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とある職場の一年半  作者: やゐゆゑよ
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5年ルール 田中

金澤さんが畑中課長から聞き出してきた。

「会社としては育休取ってもらっても構わないんです。お子さんは12月に生まれる予定ですね。1年取得されるならお子さんが1歳になる次の12月までです。それから次の3月末までの三ヶ月少々は働きたいといえば働いてもらえます。延長したいと言えば延長します。ただし、その3月末にはアルバイトの契約は更新しない予定です」


でないと、5年ルールにかかってしまう。うちの会社のアルバイトに5年ルールを適用して無期雇用になるほどの魅力があるとは思えないけど一応会社の方針としては5年ルールが適用される前には辞めてもらうことになっている、と畑中課長が言った。と金澤さんは言った。


というか金澤さん、皆が吉井さんの話をしていても特に気乗りしない風で、逆に吉井さんがどんな人か聞き返すくらいだったと聞いている。わたしも何か聞かれて答えた記憶がある。向こうから聞いてきたのに答えてもシラっとした反応だったのでよく覚えている。そんな金澤さんが上司に直接確かめるほど吉井さんの件に興味が持っていたことに田中は驚いた。


5年ルールとは何かという話になった。

吉井さんが5年ルールのことを知っているかどうかを考える前に田中達もよく知らなかった。誰かがネットで調べた。


無期転換ルールとも言う。

有期雇用が満5年継続した場合、雇われた方が無期契約にして欲しいと申し出ることができる。

雇った方は断れない。

雇った方から満5年直前で契約解除をいうのは無し。

育児休業で出勤していない期間は雇用期間にカウントする。

労働条件や給料は有期雇用の時と同じ。


吉井さんと一緒に働き始めてまだ1年くらいしか経っていない気がしたから、5年ルールと聞いてはじめは戸惑ったが、そういえば田中達と働く前、吉井さんがまだ独身の頃、役員室でしばらく働いていたことを思い出した。


そんな法律があるんだなあ、とワイワイやっている者の傍で、焦れた本村さんが<畑中課長が吉井さんに5年ルールのことを説明したかどうか>を確認するようにと金澤さんに促したらしく、見事に反撃されたようで本村さんは激怒しつつ事の顛末を語ってまわった。

「はあっ?何故私が訊きに行くんですか。知りたかったらご自分で訊きに行けばいいじゃないですか」と金澤さんは言ったという。

すべての人が金沢さんのように課長に直接訊きにいったり、本村さんに言い返したりできるわけではない。


安倍さんに畑中課長の5年ルール発言について伝えた者は誰もいないらしい。

もし、畑中課長が吉井さんに5年ルールのことを伝えていなかった場合、吉井さんの保護者を自認している安倍さんがそれを知って、安倍さん経由で吉井さんに伝わって何らかの対策を取られてそれが会社の本意ではなかった場合、誰がもらしたか責任問題になることを危ぶんだようだ。


産休だけ取って育休取らないっていうのは5年ルールのことわかって言ってるのでは?と口にするものもいた。

いやいや、ここはそんなにしてまで働かなきゃいかん職場ではない。と口では言いつつも、結局誰も安倍さんにも吉井さんにも伝えることはなかった。次第に5年ルールのことは話題にはならなくなった。




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