第2話
第2話登場人物
『有限会社三鷹プロダクション』
アニメーション制作会社。通称【みたかプロ】、もしくは【三プロ(さんぷろ)】。
設立後、数年の暗黒時代を知っている人は三流プロダクションという意味を込めて、三プロと呼んでいる。
『マジョスパ! ~魔法少女温泉街~』
伏見班の冬番組。通称【マジョスパ】。魔法少女もの。
『午後の城』
堀田班の現在進行形の作品。分割2クール。
通称【ゴゴシロ】。学園もの。
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みたかプロ・制作部
伏見 … ふしみ。女。制作デスク。
堀田 … ほりた。男。制作デスク。
本山 … もとやま。男。制作進行。堀田班。
日比野 … ひびの。男。制作進行。新人。
黒川 … くろかわ。男。プロデューサー。
藤丘 … ふじおか。女。設定制作。伏見班。
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伏見班担当作品スタッフ
白石 … しらいし。男。『マジョスパ!』監督。
宮沢 … みやざわ。男。キャラクターデザイン。プロダクション・ゼロ所属。
堀田班担当作品スタッフ
豊平 … とよひら。男。『午後の城』監督。
片倉 … かたくら。男。美術監督。スカイブルー所属。
中島 … なかじま。男。本山担当話数の演出。
平岸 … ひらぎし。女。本山担当話数の作監。
広瀬 … ひろせ。女。本山担当話数のセル検。
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その他
高瀬 … たかせ。男。他社制作。本山と同期。
箕浦 … みのうら。女。他社制作。本山と同期。
桜坂 … さくらざか。男。プロダクション・ゼロ制作デスク。
吉野 … よしの。女。日比野の専門学校時代の同期。スカイブルー所属。新人。
富沢 … とみざわ。男。現在逃亡中のアニメーター。
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制作進行【せいさくしんこう】とは……アニメーション制作の現場で制作管理に携わる人のことを指す。新人制作時代は自分の担当話数を持つまでは先輩達の手伝いをして業務内容を学ぶ。会社によっては入社当日から自分の話数を持たされることも。大体、1ヶ月ぐらいしたら同期が半分くらいに減っている。1年後に生き残っている人は更に少ない。おまけに、1年ぐらい業界にいないとスタッフに名前を覚えてもらえなかったりする。いや、これホントに。
○ みたかプロ・外観
深夜。
ビルの2階と3階の制作部屋と作画部屋だけ明かりが点いている。
○ みたかプロ・制作部屋
午前2時。
静かな制作部。
堀田班の人間が残っている。
それぞれ無言で作業をしている。
堀田「…」
椅子に深くもたれかかり、アイマスクをしている堀田。
階段を降りてくる足音がかすかに聞こえる。
アイマスクを外す堀田。
他の制作達も制作部の入り口に視線を向ける。
扉が開く。
豊平が中に入ってくる。
手にはコンテ用紙の束。
堀田と目が合う。
頷く豊平。
堀田「おーつかれさまでーす!!!!」
一同「おつかれっしたぁっ!」
立ち上がり頭を下げる一同。
満面の笑みの豊平。
堀田「監督!最終話コンテ作業お疲れ様です!」
豊平「いやぁ、ありがとう。遅くなって申し訳ないね」
拍手の中、コンテを堀田に渡す。
堀田「すぐコピーとるんで、ちょっと待っててくださいね」
堀田がコピー機に向かう。
近くにあった席の椅子に座る豊平。
本山「良かったですね、お子さんの運動会行けますよ」
豊平「ホント終わって良かったわ。徹夜明けで運動会に行くのは避けたかったからなぁ」
本山「徹夜でも終わらなかったら運動会の後、戻ってきてもらわなきゃいけなかったですし」
豊平「無理だわー。それは無理ゲーだわー」
本山「ま、終わって良かったですね」
豊平「ホントホント」
本山たち制作と談笑する豊平。
コンテのコピーをしている堀田。
堀田「あれ?」
談笑している傍らで堀田が慌て始める。
堀田「監督」
堀田が豊平を呼ぶが気づかない。
堀田「監督!」
全員が堀田を見る。
豊平「どした」
堀田「ちょっと質問なんですけどココってこういう演出?」
豊平「ん?」
豊平が寄ってきてのぞき込む。
堀田「ここでAパート終わりますよね?で、次がBパートの途中からになってるんですけど」
豊平「んん?あれ?」
