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第32話『Confess the truth of the incident』真相の告白

Eternal(エターナル) Boy's(ボーイズ) Life(ライフ)』のメンバーが "バックスクリーン映像鑑賞会" で盛り上がる中、裕貴(ユウキ)は1人抜け出して合宿所へ向かう。


その合宿所では、女子4人が身支度(メイクアップ)を終え、裕貴と待ち合わせしている『パブリックスペース』に居た。

着く早々、翼は持ってきた袋をガサガサと(あさ)り出す。


「それ……全部?」


葉月が(たず)ねると、翼は笑顔で答えた。

「ああ、お菓子? 食べれるでしょ?」


「さすが姉さん、いつもの(ごと)く “ダベり” の準備は万端(ばんたん)ね!」


「まあね! じゃあ、飲み物は……またいつものジャンケンで!」


「え? ジャンケン?」


「そう! ジャンケンで勝った人が、全員分を払うことになってるの」


「勝った人? 負けた人じゃなくて? どういうシステム……?」


「じゃあみんな、いくよ! ジャンケン.ホイ!」


葉月と梨沙子が負けた。

「あーあ、めっちゃおごりたかったのに。残念やわ」


「……え? そういうノリ?」


「うん! そういうノリ」


最終的に翼が勝った。

「やったー、払いたかったー、幸せ!」


「姉さん、めっちゃ棒読(ぼうよ)みですやん!」


「あーあ、私が払いたかったのに、負けちゃうなんて残念! 姉さん、ゴチになります!」

奈々がそう言ってベロを出す。


飲み物を買うだけでもこんなに盛り上がるなんて、本当に楽しい人達だなと思いながら、葉月はずっと笑っていた。


奈々が翼からお金をぶん取って、自販機の前にいく。


「姉さんとあたしはブラックかな。梨沙子も葉月も、はい選んでね。ユウキは……コーラでいいか」


「あはは、やっぱりコーラなんだ」


葉月が笑うと翼が寄ってきて言った。

「そうよ、どうして?」


「昼間に立ち寄ったサービスエリアでも、 “コーラ買ってきて!”って言ってたから」


「ユウキっちゅうたらコーラのイメージやな」


「ま、さすがに1年ぶりだしさ、少しはオトナになって嗜好(しこう)も変わってるかもって思ったけど……やっぱり成長ナシか!」


みんなで笑った。


「よし準備は出来た! じゃあ葉月、私たちを信頼して、さぁ話して!」


「え……」


「そうそう! ねえ、リュウジさんとどういう関係なの?」


   ここへ来てからそれを聞かれるのは2回目だなぁ

   ただし、その1回目は、 “タカヨシさん” 演じる “キラ” だったわけだけれど……


「その話、ボクにも聞かせてもらえる?」

開いたドアに腕をかけた裕貴が、少し気だるげに立っている。


「あ」


「 “コーラ大好き、成長ナシ男” 大浜裕貴! 只今(ただいま)参上致しました!」


「やだ、聞いてたの?」


裕貴はフッと息を吐いて、テーブルに向かって歩いてきた。

「あんな大きな声で話してたら廊下まで丸聞こえだぞ! 気を付けないと」


裕貴は皆の顔を見回した。

「久しぶり」


そして最後に、チラッと葉月の顔を見た。

「元気そうじゃん」


「うん」


葉月はみんなの顔を見た。

みんなも笑顔で返す。


裕貴はコーラが置かれた席に座る。

「みなさん、おかわりなく?」


「まあね、ユウキも変わってないじゃん」


「あのさ、それってオトコにとっては()め言葉になってないんだけど」


「ま、とくにユウキにはそうかもしれんなぁ?」


「初っぱなから毒吐くなぁ。ま、やり(やす)くていいや。ところでさ、今夜は葉月の歓迎会? それとも事情聴取(じじょうちょうしゅ)?」


葉月は思いがけない言葉に慌てる。

「ちょっと! ユウキ、なに言ってんのよ!」


「いいね! 歓迎会 兼 事情聴取にしようか? リュウジさんについて……」


「ちょっと……なんか怖いんだけど」

助けを求めるように裕貴を見る。


「実はボクも聞きたいと思ってたんだよね。なんか店の常連ってだけじゃなくて、けっこうプライベートを共にしてるような話もしてたしなぁ……」

裕貴はニャっと笑った。


   裏切りモノめ!


