ローガンの話⑤
「……なるほど」
ルースはそれまでにローガンの話を聞いていたが、ついつい口を出してしまった。
ーー俺はローガンに役割を与えていたわけですか。
もちろん、ランゼスはそんなことひとっつも考えていなかった。掃除を頼んだのも、物がどこにあるかわからないと言われたからだし、財布の紐を握ってもらおうと思ったのも、自分の酒癖の悪さを自覚していたからだし。
それがなんやかんやで作用して、ローガンはランゼスのことを恩人だと思い、そして、神格化していたらしい。
「ローガンって、俺のこと本当に好きだったんですねぇ」
「好きですよ」
ルースは過去形でしゃべってるのに、ちゃっかり現在形に直してくるローガンである。それが、ニアのガーネットの瞳と合わさって、ルースは居た堪れなくなった。
「それなら、どうして殺した」
語尾を上げることもせずに、クロエがローガンを睨む。
す、と上げられた杖を掴んで自分に向けると、クロエが怯えたような顔をした。
「まあまあクロエ。それをこれから説明してくれるんですから。あっ、遮ってすみませんローガン」
「ですが、ランゼス様……っ!」
「クロエの話も、後でたっぷり聞いてあげますから」
そう言うと、クロエはしゅんとして杖を下げた。
「じゃあローガン、続きを話して」
「……これから話すことは、とても醜い感情ですよ」
「良いですよ。きっと俺には、聞く義務がありますから」
二つの話を聞いたのは、ほぼ同時だった。
「俺はさぁ、孤児だったんだ」
ぱちぱち。火の粉が弾ける音を聞きながら。赤々と横顔を照らされながら。ランゼスが、ぽつりと言った。
「俺を拾ってくれたのが、傭兵団のお頭ってワケ。そいつがほんっとーにロクでもねえ奴で、最後には俺を囮に使って、俺は奇跡的に生き延びて、傭兵稼業をしてたんだ」
「大変、だったんですね」
薄々そうだと思っていたが、ランゼスに親はいなかったらしい。ローガンは、曲がりなりにも家族と一緒に育ったし、それなりの愛情は注がれていたから、そう言うことしかできなかった。
「だから俺には苗字がなくて、まあ、それは良いか……」
「あ、今の話ナシにしてください」
再び“どうして復讐をする気になったか”の話を始めたローガンが、いきなり自分から話をぶった斬った。
「話すエピソードを間違えました。本当に」
「ニアさんの顔で言われると、本当にそう思っているのか判別しかねますね……」
そういえばそんなことあったなぁと、ルースは微笑ましくなった。これはほっこりエピソードの一つで、ローガンがランゼスに苗字をつけてくれた時の話である。
ルースは、ふふ、と笑った。
「懐かしいですねぇ、ローガンの優しさが嬉しかったなぁ」
「……っ」
ローガンの顔は真っ赤になっていた。外面はニアなので、なんだか悪いことをしている気分になる。
「ん、ごほんっ」
そんな、優しい雰囲気の中。咳払いをしたクロエが、不機嫌な顔でローガンに言った。
「早く先を話せ。あとが詰まってる」




