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第178話『Future vision』未来への展望

葉月はしばらくかれんの家に滞在し、昼間はズームで美波(みなみ)の指示を仰ぎながら琉佳(ルカ)と連携して仕事を進めていた。

今日も『東雲(しののめ)コーポレーション』のイベントに出掛けていた由夏とかれんが、夕刻に帰ってきた。


「今日のイベントは、たしかファッションイベントだったよね? どうだった?」


かれんが興奮気味に話す。

「今日は秋冬物のショーとそのスポンサーのブースが並んだイベントでね、思ったよりも沢山ゲストが詰めかけて、会場が狭かったかもって感じだったの。やっぱりファッションに興味のある人って多いのね。だったら今後はシーズンだけじゃなくて、ジャンルとかブランドとか細分化したイベントを打って、その都度テーマに見合ったスポンサーを募れば、どんどん世界が広がるかなって思う。同時に、今モデルが全部外注(がいちゅう)でしょ? だけど頻繁に開催するなら、自社モデルか、もしくは 契約事務所と提携するのが、人員確保とコストの両方においてプラスになると思うのよね」


「ほぉ! さすが()()()()()よね! もう将来のビジョンが見えてきたってわけ?」


「そうね、実際私たちが大学を卒業してすぐに起業するとしたら、もう準備を始めなきゃいけないのよね。キャリアは十分積んだし、パパ(東雲コーポレーション)の後押しも確約しているし、もはや手続きだけではあるんだけど、でもこの手続きに踏み切るまでに結構時間がかかったと思うわ。でもね、今日思ったの。もういける! って。由夏もそう思ったでしょ?」


「ええ、私も十分な手応えを感じたし、色々なアイデアも浮かんだわ。会場に来ているゲストの中にもスカウトしたくなるような素敵な人たちがいっぱいいてね、それなら読者モデルのもうワンランク上の素人モデルをスカウトして、私たちと同じような若い女の子たちにもっとファッションに関心を持ってもらったり、一体感をもって参加してもらうのもいいかなって」


「うわぁ! いいね!」


「あとね、もう1つ聞いた話があって」


「なに?」


「お昼ご飯の時にね、美術さんと一緒になったんだけど、 男の人がいっぱいいる中で1人女の人がいてね、その人がこの前行ったブライダルフェアの食事が美味しかったって話してるのを聞いて、興味が湧いたから詳しく聞いてみたのよ」


「へぇ、ブライダルフェアか……パートナーと参加したのね?」


「うん。幾つか行った中でもレストランウェディングが良かったって。ガーデンで人前式(じんぜんしき)のシミュレーションをして 、お料理の試食、それから生演奏とか、あとはかわいい飾り付けのディスプレイがたくさん展示されてて、とっても良かったって! ウェディングドレスの ショーもやってたらしいの」


「そうか、ブライダルね! ウェディングドレスのショーなら、私たちの仕事とつながるかもしれないわね」


「そうね。素敵な仕事よね? 人生の幸せの瞬間をプロデュース出来するなんて」


「たださ、カップルばっかりだから、見てて(うらやま)ましくなっちゃいそうだけどね?」


「あはは、たしかに!」


「それで? 葉月はどうだったの? 今日1日、退屈じゃなかった?」


「うん。美波(みなみ)さんっていい感じで鬼上司(オニじょうし)だから」


「あはは! いい感じの鬼上司ってなんなのよ?!」


「かなりハードに仕事を振ってくれるの。でもそれって私のことを信頼してくれて、必要としてくれてるってことでしょ? もちろん優しい言葉と(ねぎら)いをくれるから、ホントに()()()()()なの。あんな女性になれたらなぁって思うぐらい。憧れの人なの」


琉佳(ルカ)さんのお姉さんなのよね? そりゃ超絶美人でしょうね。会ってみたいわ」


「働く女性として、私たちの 目指す女性像に近いのかもしれない。ただね、ついていけないぐらい()()な人なの。ホントにカッコよくて」


「ふーん。そんな人が鴻上(こうがみ)さんの側近(そっきん)なのか……」

由夏はちょっと意味深な言い方をする。


「お家同士が仲が良くて幼馴染(おさななじ)みなんだって。だから琉佳さんも鴻上さんのことをお兄さんのように慕ってるの。まぁ、というよりはじゃれ合ってるって感じ? やり取りを聞いていたら、ホントに面白くて」