そう思いながら、腹をくくる。

こうなったら一切合切、話すしかない!


乾杯で、トークショーはスタートした。


「リュウジさんのお店は有名なジャズの老舗(しにせ)店でね、音楽がわからない私でも名前は知っているくらい。でも敷居(しきい)が高くて、足を踏み入れるなんてとんでもない、みたいな感じだったんだけど……」


みんなが食い入るように聞いている。

葉月は、あの花火大会から、BAR『Blue Stone』に行くことになった経緯(いきさつ)を話した。


「待って! 葉月、今の話聞くとさぁ、葉月はその "リュウジさんの親友" っていう人に会いたくて、夜な夜なそのバーに通ってたってことになるけど?」


「まあ……最初はそんな感じ」


「えっ? それはさすがにボクも知らなかったなぁ」


みんなが不思議な顔をした。


「リュウジさんじゃなくて?」


「そんな風に聞かれると、よくわかんない……リュウジさんはそのお店で初めて会った人で、なんせ私にとっては、ジャズなんて初めての世界だったし。でもリュウジさんのお陰で色々な音楽にも興味をもって、それで毎日のように行くようになったから……」


「うーん、なんかぼんやりしてんなぁ。ほんなら聞くけど、"その親友" ってリュウジさんを差し置いても興味が湧くほど、エエ男なん?」


「そう! そこ、気になるよね。写真とか持ってないの?」


「写真? 写真なんて、誰の写真も持ってないよ」


「リュウジさんと店で撮ったりとかも?」


「ないない」


3人が口を揃えて言う。

「もったいなーい!」


「え? そう?」

葉月がそう言うと、みんなは大きく頷いた。


「そりゃそうでしょう! あんなにカッコいいのよ! 背も高いしイケメンだしそれに紳士的だし!」


「私もあのモデルばりのスタイルが好き!  トーマさんに負けてないよね!」


裕貴がそっと葉月に言った。

「ほらね? リュウジさんもめちゃめちゃ人気あるだろ?」


「ホントだ」


「いいなあ葉月は。リュウジさんとずっと同じ車に乗って来たんでしょ?」


裕貴が嫌な顔をして言った。

「あのね! ボクが運転してきたんだけど?」


「やだユウキ、またねてる。私たちユウキのことだって好きよ。だって可愛いもんね」


「あー! もうそれ、ホントむかつく!」


葉月は大笑いした。


   みんなは知らないんだ。

   リュウジさんは意外と皮肉屋で、私のことからかってばかりなんだから。

   でもみんなの夢は(こわ)しちゃいけないので、内緒にしておいてあげよう……



「怪しい話はそれだけじゃないぞ。今朝の会話! ボクを差し置いて、買い物した服がどうのって、やたら盛り上がってたよな?」


「あ、そうそう! それさっき食堂で出たワードなのよ! 葉月、聞かせなさい!」


葉月は、隆二本人からショッピングに誘われ、ランチをご馳走(ちそう)になり、スティックケースをプレゼントして、お互いの服を選び合った経緯も話した。


「ウソ、信じられない! リュウジさんとのトークだけでも羨ましいのに! もうそれってさ、立派なデートじゃん!」


「デ、デート? 違う違う!」


「あーあ、さすがにそこまでコアだと、ボクも(かば)ってはやれないなぁ」

裕貴は頭後ろで腕を組んでくうを仰いでいる。


「あれあれ? なんかユウキ、また拗ねてない?」


「わ! ホンマや! その顔、もしかしてジェラシーちゃうか?」


「は? なんでボクがとばっちり食らうんだよ!」


「だって怪しいやん? なんかムキになってへん?」


「あーもう面倒くさいな。葉月、もうさっさと、あらいざらい自白(じはく)してくれよ」


「話すも何も……それで全部だから。リュウジさんとは」


「ん? なになに? じゃあさ、"その親友" とは?」


「結局会えたんか?」


「うん、何日か前に。お店に行ったら先に来てて………」


「なんだ! それを先に言ってよ! じゃあ、さっそく付き合うとか?」


「ううん、ここのフェスから戻ったら、その人の会社のギャラリーでバイトする約束になってるの」


「は? なにそれ?」


「葉月、大丈夫?」


「え? どうして?」