堀田「でしょ?10ページぐらい飛んでる」
豊平「あ…」
堀田「まさか」
豊平「これアレだ。ココの抜けてる部分ラフコンテ切って清書するの忘れてるやつだわ」
堀田「ほぉ」
堀田がコンテを整えて豊平に差し出す。
堀田「はい」
豊平が苦笑する。
笑顔の堀田。
真顔に戻る豊平。
脱兎のごとくその場から逃げ出そうとする。
堀田「確保!」
制作達に取り押さえられる豊平。
何かわめき続けている豊平。
○ みたかプロ・制作部屋入り口
午前6時。
日光が差し込んで明るくなっている。
鞄を背負った豊平とコンテを抱えた堀田が向かい合って立っている。
その場にいる人間全員が徹夜明けの険しい表情。
堀田「では、運動会頑張ってください。お父さん」
堀田と後ろに立っている制作達が敬礼する。
豊平が敬礼を返す。
制作「では、行きましょうか」
車の鍵を持った制作に促され、歩き出す豊平。
後ろ姿を見送る堀田達。
扉が閉まる。
○ みたかプロ・外観
お昼過ぎ。
車の往来がそこそこあり、歩道を人が歩いている。
○ みたかプロ・制作部屋
お昼過ぎ。
制作部にちらほらと人が出社してきている。
机に突っ伏して寝ている本山。
○ みたかプロ・階段
昼間で多少明るいが窓がないため薄暗い。
制作部屋の玄関に繋がる階段を半袖姿の日比野が上がってくる。
顔に覇気がない。
日比野M「1日もったら3日もつ。3日もったら1週間もつ。1週間もったら1ヶ月もつ。1ヶ月もったら3ヶ月もつ。3ヶ月もったら1年もつ。1年もったら3年もつ」
玄関に入っていく。
×××××××××××××××××××××××××
(回想始まり)
○ みたかプロ・制作部屋
別の日の制作部。
バタバタとみんな仕事をしている。
日比野「じゃあ、3年もったらどうなるんです?」
原画のチェックをしている本山に尋ねる。
本山が少し手を止めて考える。
本山「うーん…辞めるか諦めるかのどっちかじゃね?」
日比野「諦める?」
本山「諦めて、この業界に骨を埋める覚悟を決めるってこと」
日比野「なるほど」
(回想終わり)
×××××××××××××××××××××××××
○ みたかプロ・制作部屋玄関
下駄箱からスリッパを出して履き替える日比野。
日比野「今日で1ヶ月か」
制作部屋に入っていく。
○ みたかプロ・制作部屋
半月ほど前。
昼間。
制作部。
ぼさぼさ頭の本山が唸りながらパソコンにかじりついている。
段ボールを抱えて日比野が入ってくる。
部屋の端っこに段ボールを下ろす。
日比野「堀田さーん、BANKカットの抜き出しと倉庫の整理終わりました」
堀田「ごくろーさん」
日比野が自分の席に戻る。
隣で本山が唸っている。
日比野「本山さん、手が空きましたけど何かお手伝いすることあります?」
本山「飯でも食ってろ」
日比野「はい、じゃコンビニ行ってきます」
本山「あ、ちょっと待って」
本山が財布からジャラジャラと小銭を取り出す。
日比野「長い方ですか?」
本山「短いの。あとわかめおにぎり1つ」
日比野「了解しました」
日比野がホワイトボードに『買い物』と書き、制作部屋から出ていく。
堀田「富沢さん捕まったか?」
パソコンにかじりついている本山の後ろに堀田が立っている。
本山「駄目です。他のスタジオに問い合わせても全く。作監と話して2原撒き用に修正入れてもらってます」
堀田「そうか…うーん」
堀田も唸る。
○ みたかプロ・第1会議室
会議室。
黒川と伏見、藤丘が唸っている。
机にはアニメ雑誌、ノートパソコン、書類が散らばっている。
伏見「うーん」
ノートパソコンで他社のアニメサイトを見ながら唸る伏見。
黒川「○○さんとかは。東アニの」
藤丘「○○さん10月番でコクブンジの拘束かかってます」
黒川「マジ?東アニから出るんだ」
藤丘「みたいです」
黒川「うーむ」
伏見「いまいち皆さん決め手に欠けますよねぇ…」
黒川「参ったな」
藤丘「参りましたね」
伏見「うーん」
再び、唸り始める3人。
伏見の携帯が鳴る。
会議室を出る伏見。
○ みたかプロ・会議室前廊下
廊下。
廊下に出て電話に出る伏見。
伏見「はい、もしもし。あー久しぶり」
○ みたかプロ・第1会議室
会議室。
廊下から戻ってくる伏見。
伏見「ゼロの桜坂でした。ほら、あの時の制作。今はもうデスクですけど」
黒川「あぁ、あの時の」
伏見「それでですね、どうも会って欲しい人がいるみたいでして」
黒川「会って欲しい人?」
伏見「○○(作品名)のキャラデやってた宮沢さんて知ってます?なにやら、うちの作品に興味があるらしいんですよ」
