ルビーウィッシュを探して
いつか、どこかで紡いだ物語。
そのろく。
夜という時間は癒しであり、また再生の時間だと思っている。
暗闇の中で布団を被り、ただずっと考えごとをするのもいい。
遠くに聞こえる車の音や、切なげな犬猫の鳴き声もまた情緒があっていい。
闇と静寂が支配するこの夜に、だんだんと溶け込んでいく。その感覚が何とも言えず、快い。
疲れきったこの身体も、磨り減ったこの心も、夜は癒してくれる。
そして気持ちのいいまどろみの後に、夢という映画を見せてくれる。その映画のほとんどは印象にも残らないような物語だが、時として大きな感動や興奮、強烈なスリル、探究心を刺激するような奥深い謎を与えてくれたりする。
しかし映画がちゃんと結末まで上映されることは少ない。大抵は映画を見ている途中で、否応なく席を立たなければならない。夢から覚める時である。
結末を見届けられないのは残念だが、むしろ結末がないからこその美しさというのもあるのかもしれない。
さあ、それはさて置き、今日はどのような物語が展開するのだろうか。
明かりを消し、布団を被り、目を閉じて、いざ眠りに就かんとしたその時、電話の音がじゃんじゃん鳴り響いた。
こんな時間に、誰なのだろう。せっかくこれから夜を楽しもうと思っていたのに。常識が欠けているにもほどがあるのではないか。
私は頭の中で愚痴を呟きながら、渋々布団から出て、乱暴に受話器を手に取った。
「あ、もしもし、僕だ。こんな時間にすまないね。いや、本当にごめんよ。ちょっと急で問題があってね」
電話の相手は、見回りの仕事をしている知り合いの男性だった。
落ち着かない様子で話された内容をまとめると、見回りの途中で困ったことがあって、その解決に私が必要なのだという。とにかく今すぐ私に来て欲しいそうだ。具体的なことは何も言わなかったし、釈然としないが、仕方なく私はコートを羽織り、家を出た。
知り合いの男性に教えられた場所に来ると「おおい、こっちだよ」と声がした。
男性が大きく手を振っている。
走り寄ると、男性の隣に誰かがいるのに気づいた。私よりも十歳くらいは年下であろう、小柄な女の子だった。何やら泣き喚いている。
「この辺を見回っているとね、この子を見つけたんだ。迷子みたいだけど、名前も住所も言わないし、警察も仕事をしたくないのか、取り合ってくれない。適当にどうにかしておいて、とか言われてさ、まったく、わけがわからないよ。ただ、この子は時々君の名前を呼ぶんだよ。ってことは知り合い、だよね?」
男性がそう説明し、私は女の子に目を向けた。
知らない子だった。どこかで会ったのだろうか。
女の子は私のことを知っているらしく、男性によると、これでも私の姿を見てから少しだけ落ち着いたのだという。そうとなれば、無視はできない。
これは面倒なことになったな、と思いつつも、私はできるだけ優しく女の子に事情を訊くことにした。
「ルビーウィッシュが見つからないよう」
女の子は泣きながらそう答えた。
私は耳慣れない言葉に首を傾げ、女の子にその意味を尋ねた。
「ルビーウィッシュはルビーウィッシュだよう。あれがないと眠れないんだよう」
ルビーということは宝石なのか、と訊くと、女の子は首を振って否定した。
「わかんないよう。どうしよう、なくしちゃったよう。大事なものなのにい」
要領を得ない女の子の答えに戸惑い、男性に意見を求めた。
しかし男性は肩をすくめた。
「さあ、僕は見たことも聞いたこともないから、知らない。とにかく、なくしちゃったみたいだから、そのルビー何とかってやつを探してあげてよ。うるさくってかなわないんだ、こんな夜中に。きっと苦情が来るよ」
男性と話している間にも、女の子は相変わらずルビーウィッシュという言葉を呪文か何かのように唱え続けていた。
私は頭を抱え、ため息をついた。どうやら、今夜は眠れそうにない。
とにかく、名称からして何らかの商品なのだろう。
