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試作スリッパの相談をしました



 柔らかそうな試作スリッパの問題点を確かめるため、ハルトンさんに促されて靴を脱いで履いてみる。


「これは……想像していたよりもちょっと……」

「我々も試作して考え、良い案が浮かばなかったのです。なので、今回試作品を見てもらうのと一緒に、相談させて頂こうと考えました。スリッパの発案自体は、タクミ様ですからな」

「うーん……」


 スリッパは、中敷きの部分に厚い布を重ねており、甲を覆う部分は形を崩さないためだろう、内部に何か入っているようで少し硬い。

 中敷き自体は柔らかく足を受け止めてくれるんだけど、布だけなので床の感触がほぼダイレクトに足裏へと伝わる。

 甲の部分が硬いのは我慢すれば大丈夫だろうし、慣れれば気にならないと思うけど……足裏はなぁ。


 このままだと、靴下だけで歩いているのに近い。

 まぁ、外で履いた靴から履き替えれば、床や絨毯が汚れるのは防げて最初に俺が考えた目的は達成されてはいるけども。


「足の裏を受け止める中敷きですけど、ここにクッションというか、柔らかい物を入れる事ってできませんか?」


 スリッパは使っていても、詳しくないのでなんとなくしかわからないが……俺が知っているのは、中敷きにクッション材のような物を使う事で、衝撃を和らげるとかだ。

 ゴムスリッパはゴムそのものが、他のスリッパも綿が入っていたりして、足裏を守ってくれている。

 ……他に目的があるかまでは、俺は知らない。


「ふむ、布を重ねていますので、その間にでしたら可能ですな。少々費用がかさみますか……ですが、柔らかく衝撃を受け止めれば良いだけと考えれば……」

「特に高い素材とかは必要ないと思います。そうですね……」


 ハルトンさんと、試作スリッパを挟んで話し合う。

 要は歩く際の衝撃を和らげればいいだけなので、布にすらなっていない綿を詰めるだけでもいいわけだ。

 製作費用は少し上がっても、大きく影響する程じゃないはず。


「あと、足の甲を覆う部分ですけど……」

「甲表ですな」


 そんな名前なんだ。


「その甲表が、今は足先まで覆っています。それを辞めて、足先を出すようにしてみたらどうでしょうか? その、靴だと普段蒸れてしまうので、足先を出した方が落ち着けると思うんです」

「ふむふむ。靴に関して専門ではないですが、確かに蒸れますな。こう言ってはなんですが、人によっては少々臭ってしまう事もあります」


 この世界で一般的な靴は、革で作られたブーツタイプが多い。

 足を守るという目的があるわけだから、覆ってしまえばいいというのはわかる。

 ブーツの長さも色々とあって、くるぶしの下までしかないブーツというよりほぼ革靴と同じ物や、膝裏くらいまでのロングブーツもあったりと様々だ。

 なんにせよ、足そのものはがっちりと覆われてしまうので、通気性が悪くて蒸れる事が多い……場合によってはハルトンさんが言うように臭いが発生してしまう事も。

 ……小さかった頃のレオは、何故か蒸れた靴の臭いをよく嗅いでいたが、それはともかくだ。


「靴とは違って、楽に脱げるのでそこまで心配はないとは思いますけど……微々たる物ですが、使う布も少なくなるのでないかと思います」

「うぅむ……可能ですが、女性だと足先を出すのに、抵抗を感じる方もいるかもしれませんな」

「そうですね。普段出している事の方が少ないですから」


 できる事だけど、難しいと難色を示すハルトンさん。

 基本的に寝る時や風呂に入る時などを除いて、靴を履いている事が多くて足先を出す事はほとんどない。

 靴下はあるから、裸足というわけでもないんだけど……それでも普段見せない足先が見えるようになるのは、女性が気にしそうか。


「これは、持ち帰って皆と相談させて頂いても?」

「はい、構いません。まだ試作段階ですし、今すぐ必要というわけでもありませんから。こちらも、クレアや屋敷の使用人さん達に、聞いてみようと思います」

「それはありがたいですな。クレア様の意見は、特に重要でしょう」


 この場で全て決めてしまわなければいけないわけでもない、スリッパはランジ村で使うんだし。

 ハルトンさんに頷きつつ、女性の意見として屋敷の人達に聞いてみるのもいいかと思い、提案。

 クレアは貴族だし、上流階級として参考になる意見も言ってくれそうだ。


「では、また試作ができましたらこちらに」

「よろしくお願いします。まぁ、ラクトスに行く事があれば、俺の方からもハルトンさんの仕立て屋を訪ねて様子を見に行きますよ」

「はい、ありがとうございます」


 ティルラちゃんの騒動で、今日もラクトスに行ったばかりだけど……ハルトンさんの店は寄らなかったからな。

 こちらからの用件がなかったからだけど、こんな事なら店に寄っていればハルトンさんがわざわざ屋敷まで来なくても良かった……と思うと、ちょっと申し訳ない。

 次にラクトスへ行った時は、様子を見るだけでも寄ってみよう、冷やかしじゃないから迷惑にはならないだろうし。


「では最後に、スリッパの発案料に関してですが……」

「発案料ですか?」

「はい。今回のスリッパを考えられたのは、タクミ様です。そして、その考えから商品を作るのですから、考えられた方に発案料を払うのは当然の事です」

「そ、そうなんですか……」


 発案料なんてあるんだ。

 まぁ、誰が考えて作り出した物かを明確にするためにも、必要な事なのかな?


「元々、自分のために考えた事なので、儲けるためではないんですけど……」


 新しい家での掃除を楽にするためもあるけど、日本で生まれ育ったのもあって、家の中で靴を履いているというのに違和感がある。

 だから、スリッパなら楽に脱ぎ履きできるし、いいかなと思っただけだ。

 そもそも、発案というなら俺がスリッパそのものを考えたわけじゃなく、日本にあった物なんだけどなぁ。

 とは言え、こちらの世界の人に別の世界で元々あった物と言っても通じないだろうし、この世界では新しい物というのには変わりないか。


「そういった事が、まったく新しい商品に繋がる考えにもなるのですよ。事実、リーザ様にお作りした耳付き帽子は、ラクトスで流行って人気商品となっていますから」

「まぁ、あれもリーザのためと考えて、ですか」

「はい。発案料に関してですが……」



読んで下さった方、皆様に感謝を。


別作品も連載投稿しております。

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■7巻書影■mclzc7335mw83zqpg1o41o7ggi3d_rj1_15y_1no_fpwq.jpg


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完結しました!
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