藤丘「確かに、宮沢さんなら合ってるかもしれませんね。ただ、○○(別の作品名)の総作監終わったんですかね?」
伏見「そう、そこ。なんでまた、うちに連絡をよこしたのかがスッキリしないのよね」
黒川「会えばわかるだろ」
伏見「はい?」
黒川「とりあえず、会ってこい。やってくれるなら願ったり叶ったりだろ」
伏見「えぇまぁ。…わかりました」
○ みたかプロ・会議室前廊下
会議を終えた伏見と藤丘が資料を抱えて出てくる。
藤丘「なんか裏ありますよ」
伏見「え?」
藤丘「なんか裏ありますって」
伏見「でも、どんな?」
藤丘「わかりませんけど…」
伏見「ならプロデューサーも言ってたけど会ったらわかるでしょ」
藤丘「そうですけど…」
伏見「さ、仕事仕事」
藤丘「はーい」
制作部屋に向かって歩いて行く2人。
○ みたかプロ・外観
夕方。
買い物帰りの人たちや、下校途中の学生達が歩いている。
○ みたかプロ・制作部屋
夕方。
本山の机にエナジードリンクの短い缶が空になって置かれている。
本山「日比野ー」
コピーをしている日比野を呼ぶ。
日比野「はい」
本山「ちょっと」
日比野「どうぞ」
日比野が駆け寄る。
本山「富沢さん家わかる?」
日比野「あ、はい。あのいつ行っても留守の人ん家ですよね」
本山「そう。じゃあ、そこに張り込んできて」
日比野「張り込む?」
本山「ほら、ドラマとかで刑事さんが犯人の家の前で張り込みしてるだろ。アレ」
日比野「え?僕が?」
本山「そう。だって俺手が離せないんだもの」
日比野「いやいやいやいや、張り込みなんて僕したことないですよ」
本山「大丈夫だって。富沢さんのアパートの前で張り込みして帰ってきたらそのまま拉致して連れてくる、簡単なお仕事だから」
日比野「えぇ!? 」
本山「ちゃんと、電気メーターとかポストとか確認するんだぞ。じゃ、いってらっしゃい」
日比野に社用車の鍵を渡す。
○ アパート前・道路脇
夜。
住宅街の道路脇。
車内でアパートを見張っている日比野。
エンジンを切っているため少し寒い。
本山と電話をしている。
日比野「えぇ、さっきチャイム鳴らしましたけど反応ありませんでした。え?電気メーター?あぁ、すごいゆっくり回ってました。ポストにはチラシなかったです。わかりました。引き続き見張っておきまーす」
電話を切る。
日比野「何やってんだろ、俺は」
缶コーヒーを飲みながらぼやく。
携帯にメールが届く。
メールを読んで返事を返そうとするが少し考えて、電話をかける。
日比野「出るかな」
しばらくして相手(彼女)が電話に出る。
彼女「もしもし?」
日比野「もしもし、今大丈夫?」
彼女「うん、お風呂上がって髪乾かしてた。そっちは仕事終わったの?」
日比野「いや、まだ仕事中。今、原画さんの家の前で張り込みしてる」
彼女「張り込み?なんか刑事さんみたいだね」
日比野「あはは、だね」
彼女「遅くまでご苦労様。大変だと思うけど頑張ってね。私は応援してるよ」
日比野「優しいね」
彼女「だって、君の可愛い彼女だからね」
日比野「ありがとう」
しばらく電話していると監視している部屋から男が出てくる。
日比野「ちょ、ちょっとごめん。またかける」
彼女「え?う、うん。でも私もうそろそろ寝るけど…」
日比野「わかった。ごめんね。おやすみ!」
彼女「おやすみー」
電話を切って、車から降りる。
日比野「いつ部屋に戻ったんだ」
扉を閉める音に気づいたのか、いつの間にかアパートの前に出てきていた男がこっちを見ている。
日比野と目が合う。
走り出す男。
日比野「マジか⁉」
追いかける日比野。
日比野「富沢さぁーん!」
路地をしばらく追いかける。
大通りに面した曲がり角に日比野が差し掛かったところで車のドアが勢いよく閉まる音がする。
日比野が大通りに出る。
猛スピードで走り去る軽自動車の後ろ姿。
日比野「ああ…」
膝から崩れ落ちる日比野。
○ みたかプロ・制作部屋
深夜。
制作部。まちまちと人が残っている。
本山の机の隣で日比野がうつむいて立っている。
本山「だから、なんで逃げられたんだよ!」
日比野「すみません」
本山「携帯いじってて気づくの遅れたとかじゃねーだろーな!」
日比野「…いえ」
本山「車で逃げたんだろ。どこの会社だったか見たか?車の車種は?」
日比野「いえ…ホント…すみませんでした」
頭を下げる日比野。
本山「もういい。今日は帰れ」
日比野「え、でも…」
本山「いいから帰れ」
再び日比野が口を開こうとするが止める。