ルビーとついているから、アクセサリあたりが順当だろうか。もしかしたら女児向けの玩具の名前なのかもしれない。それなら街に出れば売っているはずだ。
私は女の子に、ルビーウィッシュを買いに行くことを提案した。
「早く、早く行こう」
女の子の表情がぱっと華やいだ。その単純さが何だか恨めしい。
少し待って欲しいと言い置き、私は一度家に戻って出かける支度をした。
街へ出るのにふさわしそうな格好に着替え、使い古したリュックを背負い、慌しく家を出た。
女の子を少しでも待たせるのは危険だ。そういう直感があった。
私は先ほどの場所に向かって女の子の手を取り、そのまま男性と別れた。
「君も大変だねえ」
男性は苦笑いを浮かべ、他人事のように言った。
それから、私たちは街へと向かうバスに乗った。
女の子は興奮していた。バスに揺られながら私はひたすら、女の子をなだめすかしていた。
しばらくしてようやく女の子も落ち着いてきて、普通に言葉を交わせるようにはなった。
ただ、ルビーウィッシュがどんなものなのかは、さっぱりわからなかった。暇を見て携帯電話のインターネット機能で調べてみたが、それらしいものは見つからない。女の子自身もルビーウィッシュが何なのかよくわかっていないようだった。
私はどうしようもない不安と苛立ちを覚えたが、なるべくそれを女の子に悟られないよう努力した。
それにしても、そのルビーウィッシュはいったい幾らするものなのだろうか。宝石だとしたらきっと値が張るのだろう。手持ちがあまりない身としては少々不安である。
駄目もとで女の子に訊いてみると、女の子はおずおずとした様子で、クレジットカードを差し出してきた。
使っていいのか、と訊くと、女の子はこく、と頷いた。
「お金ならたくさん、あるから。うらやましい? ルビーウィッシュさえあれば、いいの。他には、何も」
女の子は顔を俯けた。
何だか、さっきよりも女の子が小さく感じる。もともと小柄ではあったが、落ち込んでいるせいか余計に縮んでしまったように見えるのだ。頼りなくて、心配だ。放ってはおけない。これは何としてでも、ルビーウィッシュとやらを探してやらなければならないと思った。
四十分かかってようやく街に着き、すぐに「探し物は何でも見つかる」と謳われる二四時間営業の超大型ショッピングモールに入った。
まずはジュエリーショップへと向かった。
ルビーウィッシュを探してみるが、ショーケースには並んでいなかったので、店員に直接取り扱っているか訊いてみた。しかし「当店ではそのような商品は取り扱っておりません。ルビーならございますが」との返答だった。
女の子によると、ルビーはまたルビーウィッシュとは違うものらしく「代わりになんかならない」ということだった。
それからジュエリーショップを全て回り、ついでに女の子向けの玩具店や、その他の様々な店にも足を運んだが、結局どの店に行ってもルビーウィッシュという商品は見つからなかった。
女の子はもう憔悴しきっていて、しかも今にも泣き出しそうだった。
私たちはとりあえずモール内の噴水広場で少し休憩することにした。
そこで必死に女の子をなだめすかしていると、どこからか緑色のオウムが飛んできて、噴水の水の出ていない部分に止まった。
これ幸いと私はオウムを指差し、オウムが飛んできたよ、かわいいね、と女の子に明るく声をかけた。
しかし女の子は、オウムを一瞥した後、顔を背け、私に抱きついてきた。
「あたし、あいつのこと、嫌い。何でって……だって、あいつ、あたしのこと嫌いだから」
その時、オウムが甲高い声で鳴いた。
「オマエナンカキライダ、オマエナンカキライダ」
「……ほら」
なるほど、世の中にはオウムに変な言葉を覚えさせる人がいるものだ。どういう意図があるのだろう。
「あいつ、いつもあたしを見張ってる。あたしが何かやろうとすると、いつもああやってなじってくる。オウムのくせに」
「オマエナンカキライダ、オマエナンカキライダ」
オウムはもう一度甲高い声で鳴くと、ばさばさと大きな羽音を立てて飛び立っていった。
