屋敷へ戻る途中の人達と遭遇しました
イザベルさんのお店から、ハインさんの雑貨屋へと向かう。
朝の騒動があったせいで、いつもより人通りが少なくはなっているけど、屋台などのお店は開かれているし、人も出てきているようなので、騒動自体はほぼ収まったと見て良さそうだ。
「おや、あれは……?」
進行方向から、二人組でそれぞれ馬を曳いているのをセバスチャンさんが発見。
見慣れたというか、少し前までよく見ていた姿……フィリップさんとニコラさんだ。
馬をブレイユ村から、連れて帰って来てくれたみたいだ。
「お、クレアお嬢様。タクミ様に、セバスチャンさんも」
「クレアお嬢様、ただいま帰還いたしました」
「えぇ。フィリップもニコラもご苦労様」
「ワフワフ」
向こうもこちらに気付き、立ち止まってお互い声をかけあう。
レオは、フィリップさん達が連れている馬に顔を寄せて、労うように声をかけた……若干、馬が震えた気がするけど大丈夫だろう。
屋敷の馬はレオにも慣れているから。
「そういえば、何かあったんですか? 東門に到着した時、街に入るのを止められましたが……」
「公爵家に仕える者として、フィリップさんと話し合った後、協力を申し出ようとした頃には何事もなく通れたのですが」
フィリップさんとニコラさんは、少し前にラクトス東門に到着したらしいけど、ティルラちゃんやラーレの影響で足止めされていたらしい。
まぁ、魔物が街中に侵入したわけだから、危険が及ばないように新しく人を街に入れられないか。
多分、すぐに入れるようになったのは、クレアが西門に到着して安全だと保障した報せが行ったからだろう。
「詳しくは屋敷に戻ってから話しますが……」
セバスチャンさんが颯爽と前に出て、二人に簡単に事情を説明……ティルラちゃんが朝早くラーレに乗ってラクトスに来た事と、すぐにクレアや俺達が協力して騒ぎを収めた事を伝える。
「成る程……大体はわかりました」
「詳細は、屋敷に戻ってからね。二人共疲れているだろうから、屋敷に戻って休息を取ってちょうだい。私達に随行しなくてもいいわ」
「はっ、了解しました」
「ご配慮ありがたく。では」
「フィリップさん、ニコラさん。また屋敷で」
「ワフー」
「ばいばーい」
クレアが屋敷で休むよう伝え、礼をした後馬を連れて通り過ぎて行く、フィリップさんとニコラさん。
俺も声をかけて手を振り、レオの鳴き声と、背中に乗っているリーザが手を振って二人を見送った。
ブレイユ村ではのんびりしていたけど、移動したり気を張っていた部分もあるだろうから、しっかり休んでもらいたい。
「そういえば、クレア。ティルラちゃんって小遣い制だったんだ?」
フィリップさん達を見送った後、雑貨屋へ向かいながら、イザベルさんの店で聞いて気になっていた事を聞く。
小遣い制が珍しいとかではなく、単純に気になっただけだけど。
「そうですよ。まぁ、リーベルト家が裕福であるのは貴族だというのを差し引いても、否定できませんけど……なんでもかんでも欲しがって、買える物ではありませんから」
公爵家は商売で莫大な利益を得ているとは聞いているし、屋敷やこれまでを見ていて、裕福と言える暮らしをしているのは間違いない。
ブレイユ村でのんびりさせてもらって、少しは一般との暮らしの差がわかるようになったから。
別に誰かを虐げる事で私腹を肥やしているとかじゃないから、それはいいんだけどな。
「大抵の物は買えますがな。クレアお嬢様は、ある程度旦那様から屋敷周辺の裁定権を渡されているため、ある程度公爵家の資金を扱えますが……私的に利用される事はありません」
公爵家の資金は、基本的に公的資金……領地を治めるために使うものだから、私的利用はしないんだろう。
清廉潔白を地で行くクレアさん達らしいと言えばらしいか。
自分達が使うお金と、貴族として使うお金や領地のために使うお金など、分けて運用しているんだろうな。
「それでも、ティルラお嬢様くらいの頃には、無茶な物を買おうとしていましたが……」
「私の事はいいのよ、セバスチャン」
何それ、クレアがどんな物を買おうとしたのか、気になるんだけど……クレア自身が止めたから追及はできそうにないか。
「タクミさん、ティルラに小遣いをあげているのが、気になったのですか?」
「貴族でもそうなんだなぁ、って気になったのもあるけど……リーザの事で……」
俺やクレア、セバスチャンさんで固まって話している後ろでは、機嫌良さそうなレオに乗った、ティルラちゃんとリーザが楽しく話している。
「リーザちゃんの?」
リーザと聞いて、後ろに視線をやるクレア。
貴族と小遣いって、俺の勝手なイメージでちょっと結びつかないから、気になったというのもある。
でも本題は、リーザに小遣いをあげるべきかどうか、だな。
「屋敷にいると、ほとんど必要性がないように思えるんだけど、ランジ村に行ったら必要そうだなぁって。あと、自分でお金を持つっていうのも、考えて欲しいから」
「屋敷であれば、そもそも何かを買いに行く機会も少ないですからね」
屋敷ではリーザはお客様扱いになっているので、基本的に必要な物は用意される。
ランジ村で暮らし始めても、ある程度は俺達大人が用意するとは言っても、何も買う機会がないわけじゃない。
ブレイユ村でもそうだったんだけど、ちょっとした物や生活必需品などは、小さな商店があってそこで買ったりもするから。
まぁ、食事や生活必需品などはまだしも、リーザだって何か欲しい時にわざわざ俺達に言って、許可を取らなくてもいい、自由なお金がいると思う。
スラムではレインドルフさんがいたし、いなくなってからはお金を持てず、比喩ではなく泥水を啜るような生活をしていたみたいだから……。
ちょっと早いかもしれないけど、お金を使う事とかも覚えて欲しい。
読み書きをデリアさんにお願いすると決めた頃に、この事は考えていたんだけど……なんだかんだ、リーザが物欲みたいなのを見せる事がなかったから、後回しになっていた。
「ふむ、そうですな。お金の価値を自分なりに考えるのにも、小遣いというのは有効でしょう」
「そうね……少し早い気もしますけど」
「でも、教える意味はあるんじゃないかって思うんだ」
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