黙って荷物を持ち、タイムカードを切って制作部を出ていく日比野。
頭を抱える本山。
本山「……言い過ぎた」
○みたかプロ・外観
翌日。昼間。
車の往来がある。
○ みたかプロ・作画部屋
昼間。
作画部。
中島からカット袋を受け取っている本山。
中島「昨日、新人を怒鳴りつけてたんだって?」
本山「あぁ…あれは反省してます」
中島「君も疲れてるのわかるけどさ、新人君のせいじゃないんだから。もっと落ち着かないと」
本山「はい」
中島「育つもんも育たないよ」
本山「…」
中島「よし、これで手持ちは捌けた。あとは富沢さんとこの2原撒きだけだね」
本山「えーと、もう皆さん作業入ってもらってるんで明日の昼には上がると思います」
中島「じゃあ、明日の夕方入るから、机に置いといて」
本山「わかりました」
中島「よろしく」
○ みたかプロ・制作部屋
制作部。
作画部屋から降りてきた本山。
日比野が出社している。
本山に気づく。
日比野「おはようございます!昨日はホントすみませんでした」
本山「おはよう。いや、こっちも大人げなかった。言い過ぎた」
日比野「いえ、大丈夫です」
本山が椅子に座り、中島からもらった上がりを捌き始める。
日比野「何か手伝えることありますか?」
本山「えーとじゃあ、これ色指定スキャンお願い」
机の端に乗っていたカット袋の束を渡す。
日比野「スキャンしたデータはどうすればいいですか?」
本山「カット毎にフォルダ分けして色指定用フォルダに入れといて」
日比野「わかりました!」
日比野、コピー機に向かう。
堀田がやってくる。
堀田「結局、富沢さん捕まらなかったか」
本山「逃げられちゃいましたわ」
堀田「状況は?」
本山「2原撒きは終わってるんでなんとかはなりそうです」
堀田「珍しくレイアウトは上がったと思ったんだけどなぁ」
本山「いやぁ、ラフすぎて作監さんに滅茶苦茶申し訳ないですよ。ギリギリに上がったから撒き直しも厳しいですし」
堀田「うーん…」
本山「とりあえず、作監料少し何とかなりませんかね」
堀田「わかった。あとで見積もり出しといて。プロデューサーに掛け合っとくわ」
本山「お願いします」
本山がカットを捌き終える。
本山「日比野、ちょっとこれライジング5stの平岸さんとこに届けてきて。あと手持ち分全部上がってるらしいから回収も」
日比野「わかりましたー」
スキャンを終えた日比野が車の鍵と荷物を手にして出ていく。
○ プロダクションゼロ・会議室
夕方。
プロダクションゼロ、会議室。
伏見と藤丘が座っている。
藤丘「やっぱ綺麗ですね、新社屋」
伏見「練馬にあったビル、ボロっちかったもんねぇ」
ドアが開く。
桜坂と宮沢が入ってくる。
伏見と藤丘が立ち上がる。
桜坂「ふっしー、お久しぶりー」
伏見「ご無沙汰してます。あと、その呼び方止めて」
伏見の言葉を無視し藤丘を見る。
桜坂「あ、藤丘ちゃんも来てるのね」
藤丘「えぇ、お久しぶりです」
桜坂「えーと、宮沢さんです」
宮沢「初めまして。宮沢です」
桜坂「こちらがみたかプロのデスクの伏見さん。で、こちらが設定制作の藤丘さん」
伏見「伏見です、初めまして」
藤丘「藤丘です。宜しくお願いします」
それぞれが挨拶を終え席につく。
打ち合わせ風景。
打ち合わせが終わる。
伏見「えーと、一応、こんな感じですかね。とりあえずラフを上げて貰って監督チェック後、お返事させていただくという形ですね」
宮沢「わかりました」
藤丘「これが参考資料ですね」
宮沢「あ、原作本はいらないですよ。持ってますから」
藤丘「あぁ、そうでしたか。じゃあ、こちらの資料だけ」
藤丘が参考資料の束を渡す。
受け取って、ペラペラとめくる宮沢。
桜坂「じゃあ、今日はこの辺で。またこちらから連絡しますね」
伏見「わかりました」
桜坂「お疲れ様でした」
一同「お疲れ様でした」
それぞれが机の書類を片付け始める。
○ プロダクションゼロ・ロビー
広いロビーの壁には歴代作品のポスターが飾ってあり、ショーケースにはDVDBOXやフィギュア、ムック本などが陳列されている。
吹き抜けの天井には過去にやった劇場版の宣伝時に作った戦闘機の模型がぶら下がっている。
藤丘に先に車を取りに行ってもらっている伏見。
伏見の隣には桜坂がいて、話をしている。
伏見「で、どういう裏があるわけ?」
桜坂「裏?ねーよ、そんなん。打ち合わせしてわかっただろ、宮さんホント原作好きでこの作品やりたいんだって」
伏見「でも、あんたんとこの会社で売り出し中の若手じゃない。原作が好きってだけでわざわざ外に出すとは思えないんだけど」
