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使い捨て②

人の命に差をつける。


そんな冷酷さの前提には、死にゆく人間に向き合う努力がある。微に入り細を穿つように、死なせる人間を知る必要があった。


でなければ、この国は滅んでしまうからだ。この国を強くして、守ろうとしているのに、優秀な人材を殺させてしまっては、本末転倒になるからだ。


少し頬のこけた王様は、澱んだ瞳で、「今日もお前のせいで人が死んだ」と始めた。


一人一人の名前を挙げていく。思えばそれは、親衛隊の貴族子弟が死んだ時から同じだった。


ローガンは、目を逸らすことなく、それを聞いていた。


死者のことを知っている王様は、その罪悪感を、ローガンを責めることによって解消していた。


王様は頭が良かった。暗い部屋で、一人で自分を責めれば、自分の命を絶ちたくなる。そうなれば、全ては水の泡。死んだ者も浮かばれない。


共犯者であるローガンとの会話は、彼が、自分の形を保つ手段だった。


「……お前を拾った男も、そうやって話を聞くのか」

「は?」


不思議なことを呟いた王様は、それ以上何も言わなかった。




「弱い人間から派遣するってのがよくわからねえよなぁ」


始原の獣の存在が、なにかとんでもない化け物がいるくらいには知られた頃。


街中では、守るべき民がそれぞれ、自分の意見を口にし出していた。


「親衛隊なんて、建国の頃はまだしも、今じゃすっかり牙を抜かれて王様の犬。実践が足りてねえんだから、そりゃヤられるに決まってんだろ」


親衛隊は、一部を除き全滅した。次は多分国軍あたりが派遣されるだろうが、それも、王様の政治に合わない人間が派遣されるだろう。 


獣が討伐された後の世界で、王様が思うままに、政治をとることができるように。


「最初から軍隊派遣して、討伐しとけばこんな被害が広まらなくて済んだのに、何を出し惜しみしてんだか」


残念ながら、名誉を欲しいと言っていた王様の名誉はいま、地に堕ちようとしている。


始原の獣を倒せると信じている王都の住民は、好き勝手言っている。


街中を歩きながら、ローガンは、共犯者の心労に思いを馳せた。


……そう。


命の価値の話をするのなら。


王様が真っ先にしなければならなかったのは、民間の命を犠牲にすることだった。


天秤なんて、最初から壊れていたのだ。

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