「それってリュウジさんとユウキみたいな?」


「そうそう! もしくはリュウジさんとキラさんみたいにね」


「なるほど。"トムとジェリー劇場" ってやつね?」


「ふふふ、そうなの」


「わぁー! それ全部、鑑賞したいわ! イケメンのパラダイスじゃない! 目の保養にもなるし、心の安定にもなるわね」


「ふふっ、めちゃめちゃ由夏らしい意見よね!」


「いや、さっきの話だけど、スカウトの目で会場を眺めてると、いい男だなーと思ったら大概(たいがい)誰かに似ててさ。リュウジさんだったり、トーマさんだったり」


「えっ! トーマさんに似てる人なんているの!」


「ちょっと葉月! 反応しすぎよ? リュウジさんにリークしちゃお!」


「やめてよ! 単に疑問に思っただけ。あんな並外れたスペックの人が、もう一人この世にいたら大変だなと思って……」


「うわ、()しへの愛が深い! 残念ながら、ちらっと見てそう思っただけよ。私から言わせると琉佳さんなんて本当に欲しい人材だけどね? 非のうちどころがないもん」


「まぁ……他の女性モデルを食いつくすっていうところだけが、ウイークポイント(難点)かな……」


「あ……たしかに」

3人は肩をすくめて笑う。


「琉佳さん、あんなタイプだけど、超絶クリエイティブな人なのよ。なんて言うのかな、頭の中で常に設計をしてるの。それも数字で」


「なるほど……女子の感情も数値化してたりしてね? 要注意人物ってユウキも言ってたな」


「え? ユウキが?」


「そうよ。葉月が日本酒でベロベロに酔っ払ってたあの日も、もしユウキの登場が遅れてたら葉月に何かあったかもって、そう言ってたわよ?」


「はぁ?! 何があるって言うの?! ないない!」


「そうやって危機感のない頭でいたら危ないよ? 今、葉月がこの家にカンヅメで仕事をしてるって事で、理解できてるわよね?」


「あ……まぁ……」


「まぁここしばらく葉月は ハードワークだったし、いっぺんにいろんな問題が起こったからね。しばらくゆっくりするといいわ。その間に私たちが新しく起業する会社のビジョンをどんどん作っていくから。だってね、私たちが会社を持つまであと1年半もないのよ? それまでに色々な準備をしなきゃいけないんだけど、でも私たちだって学生だからできることをちゃんと謳歌しておかないと! 3人が3人ともワーカホリック(仕事人間)になりそうなタイプなんだから、ちゃんと遊ぶ時は遊ばないとね?」


「ふふ。大賛成!」



葉月のスマートフォンが鳴った。

「あ……美波さんかな? 送った資料にまた注文つけられちゃいそう」


「あはは、美しき()()()か?」


「あれ?」


「どうしたの? 誰から?」


鴻上(こうがみ)さんだわ。 ちょっと出ていい?」


「もちろん」


葉月はスマートフォンを耳に当てた。

「お疲れ様です。今日は京都だって、美波さんから聞いてましたけど?」


「さっき帰ってきたところなんだ」


「え? こっちに? まだしばらく京都にいらっしゃるのかと……」


「とにかくさ、腹が減ってて」


「え?」


「君は親友のマンションにいるの?」


「ええ、今2人も帰ってきて 3人で話してたところなんです」


「なに? 俺の話?」


「いえ、鬼の話を……」


「は?」


「いえ、何でもありません。 『form Fireworks』での仕事の話をしてました。あとは私たちが起業する会社についての話なんかをね」


「そりゃあちょうどいい」


「え?」


「これから彼女らも一緒に食事をしないか? 実は紹介したいレストランがあってさ。ロケーションもいいし大きなガーデンがついた結構な敷地のあるレストランなんだけど、今後の集客をどうするかっていう相談を受けてさ。もしよかったら君らがイベントとして請け負ってくれたらなって思って」


「わぁ! それは嬉しいです。彼女らも喜ぶと思います」


「え、なになに」

由夏とかれんが耳を寄せる。


「鴻上さんが、これから食事に行かないかって? 紹介したいレストランがあってそこでイベントを打つのはどうかって提案してくれてるの」


「ええっ! そうなの! 是非是非!」


「じゃあ決まりだな! 30分後に迎えに行くから、またマンションの前に3人で降りてきて」


「はい、分かりました。ありがとうございます!」




3人はこぞってテラスから階段を上り、衣装部屋に向かう。

色とりどりの服やバッグを合わせる中で、葉月だけは自分で選ぶのではなく由夏とかれんが見立てた大人っぽいスーツ姿で階下に戻る。


「どうして私だけこんな感じ?」


「だって鴻上さんの好みでしょ? こういった秘書みたいなイイオンナ風のコスチュームが!」


()()()()()()じゃなくて()()()()()()になってるじゃない!」


「あはは。まぁ葉月は()()としても、今回もコスプレで行くっていうのが正解だと思うわよ?」


()()()()って言わないで!」


「あはは。じゃあ、いざ参りますか!」


「おう!」

3人は意気揚々と部屋を出た。




第178話『Future vision』 未来への展望- 終 -

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