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ローガンの話②

ローガンは、「よしっ」と気合を入れた。


部屋の中を片付けた結果、とある重要な事実が判明した。ちりとりはあったが、物がその上に積み重なっていたので、もはやちりとりとしての機能がなくなってしまっていたのだ。


「……色々必要になるな」


ちりとりだったものをつまみあげながら、ローガンは呟いた。


「洗濯桶も結局なかったし……いい加減なんだから……」


言いながら、ローガンの口元は弛んでいた。何かすることがあるというのは幸福だ。お陰でこうして、家族を喪ったことを深く考えないで済んでいる。


「はやく、帰ってこないかな……」


ローガンは、遠くの山の方を見た。あの山を越えた先で、ランゼスは傭兵として戦っている。最近は、二晩帰らないことが増えた。


箒で掃く手を止めて、ローガンは、床にしゃがみ込んだ。


「はやく、帰ってこないかな……」




「俺、傭兵辞めるわ。もっと安定した職業に就く」


ようやく帰ってきたランゼスは、夕食を食べながらそう言い放った。


ローガンは、内心で喜んだ。ランゼスは強い。怪我をして帰ってくることは滅多にないが、傭兵というのは、いつ死んでもおかしくない職業だ。


「だから、王国公認のギルドに入る。つっても、名ばかりらしいけど、組合入ってりゃ仕事にあぶれることもねえし。そのかわり、長期間の任務とかあるらしいけど」

「え……?」

「でもま、お前も一人の時間が長くなって嬉しいだろ? なんなら、金だけ仕送りしても……」


スプーンを叩きつける音。


驚いた顔をしたランゼスと同じく、ローガンもまた、自分のしたことに驚いていた。床に落ちたスプーンを拾って、取り繕うように笑う。


「す、すみません。手が滑って……」

「掃除のしすぎか? いつもありがとな、ローガン。俺がこの家に帰ってくる時、何を楽しみにしてるかわかるか? 箒にちりとり、洗濯桶……はなかったか。どこで買ったか覚えてない花瓶とか、お前が発掘してくれた物を見るのを、楽しみにしてるんだよ」  

「……だったら、仕送りなんて、言わないでください。この家に帰ってきてくださいよ」

「つってもなぁ、遠くに行くこともあるからさ」

「じゃあ、僕も連れて行ってください!」


情けない声だった。机を叩いて、ローガンは立ち上がった。


「お願いです、一人にしないで……」

「わかった」


ランゼスの返事は早かった。


「じゃあ、お前もギルドに入るか」




「ただし、この家の掃除が終わったら、だ。俺が仕事で疲れて帰った時、綺麗な家で休みたいからな」


ギルドに入るか、と言ってくれたランゼスだが、本音はまだローガンを連れて行きたくないようで、条件を出してきた。


ローガンは、思いっきり頷いた。


とびっきりのぴかぴかにして、ランゼスと一緒に、ギルドで働くのだ!


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