桜坂「深読みするの好きだねぇ。まぁ確かにうちの次世代を担う人だけど、よそのスタジオの作品を経験してレベルアップしてもらわないと。それにふっしーんとこなら安心だし」
伏見「ふーん…ホントにそうならいいんだけどね。あと、その呼び方いい加減止めて」
桜坂「えー、いいじゃん。ふっしー。あ、ほら藤丘ちゃん来たよ」
藤丘が乗った社用車がビルの前に到着する。
伏見「じゃあ、またラフ上がったら連絡ください。今日はありがとうございました」
桜坂「いえいえ、こちらこそ。よろしくねー」
伏見がビルを出て行く。
それを見送る桜坂。
○ みたかプロ・制作部屋
夕方。
制作部。
外回りを終えた日比野が戻ってくる。
本山は顔にタオルを乗っけて仮眠をとっている。
日比野「本山さん、戻りましたー」
本山「おつかれー」
本山が起きる。
本山「ん?上がりは?」
日比野「はい?」
本山「はい?じゃないよ。平岸さんの上がり。入れついでに回収って言ったじゃん」
日比野「え?……あ」
日比野が思い出す。
本山「あ!じゃねーよ!忘れたのかお前」
本山の声が制作部に響き渡る。
日比野「すみません!すぐ行ってきます!」
本山「当たり前だ!今日の撒き前分に乗せなきゃなんねーんだぞ!」
日比野「は、はい!すぐ!」
制作「あー本山、急いでるところ悪いんだけど日比野、また外回り行く?」
制作が本山に声をかける。
本山「行くけど。なんで?」
制作「ついでにスカイブルー行って美監の片倉さんに資料届けて欲しいんだけど」
本山「ブルー?通り道だね。日比野!」
制作「ついでにスタジオスカイブルーに寄って、これ届けてきて」
日比野「わかりました!」
本山「事故んなよ!」
日比野「はい!」
日比野が再び、外回りに出ていく。
○ 走行中の車内
走行中の車内。
夕方のため、若干道路が混んでいる。
カーステレオからラジオが流れている。
日比野「はー。またやっちまった」
ため息をつく。
○ スタジオスカイブルー・玄関
背景会社。
開けっ放しになっている入り口のドアをノックする。
日比野「お疲れ様でーす、みたかプロでーす」
中から声がする。
片倉「はーい。おい、吉野ちょっと手が離せないからお願い」
吉野「わかりましたー」
女性が入り口にやってくる。
日比野「えーと、10話の資料お届けに上がりましたー…あれ?」
吉野「あれ、日比野くん?」
日比野「吉野じゃん。なんでここに?」
吉野「いや、それこっちの台詞だし」
日比野「なに、背景会社に就職してたの?」
吉野「そうだよ?あれ?言ってなかったっけ?日比野くんはみたかプロ?」
日比野「うん。あ、とりあえずこれ、美監の片倉さん宛の荷物」
吉野「あ、うん」
日比野「じゃあ、確かに渡したから。失礼しましたー!」
荷物を渡し、背景会社を後にする。
○ スタジオスカイブルー・建物前
建物前に止めてある社用車。
日比野が車に乗り込もうとしていると、吉野が階段を降りてくる。
吉野「日比野くん!」
日比野「ん?あれ?吉野、なんかあった?」
吉野「これ、私の名刺」
日比野「ああ」
日比野も自分の名刺を渡す。
吉野「また連絡するよ。みんなと連絡取ったりしてる?」
日比野「いや、全然。元気でやってるのかな」
吉野「そっか。実は結構、制作になった子達みんな辞めてるらしいよ」
日比野「マジか」
吉野「やっぱ激務みたい。酷い子は入社したその日から徹夜だったり…」
日比野「…」
吉野「…」
日比野「…なぁ、吉野。業界に入れて良かった?」
吉野「うーん、まだわかんないけど」
日比野「じゃあ、今楽しい?」
吉野「そうだねぇ、今は新しいことばかりで楽しいよ!絵を描いていられるし!」
日比野「そっかぁ」
吉野「何、日比野くんは楽しくないの?」
日比野「自分が何のために制作になったのかわかんないや」
吉野「うーん、まだまだこれからでしょ。お互い頑張ろうね!じゃ!」
日比野「おー、お疲れ」
吉野が去る。
車に乗り込む日比野。
日比野「いいなぁ、楽しそうで」
発進する。
○ みたかプロ・駐車場
夜。
ビル横にある駐車場。
本山、日比野、堀田、黒川の4人が社用車を囲んでいる。
堀田が懐中電灯で車体を照らしている。
車体に傷がついている。
堀田「あーエグいなこれ」
黒川「ガリガリとやったねぇ」
日比野「すみません…距離を見誤りまして…」
黒川「とりあえず、明日総務に話しとくわ」
堀田「ホント、すんません。よろしくお願いします」
本山「すみません」
黒川「とりあえず、今日はもう日比野に運転させるなよ」
