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とある職場の一年半  作者: やゐゆゑよ
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7月 金澤

アルバイトの吉井亜美が12月に出産予定。

産後休暇は取得するが、育児休暇を取らずに復帰予定。


今職場ではその話題でもちきりだ。

本村に至っては、何かに取り付かれたかのようにその話ばかりしている。

安倍は「赤ちゃん楽しみだね」と浮かれている。安倍は、吉井亜美が産休に入っても吉井が担当していた仕事を分担する気がハナからないから浮かれていられるだけだろう。


うちの会社のアルバイトの契約は長期契約分は年度ごと前期後期に分けて契約していたはずだ。一応1年間働いて欲しい場合でもまず4月から9月末で終了して10月に契約し直して3月まで。それで10月中から産前休暇ってどういうことだろうか。出産する場合は違うのか。


辞めるなら次のアルバイトを雇えばいい。育休を取る場合でもアルバイトを雇うこともできる。産前産後休暇だけなら新しい人に来てもらっても仕事を覚えた頃に雇用期間が終わりそうだ。その場合上はどうするつもりか。問題はそれだけのはず。それなのに何故か皆、それ以外のことで口数が多い。


普段不用意なことは言わない後輩の田中までが

「今の時代、妊娠を理由に契約を切るのは違法なんですよね。だから吉井さんの方から辞めますって言わない限り契約を更新しなきゃいけないってことなのかもしれませんね。でも吉井さんの場合はそれ以上にお兄さんのことが重要なんじゃないかなって気がします」

と言っていた。


吉井亜美のお兄さんはうちの会社の取引先である株式会社YOSHIIの社長だ。

吉井社長は大学生の時に今の株式会社YOSHIIの礎になる事業を立ち上げ、それを大きくして今の規模にまで成長させた。途中で一緒に仕事を立ち上げた仲間に裏切られて倒産間際まで追い詰められた後、会社を立て直した成功者だ。テレビ番組で「ベンチャーの雄」と持ち上げられたりしたこともある。うちの会社の役員の誰かが吉井社長と仲が良いらしい。そのつながりで妹である亜美をアルバイトとして雇ったと聞いた。


安倍に聞いてみた。

「吉井さんてどんな人?」

「良い子よ。仕事の覚えも早いし、感じもいいのにしっかりしてて、変なくせのない子よ。ご両親とお兄さんに可愛がられてちゃんと育てられたのがよくわかる子よ」


本村に聞いてみた。

「吉井さんと話した事ありますか?」

「ん~、まあ挨拶程度ね。その時は悪い感じはしなかったけど、実のところは良く知らない。でもね私が言いたいのはそういう事では無くて…以下略」


田中に聞いてみた。

「吉井さんて、お兄さんのことをかさに着る感じ?」

「いや、特にかさに着るとまではいかないですけど、みんな知ってることだからって言って特に隠したりはしませんね。普通に会話の中に登場しますよ」


う~ん、吉井さんのことをよく知らない以上は、吉井さんがどういう行動をとる人なのか推測することもできない。









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