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叱られ終わったティルラちゃんが来ました



 ハルトンさんの言葉に頷いて、ちょっとだけインチキをしている気分になりながらも、発案料を受け取る事を決める。

 断るとハルトンさんも困ってしまいそうだし。

 そうして、発案料に関してハルトンさんから教えてもらった。


 商品開発の段階ではまだ発案料は発生しないが、商品として売り出す時に発案者へ払う物。

 大体新商品は、同じ店で働いている人が発案して開発されて売り出される物で、店が買い取りとして一括で払われるうえに、利益が出れば発案者の給金に若干の上乗せがされる事が多いらしい。

 ただ今回は、店の外部の人間である俺が発案者となるので、買い取りではなく契約として、商品が売れた数の分だけお金を払うようになるらしい。

 そこまで説明されて、ハルトンさんからの注意もあった。


 ハルトンさんが騙すような人じゃないし、俺は公爵家の関係者になっているので、騙そうとする人は少ないだろうという前置き。

 そこから、商品の数を低く報告して本来払わなければいけないお金を払わなかったり、商品一つに対する支払料を少なくして自分達が大きな利益を得ようとする人もいるらしい。

 まぁ、お金が絡む契約関係だと相手を騙してなんていう話は、よく聞く事でもあるな。


「まだ商品その物の価格も決まっておりませんので、はっきり決められませんが……」

「えぇと……」


 ハルトンさんから、スリッパが一つ売れたごとに俺に支払われるお金は、銅貨二枚から三枚。

 大体、二百から三百円ってとこかな。

 スリッパ一つに対して高すぎないかと思ったけど、そもそもの価格が銅貨十枚前後になると見込んでの事だとか。

 発案料が二割から三割と考えれば……いや、それでもちょっと高めかな?


「元々、利益を求めての発案ではないので……一割くらいでも」

「タクミ様は欲がないですな。ですが、それはいけません。タクミ様は公爵家と親しい間柄。公表する事はありませんが、誰かに知られた時タクミ様が侮られ、ひいては公爵家が侮られる事すら考えられます」


 もっと俺へ払うお金を安くして、頑張ってくれるハルトンさんの利益にしたり、スリッパそのものを安くできれば……とも考えて一割程度でと言ったんだけど……。

 ハルトンさんには強めに否定された。


「そ、そこまですか?」

「あり得ますな。ともかく、高ければ良いというわけでも、安ければ良いわけでもないのです。適正価格という物がありますので」

「ま、まぁ、そこまでハルトンさんが言うなら……」


 安く買いたたける相手、と思われて侮られるとかだろうか?

 ともかく、クレア達にも影響が及ぶと言われてしまっては、頷くしかない。

 ハルトンさんが騙そうとしているわけではなく、俺や公爵家の事を考えて言ってくれているんだしな。

 こうして、詳細は商品ができ上がった頃にまた決めるとして、スリッパの試作や商品化をハルトンさんに任せる事になった。



「さて、耳付き帽子の時もですが、これからさらに忙しくなりそうです! タクミ様、また何か思いつかれたら是非教えて下るとありがたいですな」

「ははは、まぁ、思いついたらで……」

「お願いします。では……」


 客間から玄関まで移動し、ハルトンさんの見送り。

 意気揚々と去って行くハルトンさんを、苦笑しながら見送った。

 何か思いついたらって言われてもなぁ……日本での事を思い出せば色々あるんだろうけど、言えばハルトンさんが大変なだけでなく、俺も忙しくなりそうだ。

 ……控えめにしておこうと決めた。


 今でも、セバスチャンさんから駅馬の事も含めて、色々意見を聞かれたりするし、ヘレーナさんから料理の事を聞かれたりしている。

 俺一人で考えられる事、できる事は限られているんだからあれもこれもとはいかないだろう。

 頭がパンクしちゃいけないしな。


「また、体の限界まで働いたりしたくないしなぁ。できれば、のんびりと暮らしたい。ブレイユ村にいる時みたいなのが、理想かな? って、ん……ティルラちゃん?」

「た、タクミさん……」


 ハルトンさんを見送った後、ライラさんが玄関を閉めるのを見てから、独り言を呟きながら振り返る。

 すると、玄関ホールから続く廊下に立って、こちらを見るティルラちゃんを見つけた。

 声をかけると、トボトボと歩いてきて恐る恐るといった感じで俺を呼んだ。

 目がウルウルとしていて、涙目になっているから、クレアやセバスチャンさんにこってり絞られたんだろうなぁ。


「えっと……その……」

「……どうしたんだい?」


 俯き加減の上目遣いで、俺を見ながらまごまごとしているティルラちゃん。

 クレア達に連れていかれてから、色々言われてティルラちゃんが言おうとしている事にも、なんとなく察しがついている。

 けど、こういうのはこちらから言うべきじゃないような気がしたので、優しく先を促すだけに留めておいた。

 上から見下ろすんじゃなくて、しゃがんで目線が合わせられるようにした方がいいか。


「……す、すみませんでした! タクミさんだけでなく、レオ様やリーザちゃんにも迷惑をかけてしまいました!」

「うん。そうだね……」


 ガバっと頭を下げたティルラちゃんが、大きな声で一気に謝る。

 ちゃんと謝れて偉いなぁ……と思うのは、ちょっとティルラちゃんに甘いかな? まぁ、厳しくするのはセバスチャンさんやクレアに任せよう。


「姉様やセバスチャン……だけでなく、他の人達からも叱られました……」

「他の人達?」


 顔を上げて叱られた時の事を話すティルラちゃん。

 クレアとセバスチャンさんだけじゃなかったのかな?


「えぇと……ライラやゲルダはいませんでしたけど、メイド長とか……他にも屋敷の使用人達です。ヨハンナもいました」

「あー……ははは。皆、ティルラちゃんの事を心配していたんだよ」


 何やら、使用人さん達も混ざってティルラちゃんを叱ったらしい。

 大人達が寄ってたかって……という図が頭に浮かんだけど、ラーレがいるとはいえ危険な事をしたからなぁ。

 それだけ、使用人という立場であってもティルラちゃんの事を、親身になって心配していたという事でもあるんだろう。

 ラクトスに向かう途中も、一緒に来ていた人達皆心配そうだったしな――。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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