

7月 金澤

うちの会社はお盆の時期に一斉に夏休みを取らない。

世間で言うところのお盆休みは存在しない。皆が一斉に同じ時期に休業する休暇制度ではなかった。代わりに夏休暇がある。7、8、9月の間に7日間、各自任意の日に取得できる。土日と続けて9日まとめて取得してもいいし、1日づつでもかまわない。

ただし事務所を無人にしないよう事務所のメンバー内で調整するのが不文律だ。

3ヶ月の間、全員が出勤している日はほぼない。一人しか出勤しない日もあり、正直この時期仕事の効率は下がる。ただ業種的に繁忙期ではないため、忙しくなってくる秋冬に向けて、英気を養いつつゆるゆる仕事をしていくといった空気だった。



暗黙の了解として、事務所が無人にならないように事務所のメンバーの中で調整することになっている。ということはある程度まとめて休むつもりなら早めの根回しが必要になってくる。

かつて、根回しなしで「子どもが、親戚が、家族が」と押し通してワンシーズンに二度まとまった休暇を取得した安田はそれ以降何年経っても夏が来るたびにネタにされている。もちろん本人がいない場所限定だが。


一人が夏休暇を取ったところで、代わりに他の誰かが出勤するわけではない。

3ヶ月の間は、他の時期よりも常にうっすら人の手が足りないことになる。自分が休むためには他の人の分の仕事もしなくてはならない。その代わり自分が休んでいる間は他の誰かが自分の穴埋めをしてくれている。


自分が夏休みを取るためには他の人の夏休みを支える。

自分が気持ち良く夏休みを取るためには他の人にも気持ち良く夏休みをとってもらう。

普通に考えればわかることだが、わからない頭の持ち主も若干存在する。この職場にも一人いる。

「彼女、休み過ぎだわ。どうして私があの子のフォローをしなくてはならないの」

本村が4月に異動してきた千原係長に愚痴っている。

「休み過ぎってことはないんじゃないですか。夏休暇はみんな7日ですし、本村さんだって7日休んでいいんですよ」

係長が言っていることは正しいのだが、あの言い方では本村は耳に入れることすらもしないだろう。本村には間違っている答えでも自信たっぷりにゴリ押しの屁理屈を偉そうに上から説明してやるとなぜか納得するのだ。


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