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燃えないで

「ランゼス派っていうのはね、王城にいる偽物のランゼスのことを慕う集団なんだよ。貴方のお父さんみたいな人を脅して、魔法資源を横流しさせてーー自分達に都合の悪い人間を、殺してるの」

「だ、だいぶ物騒なんですね」


と言いつつ、ルースの中ではツッコミの嵐だった。


ーーな、ん、だ、そ、れ!!


そんなことをしたら、余計ランゼスの悪評が大きくなってしまうだろうが。ただでさえ、転生・王城占拠で嫌われているっていうのに!


「それで、ふふ、面白いのがね、そのランゼス派を率いてる人間の名前が、クロエ・アランシールっていうんだって。これは、ランゼスの部下の名前で、ランゼスをずっと慕っていたらしいよ」


嘘だな。


セクハラ三昧だったランゼスのことを、クロエが慕っていたなんて。じゃ、なくて。


「……クロエという方も、ランゼス同様、生まれ変わりを名乗っているんですか?」

「そうらしいよ。姿は現さないけどね」

「名前だけ、ということですか」


どこの誰かわかっているのなら、自分がランゼスだと訴えにいくこともできたというのに。


ーーそれもそうですね。あんなに殺意が高い人たちの前に、ノコノコ出ていくこともできませんし。


「ちなみに、ニアさんは、それを信じているのですか?」

「クロエの方? ランゼスの方?」

「両方です」


すると、ニアは、ふいと横を向きながら、


「両方とも、だったら良いなと思ってるよ。生まれ変わりなんて、素敵じゃない? 普通、人は自分の記憶を引き継げない。だけど生まれ変わりは引き継ぐことができる。前世の贖罪をすることができるんだよ」

「贖罪、ですか」


随分と重い言葉だ。ニアの表情は、前髪と重なって見えなかった。




「よし、説明だけではわからないだろうから、実際に魔鉱石を触ってみようか」


クラスの一人一人に、魔鉱石が配られる。実家で見たのは、加工される前のものらしい。今目の前にあるものは、ごつごつした感じではなく、つるりとした感じだ。よく手に馴染む。


「これを握り込んで、意識を集中させる。すると、石と共鳴して、魔法が使えるようになる」


オービル先生が、石を握り込んでいない手から炎を出し、十秒後に消す。


「ここで注目してほしいのが、石の大きさだ。石の魔力は、使えば使うほどに減っていく。こんなふうにな」


オービル先生の持っている石は、半分くらいにまで小さくなっていた。


「魔法が大きければ大きいほど、使う時間が長ければ長いほど、たくさんの魔鉱石が必要になる。別に、魔鉱石である必要はないが、この学園では魔鉱石を使っている。見た目の変化が、一番わかりやすいからだ。今日の授業で君たちがすることは、魔鉱石を、三十秒以上保たせることだ」


これが、なかなか難しい。


ルースは、燃え上がる炎と睨めっこ。炎は、大きくなったり小さくなったりする。


中火で一定。そんなイメージをしてみるが、ちょっと他のことに気を取られると、一気に火力が上がって、魔鉱石の消費速度が速くなる。


「あ、できた」


悪戦苦闘するクラスの中で、いち早く声を上げたのはニアだった。

オービル先生のところに行ってそれを披露した後、すたすたと帰ってくる。ぴらぴらと、紙を見せびらかす。


「見て、ルース君。合格のハンコ。一番乗り」

「それは、良かったですね?」

「疑問形。コツ、教えてあげよっか?」


面白くなさそうなニアが、ルースの耳元で囁く。


「燃やそうとするんじゃなくて、燃えないでって心の中で願うんだよ」  


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