堀田「はい、わかってます」
黒川が去る。
堀田「日比野、気をつけろよ。本山、後で始末書の書き方教えてやれ」
本山「はい」
堀田「じゃ、本山、車戻しといて。とりあえず怪我なくて良かったな」
堀田も制作部に戻っていく。
日比野「ホント、すみません…」
本山「鈍くさいやつ」
本山が車に乗り込む。
日比野、紙袋を手に立っている。
○ みたかプロ・外観
外観。
一階の総務部の明かりは消えている。
○ みたかプロ・制作部屋
深夜。0時辺り。
制作部。
本山が作画部屋からカット袋を持って降りてくる。
日比野は帰宅済み。
堀田「本山ー。俺、そろそろ帰るぞ。始末書どうなった」
本山「あ、出来てまーす」
堀田「出来てまーす。じゃねぇよ」
帰り支度が終わった状態の堀田が本山の机に行く。
本山、始末書を渡す。
堀田「おぅ」
堀田、さっと読んではんこを押し、本山に渡す。
堀田「プロデューサーの机に置いといて。また今日も泊まりか?」
本山「いや、もうこれだけなんで終電で帰ります」
堀田「終電まで1時間切ってぞ」
本山「頑張ります」
堀田「うぃ、お疲れ」
本山「お疲れ様でした」
タイムカードを切って、制作部屋を出ていく堀田。
まだ何人か制作部に残っている。
0時半過ぎ。
本山が大体の作業を終えて帰り支度を始めようとする。
携帯が鳴る。
本山「はい。本山です」
広瀬「色指定用のデータまだ?」
本山「あ。ごめんなさい」
広瀬「忘れてたでしょ」
本山「忘れてました。すぐアップします」
広瀬「貸しね」
本山「すぐ。またかけ直します」
携帯を切り、パソコンをいじる本山。
サーバーにアクセスし、色指定フォルダを開く。
本山「ない……あれ?」
日比野に昼間任せたはずのデータがない。
スキャンフォルダをチェックするとそこにはスキャンされっぱなしのデータが入っている。
本山「あのやろ、途中で帰りやがったな…くそっ」
悪態をつきながらデータを移動させ作業に取りかかる本山。
携帯で話している本山。
本山「えぇ、今アップ終わりました。宜しくお願いします」
電話を切る。
時計を見る本山。
1時過ぎ。
本山「終電逃した…。始発まで作業するか…はぁ」
本山だけ残っている薄暗い制作部。
○ みたかプロ・外観
(冒頭のシーンに戻る)
お昼過ぎ。
車の往来がそこそこあり、歩道を人が歩いている。
○ みたかプロ・制作部屋
制作部。
半袖姿の日比野が入ってくる。
日比野「おはようございまーす」
まばらに返事がある。
タイムカードを切り、ホワイトボードの『帰』マグネットを外す。
ホワイトボードの本山の欄に『12時まで仮眠』と書かれている。
時計を見ると12時を回っている。
席を見ると本山の姿はない。
本山がお手洗いから戻ってきて、ホワイトボードに『原版』と書く。
本山「行ってくるわ」
ペンを置く。
本山「日比野、とりあえず誰かの手伝いしといて。よろしく。あ、俺が戻ってくるまで帰るなよ」
日比野「え?行かなくていいんですか」
本山「来なくていいから」
日比野「え?え?」
本山がそのまま急いで出ていく。
日比野、そのまま呆然と立ち尽くす。
○ みたかプロ・制作部屋
制作部。
忙しそうに電話が鳴っている制作部。
伏見「失礼します」
電話を切る伏見。
伏見「ふじおかー」
藤丘「はーい」
コピー機でスキャンをしている藤丘。
伏見「ちょっとそれ終わったらゼロ行ってきて」
藤丘「ゼロ?なんでまた」
伏見「ラフ上がったんだって」
藤丘「え?早いですね」
伏見「監督、夕方入るから回収してコピー取っといてくれる?」
藤丘「わかりましたー」
伏見が椅子ごと振り返る。
伏見「プロデューサー」
パソコンで通販サイトを見ている黒川。
黒川「聴いてた」
伏見「では、夕方空けといてください」
黒川「あいよ」
伏見、作業に戻る。
日比野がぼーっとパソコンの前で作業している。
電話が鳴り、日比野が出る。
日比野「はい、みたかプロです」
本山(OFF)「あぁ、日比野か」
日比野「あ、本山さん」
一瞬顔が明るくなる。
本山(OFF)「デスクに代わって」
保留ボタンを押し、堀田に代わる。
堀田「もしもーし」
再び、落ち込む日比野。
周りの音が消えていく。
日比野「いたっ」
堀田「おい、ボーッとしてんじゃねぇ」
後ろから堀田にカット袋の角でたたかれる。
堀田「とっととカット回すぞ」
日比野「え?あ、はい」
混乱しつつも堀田の指示通りカットを動かし始める。
本山の席に堀田が座りながら作業をしている。
堀田「なぁ、日比野」