ここではもう収穫が見込めないだろうと判断した。
しかしここまで来てしまった以上、そう簡単に諦めるわけにはいかない。
確かこの近くに、物知りな男がいるはずだ。もうずいぶん会っていないが、彼に当たってみよう。
私はとりあえずクレジットカードを女の子に返し、知り合いにルビーウィッシュについて訊いてみるから待って、と説得した。
そして私たちは古臭さを感じさせる、クリーム色の洋館を訪れた。
かつて盛栄していた宗教の教会を、アパートに改装した建物だと聞いている。
目的の男がいる部屋のベルを鳴らすと、彼はすぐに扉を開き、現れた。
「ああ、嬉しい限りではないかね。こんな時間に来てくれるなどとは……あれ、その子は?」
まるでどこかの貴族のような口調で男は言った。
私はこの女の子のことや、ルビーウィッシュのことについて、今までのいきさつを簡潔に彼に説明した。
しかし彼は、心ここに在らずといった様子で、女の子をじっと見つめていた。
彼の視線が怖いのだろうか、女の子はすうっと私の背後に隠れてしまった。
「ああ、すまないね。いや、誰かの若い頃に似ているなと思ったのだよ。思わず、その人との馴れ初めを思い出していた」
そうなのだろうか。私は女の子を見たが、誰かの若い頃と似ているかどうかまではわからなかった。
「ふふ……なるほど、話はわかった。しかし残念ながら、そのルビーウィッシュが何なのかまでは、私にはわからないのだよ。いや、そもそも、私は思うのだが、それはどこかに売っているものなのだろうかね……」
男は首を傾げ、右手を顎に添え、何かを考え始めた。
「久しぶりに下りてみるかね。入りたまえ。わからないのならば、それがわかる場所に行けばいい」
彼はそう言って、私たちを扉の中へと誘った。
するとすぐそこに、地下へと続く螺旋階段が現れた。
他には何もない。
「さあ、下りよう」
男は螺旋階段を下り始め、私たちも彼の後に続いた。
長い長い階段だった。照明で照らされてはいるものの、やはり螺旋階段しかない風景というのは何だか心細いし、目が回りそうで気持ちが悪かった。
どこまで下りるのだろうと不安になり始めたころに、ようやく下りきった。
そして目の前に大きな扉が現れ、男はその扉をゆっくりと開いた。
眩しさとともにまず目に入ってきたのは、透き通るような空の青さと、木々や草花といった緑が一面に広がる光景だった。
「自然が多いだろう。ああ、あの空はつくりものだよ、綺麗ではあるがね。ここは地下でありながら、超高層ビルの屋上、という設定で設計されているのだよ。ちなみにここ、地上が昼の場合は夜に、夜の場合は昼になる。昼夜逆転ということだよ。どうしてそうなっているか? さあ、私には、何とも」
彼はそのまま歩き出し、私たちも続いて歩き出した。
「ねえ、ねえ……ルビーウィッシュはまだ?」
ぐいぐい、と女の子に服の袖を引っ張られた。
振り向くと、女の子は眠そうな顔をして私を見上げていた。
「もう眠い……」
女の子の声はしわがれ、目の下には隈ができていた。
もう少しでルビーウィッシュがどこにあるかわかるかもしれない、眠いのなら眠っていてもいい、と答えると、女の子は小さく頷いた。
そしてすぐに、とん、と私に寄りかかってきた。
声をかけても、もう曖昧な返事しか返ってこない。そのうち女の子の全体重がかかってくるようになり、寝息まで聞こえてきた。
どうやら眠ってしまったらしい。
女の子の顔を見ると、本当に安らかな顔をして眠っていた。
いい寝顔だ。出会った時はルビーウィッシュがないと眠れないとあれだけ叫んでいたのに、ちゃんとこうして眠れているではないか。きっと疲れもあるだろうし、もうすぐルビーウィッシュにありつけるという安心もあるのだろう。
それにしても、気のせいだろうか、女の子から懐かしいにおいがする。
もう少しそのにおいを嗅いでいたくて、私は女の子の細い首筋に鼻をつけた。
それから私は、女の子を背負って歩くことにした。
