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育て親

中学校に上がった鈴成の元には、なんでか喧嘩を売る人物が絶えなかった。


「どうしてだ、俺は何か悪いことをしたのか」


今日も、隣町からわざわざやってきた不良をいなし、その不良で作った山で、鈴成は溜め息を吐く。


せっかく、ランゼスとして生きてきた記憶を封印して、まっとうな人生を送ろうっていう時に。


「俺はただ、城が欲しいだけなのに」


自分でも馬鹿だと思う。城が欲しいあまりに、不良たちをかき集めて、そのてっぺんに座っているのは。


「おい、どうして俺を襲ってきたんだ?」

「なんか、ムカつく、から」


不条理極まりない。尻に敷いている不良の答えに、ご不満な鈴成は、軽く不良を蹴った。良い声がして、ランゼスだった時の悪い心が芽生えそうになった。体の部位によって、出る悲鳴が微妙に異なるので、その差異によって音楽を奏でることができ、


「じゃ、なくて。ここは日本、法治国家。オーケー俺?」


前世のような、力こそすべて! な世界ではなく、普通に警察がいて、普通に逮捕される恐れのある世界なのだ。不良の山を築いていてなんだけど。


岡本家は、その筋では有名な家柄で、時期当主と目される兄は文武両道で将来を目されている。対して鈴成は、常に兄と比べられる落ちこぼれ。おまけに、不良に喧嘩を売られるせいで、自分まで不良に見られる始末である。


「やっぱり、質が違うのかなぁ」


鈴成は、自分の存在を、和食と洋食を混ぜ合わせたようなものだと自覚している。つまり、納豆とネギと卵をパンで挟んでいる状態。


「納豆トースト……アリだな」


明日の朝は、密かに(くりや)に潜り込んで、納豆トーストを作ってやろう。それで、兄にも振る舞ってやろう。


良案だと思い、鈴成は不良の山から飛び降りようとして、目を見開いた。


「鈴成、くん?」


長ネギが飛び出ている買い物バッグをぶら下げて、鈴成の名前を呼ぶ女性。


「よっ、よっ……」


あまりの驚きに、鈴成は不良の山から安全に降りることに失敗した。


「大丈夫?」


ずべしゃ、と派手な音を立てて落下した鈴成に手を差し出す女性は。


「随分と、やんちゃに育ったのねぇ」

「よ、ようこ先生は、相変わらず綺麗だね」

「ふふ、ありがとう」


幼稚園で、鈴成の夢を肯定してくれたようこ先生は、変わらない笑みを浮かべていた。











ルースは、大いに混乱していた。


「えっと、ローガンの子孫がクロエで、クロエの子孫、じゃねえや。ニアさんがローガンで」


なんとも不思議なことに、ランゼスとクロエ、そしてローガンが、四百年後の世界に、記憶を持って集まった、というわけだ。


「不思議なこともあるものですねぇ」


ルース、渾身のとぼけたふり。記憶を持って生まれたのは二度目なので、そんなには驚いていない。


「じ、実は、私は、転生が二度目なのです」


そろそろと手を挙げたのは、クロエである。


ランゼスが殺したはずの獣がぐるぐると徘徊する玉座の間で。そして、人質となった人々ががたがた震える中。三人は、同窓会のようなものを開いていた。


「その時に、『神代の森派』のリーダーを殺したのですが、なぜかレンドン派という後発組織ができていて」

「……だって、殺し方が甘かったから。当時『神代の森派』は、王に着くか、実権を握るかで揉めていた。リーダーはお飾りだった」


膝を抱えて、ニア改めローガンが、ぽつりと呟く。


「だったら、まとめあげた上で根絶する方が良い。だから、レンドン派として復活させた」

「二人とも、俺のいない間になにやってんですか」


ルースは、至極もっともなことを言ったと思う。それなのに、非難の目を向けられたのはこちらの方だった。


「だって、そうすればランゼス様が喜んでくれると思って」

「そこの男女と同じ意見で」

「お前も女男だろうが。なにがルース君だ。恥ずかしくないのか」

「さっき君が抱きついてた絵面のほうが恥ずかしいよ」

「あーもう、喧嘩しないで。ネチネチネチネチと……なんですか、この手は」


ローガンとクロエが、ルースの手を握ってくる。左右片方ずつ。妙にキラキラした目を向けながら。


「そうと決まれば、処刑、処刑しましょうランゼス様!」

「ここに、冥王ランゼス様の新たなる伝説が幕を開けるのです」


殺意のみなぎった、悪気のない目をしている二人を見て、ルースは思った。


ーー誰だ、こんな奴ら育てたのは!


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