日比野が伝票を切っている。
日比野「はい」
堀田「多分、本山は口べただからフォローしとくけどさ。別にお前を原版に連れて行かなかったのは、お前さんを役立たず扱いしたわけじゃないからな」
日比野「…でも、役立たずなのは事実ですし」
堀田「違うって、お前さんをこっちに残したのは意味があるんだって。本山の手足となって動いてたお前さんはどこに何が置いてあるかわかるだろ。原版で本山もお前もあっち行ったらこっちで原版対応時にうまく立ち回れないだろ。たった1ヶ月でも頼りにしてんだよ」
日比野「そうなんですか?」
堀田「多分」
日比野「…」
堀田「だから、落ち込んでる暇があったら仕事しろ。期待に応えろ」
日比野「はい!」
○ みたかプロ・第1会議室
会議室。
伏見、藤丘、黒川、白石の4人が宮沢のラフを見ながら話し合っている。
白石「いいんじゃない?」
伏見「ですね」
藤丘「きちんと原作の雰囲気を生かしてますね。動かして見栄えする線になってますし」
白石「うむ」
黒川「じゃあ、決まりですね。あとは監督と顔合わせしてOKならメーカーに連絡して原作サイドに確認取りますわ。伏見、監督との面接セッティング宜しく」
伏見「わかりました」
黒川「じゃ、今日はこんなところですかね」
黒川が立ち上がる。
それに続いて全員立ち上がる。
伏見「お疲れ様でした」
白石「おつかれー」
黒川と白石が会議室から出て行く。
片付けをし始める藤丘。
藤丘「何事もなく上がってきましたね」
伏見「ん?」
藤丘「なんか裏があると思ったんですけどね」
伏見「仮に裏があったとしてもそんなすぐには表に出てこないわよ」
藤丘「そうですね」
伏見「とりあえず、宮沢さんに参加してもらえるなら全然OKでしょ。この話、終わり」
伏見が荷物をまとめて出ていく。
○ みたかプロ・休憩室
煙草を吸っている堀田。
会議室から出てきた伏見が気づく。
伏見「原版終わったの?」
堀田「今、テープに書き出しやってるって」
伏見「じゃあ、滞りなく終わりそうね」
堀田「もうそろそろ本山辺りには滞りなくやってもらわないと俺の身が保たん」
伏見「確かに」
堀田「そっちは?」
伏見「宮沢さんで決まりそう」
堀田「見して」
伏見がラフのコピーを見せる。
目を細めながら、眺める堀田。
堀田「いいね」
伏見「でしょ」
堀田「動いてるの見たくなるね」
伏見「でしょ」
堀田「あとは性格いいといいね」
伏見「ぐ…」
堀田「ま、今度は揉めんなよ」
伏見「…はい」
日比野がやってくる。
日比野「デスク」
堀田「どっちの?」
日比野「あ、すみません。堀田さんです」
伏見が笑う。
堀田「わかってるよ。原版終わったって?」
日比野「はい。これからテープ届けてくるそうです」
堀田「あいよ」
堀田が煙草を消して、立ち上がる。
休憩室を後にする3人。
○ みたかプロ・外観
夜。
総務部の明かりが消え、総務の人たちが帰っていく。
○ みたかプロ・制作部屋
夜。制作部。
日比野が机に突っ伏して寝ている。
本山「おい、起きろ」
本山が日比野を起こす。
目を覚ます日比野。
本山「おい、行くぞ」
日比野「へ?」
日比野が辺りを見回すと制作部の人間が全員入り口に集まっており、日比野の方を見ている。
日比野「行くってどこへ」
本山「いいから。行きゃわかるから」
制作「おい、早くしろー置いてくぞー」
制作「電話鳴る前に出るぞー」
混乱する日比野を連れて制作部屋を出ていく一同。
○ みたか駅前
夜の駅前。
駅に向かう人や降りてくる人で賑わっている。
ぞろぞろと日比野を引き連れ、駅前の居酒屋を目指して歩いて行く制作部一同。
ビルの入り口で黒川が立っている。
黒川「おーい、遅いぞー」
黒川に促されて一同がビルの中に入っていく。
○ 居酒屋・座敷
よくあるチェーン店の居酒屋の座敷。
10数名の制作達が座ってガヤガヤと話しながらメニューを見ている。
店員「失礼しましたー」
店員が各自に飲み物を配り終えて出ていく。
堀田「じゃ、プロデューサーお願いします」
黒川「え、おれ?」
堀田「一番偉い人なんで」
黒川がビールジョッキを手に立ち上がる。
黒川と堀田がビールを飲んでいる以外はウーロン茶やコーラなどのソフトドリンク。
黒川が咳払いをする。
全員が静まりかえり黒川を見る。
黒川「えー。とりあえず本山お疲れ」
本山「どもっす」
一同「おつかれー」
まばらに拍手が起こる。
黒川「今日は、新人の日比野が1ヶ月経ったので、新歓です」
日比野「え!?そうだったんですか!?」
日比野が周りを見る。