女の子はとても軽かった。まるで中身が空っぽのランドセルを背負っているみたいだった。いや、さすがにそれは言い過ぎだろうか。とにかく不自然なくらいに軽く、ちゃんと背中にいるか確かめるために、何度か振り返ることもあった。
女の子はちゃんと私の背中で眠っている。
しばらく歩くと、目の前に丸い形をした建造物が現れた。
どこか懐かしい感じがする。
よく見るとそれは、さらなる地下へと続く一台のエレベーターであった。
「このエレベーターに乗れば、君たちが探しているルビーウィッシュが何なのか、それがわかる場所に着くだろう。私が物知りたる所以、それがある場所だよ。ああ、そこに行く前に、利用申請のサインをしてほしい」
男は赤い表紙のノートと、鉛筆を差し出してきた。私はそれを受け取り、自身の名前を書いた。
すると、眠っていたはずの女の子がノートを覗き込んできて、ぽつりと言った。
「これ、あたしの名前」
私は自分の耳を疑った。ノートに書いたのは、紛れもなく私自身の名前だった。何も間違ってはいない。
戸惑っていると、今度は男までノートを覗き込んできた。
「これは私の名前でもあるではないか。いやはや、三人の名前が重なるとは、珍しいこともあるものだね……ああ、そうか、もしかして――」
彼はそれ以上何も言わず、私からすっとノートを取り上げた。何かに気づいたようだが、一人で勝手に納得している。
もしかしての続きは、と促すと、彼は首を横に振った。
「まあ、行きたまえ。答えは君自身が得るべきだろう。いや、もう得ているのかもしれないがね……」
男は意味深にそう言いながら、背中を押すようにして私たちをエレベーターに乗せた。間もなくエレベーターの扉が閉じ、ぐい、と下り始める。
男は下りていく私たちを、ただ微笑みを浮かべて見送っていた。
エレベーターの中はしばらく暗闇だったが、やがて明るくなった。
安らかな自然の光景が広がっていく。エレベーターはガラス張りなので、外の様子がよく見える。
今、眼下には広大な青い湖があって、その真ん中には白っぽい建造物が浮かんでいる。まるで青い空に浮かぶ雲のようだ。
あれが例の、ルビーウィッシュが何なのかわかる場所なのだろうか。
背中にいる女の子に、ほら、もうすぐだよ、と明るく声をかけた。
しかし女の子からの返事はなく、ただ安らかな寝息だけが聞こえる。また眠ってしまったらしい。
――私は何をしているのだろう。ルビーウィッシュという得体の知れないものを追いかけて、私はどこまで行くのだろう――ふと、そんなことを考えた。
それから五分か十分ほど経って、ようやくエレベーターは止まった。
ゆっくりと扉が開くと、湖の中から一本道が浮かび上がってきた。その先にエレベーターから見下ろしていた白っぽい建造物が続いている。
ここが最終地点なのだろうか。
私は意を決して足を踏み出し、その建造物の入り口まで歩いた。
どこかの偉い芸術家がデザインしたのではないかというくらい、その建造物は不思議な形をしていた。
そしてどういうわけか、地上の建造物よりもずっと大きく感じられた。
そのまま入口から中に入ってみたが、複雑な構造をしていて、どこに何があるのかさっぱりだ。
ここからどう動けばいいのだろうか。
ルビーウィッシュが何なのかわかるというから来たのに、どうやって調べればいいのかがわからない。
とりあえず人のいる場所を探そうと思い、しばらく歩き回ってみた。
何というか、次第にどこか懐かしいものを感じるようになってきた。以前にもここに来たことがあるような、そんな気がする。
それをより強く感じる方向へと、歩を進めていった。
やがて、中庭のような場所に出た。
緑があふれ、たくさんの洗濯物も干されている。
その一角に白い小屋が見えたので、そこに入ってみることにした。
少し高い位置にある取っ手を回し、扉を開く。