「ひょっとしてこの子、イイオトコを目の前にしても、なんにも感じないとか?」


「なんにもって……?」


「マジで? 生身(なまみ)のリュウジさんだよ! めちゃめちゃ魅力的じゃん」


「……うん」


「もぉ、立ってるだけで絵になるし。だけどドラム叩く姿は、これまたホントに素敵なんだから!」


「そう! 去年なんか、めっちゃワイルドやったやん?」


「そうそうそう! ホント、忘れられないよね……ステージ終わった後、最後のフィルが終わった後に、バッてTシャツを脱いで半裸になったあの体……忘れられない」


みんながため息をついたと同時に、裕貴が白けた調子で口を挟む。

「ほんと女子トークって、時にエグいよな? それってエロの骨頂だぞ」


「別に見てるだけだから、いいじゃないよね!」


「ホンマに胸板なんて、すごいねんから!」


「あの、胸から伸びる両腕の筋肉も! ほんと素敵だった……」


「ねえねえ、ちょっとこの子……」

奈々が、梨沙子と翼の肩をたたいた。


「葉月? 葉月、どうしたの? やだ! なんか、耳まで真っ赤よ」


裕貴が面倒くさそうに言った。

「リュウジさんいわく、なんか葉月は シャイなんだってさ。ボクも何度か葉月をからかってリュウジさんに怒られたんだけど」


「え? まさか恥ずかしいとか? この程度の話で?」


「やだ、葉月もしかして……まさか? ()()()()()()が……」


裕貴が両手を振って話を止める。

「おいおい! 一応ボクがいる前で、そういう女子トーク、やめてくんないかな!」


「あ、ごめんごめん、そんなわけないか?」


「彼氏いるって言ってたよな。そうだろ葉月?」


「そうなの? じゃあそんなに恥ずかしがらなくても」


そんな葉月の様子を見て、裕貴が更に畳み掛ける。

「結局さぁ、それでなんか顔を赤くするってことは、想像してるって事だろう? 多分葉月が一番エロいんじゃないのか?」


「ユウキ! なんてこと……」

葉月が更に真っ赤になった。


女子達が笑い出す。


「いいじゃない葉月、ここに来たら色んなこと楽しまなきゃ! いい男がいっぱいいるんだからね。目の保養 目の保養! ああ、ユウキだって、いい男よ!」


「もう “ついで” は結構!」 


「この子、まだあまり目覚めてないみたいだから、色々レクチャーしてあげなきゃね」


「は? 無理だろ、葉月には」


「確かに、ここは刺激強いよ! 葉月、覚悟しな!」


「なんか怖い……」


裕貴はお手上げと言わんばかりに、ひょいと両手をあげる。

「いろいろ相談に乗ったるから、お姉さんに何でも話してみィ!」


「なんでよ、梨沙子は私と同い年じゃない?」


「あはは、そうやったわ」


「だけどね、梨沙子はあなどれないよ!」

翼が意味深な顔をする。


「どうして?」


「さっき見たでしょ? バンドボーイズ相手に悩殺(のうさつ)シーン。恋愛経験がこの3人のうちで一番多いのよ、梨沙子様は」


「そうなの?」

裕貴がゾッとしたような顔をする。


「うわ、女子トーク、マジで怖くなってきたわ! 酒も入ってないのにこの感じか! ボク、そろそろ帰ろうかな」


「えー、そんな淋しいこと言わないでよ」


「そうそう、夜はまだ長いんだから」


両サイドから腕を掴まれて、裕貴はますますたじろぐ。

「うわ、これってホラー映画だと、ゾンビに騙されて残ったヤツは喰われるってパターンだよな」


「こら! 誰がゾンビやねん!」


梨沙子の勢いに、ますます縮み上がる。

「ほら葉月! 映画はフィクションだけどここはリアルだから、マジ気を付けろよ!」


「なに言うてんねん、喰い殺すんはアンタだけや!」


「うわーっ!」


裕貴の大袈裟(おおげさ)なリアクションに、みんなお腹を抱えて笑った。


「恋愛マイスターが壊れたら究極のゾンビに変身って……もう! 梨沙子やめてよ。お腹痛い! あははは」


楽しい夜は続く。



第32話『Confess the truth of the incident』真相の告白 ー終ー


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