黒川「なんだその反応、おい、誰も言ってなかったのか」
全員目をそらす。
黒川「まぁ、いいや。とりあえず日比野」
日比野「はい!」
黒川「声でけぇな。まぁまだ1ヶ月で何が何だかわからんかもしれん。これからお前も自分の話数を持ったらもっと大変だし、もっとわけのわからんことにたくさん出会うだろう。そん時は遠慮なく本山や、堀田達先輩を頼れ。アニメ制作はチームワークだ。俺たち制作だけじゃなくて監督から原画、動画、仕上げ、色彩、美術に音響、撮影、編集と多くの人たちが関わって1本が出来てる。その人たちの作業を円滑に進められるようにするのが目標であり、俺たちの仕事だ」
日比野だけでなく制作達が黒川を真っ直ぐに見据える。
黒川「さぁ、1本納品したがまだまだ続くし、伏見班の作品も控えてるしOVAもあるしな」
一同「え!?OVA!?」
どよめく一同。
黒川「明日からも頑張ろう!」
気にせず進める黒川。
一同「ちょちょちょちょちょっと」
堀田「プロデューサー、OVAってなんすか。聞いてないすよ」
堀田が立ち上がる。
黒川「あ、言ってなかったっけ。夏にOVAの話が社長から来たんだよ。よろしく」
堀田「えぇ!?」
黒川「まぁいいから、あとで話すから」
堀田「…わかりました」
堀田が座る。
黒川「じゃ、みんなグラス持ってるかな?かんぱーい!」
一同「かんぱーい!」
しばらく飲み会が続く。
藤丘たちに囲まれて日比野がいじられている。
堀田の横に本山が座っている。
堀田「お前、貸しな」
本山「え?」
堀田「貸しにしといてやる」
本山「何か借りてましたっけ」
堀田「いいから飲め」
堀田がお猪口に酒を注ぎ、渡す。
本山「いや、自転車ですから」
堀田「うるさい、上司の酒が飲めねぇってのか」
ヘッドロックをかけてくる堀田。
本山「うわ、酒臭ぇ」
○ 居酒屋・トイレ
日比野が手を洗っている。
本山が入ってくる。
日比野「あ」
本山「なんだよ」
本山が用を足す。
日比野「お疲れ様です」
本山「お疲れ」
日比野が出ていこうとする。
本山「原版対応ありがとうな。助かったわ」
日比野が立ち止まる。
日比野「いえ、すみませんでした。迷惑ばかりかけて」
用を足し終えた本山が横に並び、手を洗う。
本山「あのさ、一言だけ。自分の話数持つまでの辛抱だから。何やってんだろと思うかもしんないけど、まだ何もやってないからあんま気にすんな」
日比野「…」
本山「ま、何が言いたいかっていうと。お疲れ、明日からもよろしく。そんだけ」
本山が手を拭いて出ていく。
○ 牛丼屋
深夜。
新歓が終わったあと。
本山を挟む形で箕浦と高瀬が座っている。
本山は冷や奴を食べている。
高瀬「新人1ヶ月もったんだって?」
本山「あぁ、さっきまで新歓やってた」
箕浦「じゃあ、あとは1本回してどうかってとこかしら」
高瀬「うちの新人は半分辞めたなぁ」
本山「何人中?」
高瀬「10人中5人」
本山「へぇへぇ、大手はやっぱり入ってくる数が違いますねぇ。所詮、うちは三プロ(さんぷろ)ですよ」
箕浦「まぁまぁ。とりあえず納品お疲れ」
高瀬「おつかれー」
本山「ありがと。でもまぁ今回でよくわかったけど、俺は人に何か教えるの向いてないわ」
高瀬「そうかね」
本山「口下手だからね。素直に褒めらんないし」
箕浦「確かに褒めるのって難しいよね。私も先輩に褒められた記憶ほとんどないわね」
高瀬「制作って出来て当たり前で、ミスした時はすごい突き上げ食らうし」
本山「俺たちだって頑張ってるんだけどなぁ」
箕浦「ま、所詮は裏方ね」
高瀬「だねぇ」
本山「俺たちなりに頑張るしかないかぁ。次の担当話数は良くするぞって…毎回、そう思ってやってんだけどね」
高瀬「右に同じ」
箕浦「同感」
一同、笑う。
夜が更けていく。
○ みたかプロ・外観
昼間。
新歓の数日後。
雨が降っている。
○ みたかプロ・第2会議室
昼間。
スタッフの顔合わせ。
黒川、伏見、藤丘、白石、色彩設計、美術監督、撮影監督、プロップデザインなどの制作やメインスタッフが席についている。
扉が開いて、宮沢が入ってくる。
伏見達が立ち上がる。
宮沢「いやぁ、すみません。急に雨なんて降ってくるもんだから濡れちゃいましたよ」
宮沢の髪や肩が濡れている。
宮沢が自分の席の位置についたのを確認する伏見。
伏見「ご紹介します、今回『マジョスパ!~魔法少女温泉街~』のキャラクターデザインを務めていただく宮沢さんです」
伏見が宮沢を見る。
宮沢が頷く。
宮沢「宜しくお願いします。宮沢です」
宮沢が微笑む。
おわり