そして眼前に現れたのは、四畳半ほどの小さな部屋だった。真ん中には細長い机が一つだけ置いてあり、その周りを六人ほどの子どもたちが囲んでいる。私が背負っている女の子と同じくらいの年齢だろうか。床には何か意味があるのか人工芝が敷かれている。また入口を除く三方の壁は本棚と化しており、大小様々な本がぎっしりと詰め込まれている。
不思議な部屋だ。
机を囲んでいる子どもたちが一斉に私たちに目を向けてきて、私はたじろいだ。
部屋を間違えたのかもしれない。
入るか去るか、その前に靴を脱ぐべきか脱がざるべきかで躊躇していると、背後から「どうぞ、そのままお入りください」と女性の声がした。
振り向くと、大柄な年配の女性が私たちを見下ろしていた。
私は半ば背中を押されるようにして、その部屋に足を踏み入れ、そのまま机の前に座った。
子どもたちが余所者を警戒するような、あるいは何かを確かめるような目で、無言でじろりと見つめてくる。
私はそれをできるだけ無視して、背負っていた女の子をそっと私の隣に座らせた。起こすべきかどうか迷ったが、気持ちよさそうに眠っているのを見ると気が進まなかった。
それにしても心なしか、女の子が大きくなったような気がする。
そして大柄な年配の女性が、私の向かい側に座った。
「さて……何かを得るために、わざわざここへ来たのでしょう。それで、その何かは得られましたか?」
彼女の問いに、私は首を横に振った。
「では何を得るために、ここへ?」
そこで私は、隣で眠っている女の子のことや、ルビーウィッシュのことについて、今までのいきさつを詳細に彼女に説明した。
その間、彼女は目を細めてじっと聞き入っていた。
「ルビーウィッシュ……それをあなたたちは探しているのですね。でも、それが何なのかわからない。ですが、お話を聞く限り……あなたはそれが何なのか、その答えをもう得ているのではないですか?」
彼女のその言葉に、私は虚をつかれた。
どういうことだろうか。
戸惑っていると、彼女は優しく微笑み、諭すような口調で言った。
「言葉にしなければ、納得できませんか? ルビーウィッシュはその形や名前は違えども、最初から誰もが持っているものです。でも売り物ではなく、もっと単純で、かつ複雑なものなのです。もうわかりますね? その子がなくしてしまったもの、あなたが探し求めているもの、それは、つまり――」
ふと、目が覚めた。
それより少し遅れて、目覚まし時計が鳴った。
夜の終わりを告げる音だ。わずらわしい音。
そんなものは無視していたいが、そういうわけにもいかない。
今日は法事があるので、このままずっと寝てはいられないのだ。
それにしても、今日はまた随分と変わった内容の夢を見た気がする。惜しむらくは、今となってはそれをもはや完全には思い出せないということであるが。
ただ、ルビーウィッシュという名前だけは印象が濃くて、ちゃんと覚えている。
最後の最後、その正体がわかるところで目が覚めてしまったが、結局あれは何だったのだろうか。
私は布団から身を起こし、顔を洗いに洗面台に向かおうとした。
その時、布団の横に置いてある机に何となく違和感を覚え、立ち止まった。
机の上には赤い表紙のノートと、鉛筆が転がっていた。
私はノートを手に取り、開いた。
ノートにはただ一文のみが記されていて、それを読んだ直後、私は息を呑んだ。
ルビーウィッシュの正体は、
さて、ルビーウィッシュとは何だったのでしょうか。
新しい物語のために、過去の小説を晒していこうのコーナー第六弾。
テーマは、たぶん「夜」だったと思う。
自分でも何でこんなふうになったんだろうなと不思議な作品。「ルビーウィッシュ」は、実際にわたしが見た夢に出てきた言葉で、わたしもその正体を知りません。
この作品を「小説家になろう」にアップロードするとき、12/27の7:00に予約投稿するつもりだったのだけれど、この後書きの途中に寝落ちして、妙な夢を見て、そこから覚めた寝ぼけ眼で、予約日時を設定せずに投稿してしまった……という経緯があります。時間は三時半ごろだったかな。夜明け前だし、ちょうどこの物語と地続きになっているみたいで、ちょっとおもしろかった。