ニックから相談されました
新年、あけましておめでとうございます!
今年もよろしくお願い致します!!
「あいつら、街道を作るので新しい仕事が来たって、喜んで言っているらしいんですけどね? 大体は働けずに落ち込んで……それだけならまだしも、俺に入れ代わり立ち代わりって言うんですか? 次々と相談というか愚痴というか、話しに来るんです」
「ニックに? それまたどうして……」
セバスチャンさんから、スラムの人達から街道整備に関して働きたいと、応募が多くあるというのは聞いていた。
それに、全てを雇う事ができないのも同じく聞いていたから、驚きとかはないんだが……どうして皆ニックの所へ行くんだろう?
「それが、俺が最近まともに働いているのを見て、どうやって取り入ったのか聞きたいらしくて。俺はアニキに拾われただけで、取り入ったわけじゃないんですけどね……」
「まぁ、確かにな。あれを取りいったとは、誰も思わないだろうからなぁ……まさか、ナイフを突きつけて……」
「アニキ、あの時は本当に……本当に申し訳ありませんでした! 反省していますし、二度とアニキに逆らったりはしません!」
「いや……服従しろと言ったりはしないけど……俺だって間違う事があるんだし、その時には言って欲しいけど」
「何を言うんですか、アニキが間違う事なんてないですよ。アニキが言う事は絶対です!」
うーん……信頼というより、むしろ信奉している感じになっている。
俺だって人間だし、常に正しい事だけができるわけじゃないから、間違っていたら指摘して欲しいんだが、ニックにお願いするのは無理そうだ。
とりあえず、いつか盲目的に信奉するなとは話しておかないといけないから、それからだな。
「まぁ、そういうのは今度話そう。でだ、スラムの人達か……」
「へい! アニキの正しさは絶対ですね! スラムの奴らは、どうしたらいいのか俺にはわからないんです。カレスさんの店で働かせてもらって、誰でも雇えばいいわけではない……というのも教えてもらったんですがね。お店の儲け、雇う人の給金、全員を雇ったら立ち行かなくなります」
「ニックも、色々学んでいるんだな。カレスさんには今度お礼を言っておかないと……ともあれ、そうなんだよなぁ」
盲信してしまってそうな、ニックの言い分については今はスルーしておくとして、スラムの人達。
カレスさんや他の店員さんに教えられて、利益から人を雇える限界がある事を学んだらしいニックが、眉をしかめる。
若干、商売方面に偏っている気はするけど、客商売をしている店で働いているから仕方がないし、間違ってはいないのでいいか。
初めて会った時とは違って、真面目に働いて学んで行っているんだなぁ……とちょっと感慨深い。
「へい、ありがとうございます! まぁ、俺もスラムにいたんで、抜け出したい気持ちはわかるんですが……俺に聞かれてもどうする事もできないんですよ」
「まぁ、そうだろうなぁ。ニック自身が商売しているわけじゃないし、誰かを雇う程の給金を上げているわけでもないからな」
「いえまぁ、一人か二人くらいはなんとかできるくらいは、アニキからもらっているんですが……」
「そうだったか?」
そういえば、少し多めに給金を出していた気がする。
まぁだからと言って、ニックが雇ってもなぁ……一人や二人だったら大きな影響がある程じゃないし。
「こんな俺に、あれだけの給金を下さって……アニキには一生付いて行きますと、いつも寝る前に考えているくらいです!」
「いや……そこまでは考えなくていいんだけど……とにかく、スラムに関してはちょっと何か考えないといけないかもな。何ができるかわからないし……考えた結果何もできないかもしれないけどな」
「アニキなら、きっと素晴らしい方法が考え付くと思います!」
純粋に期待して目を輝かせているニックには悪いが、本当に期待に応えられるかはわからないからな。
俺だって、なんでもできる人間ではないし、天才とかではないわけだし。
とにかくニックには、考えてみるとだけ言ってラクトスへと戻ってもらった。
さすがに俺一人で考えるのは限界があるから、セバスチャンさん達には相談させてもらうけど……いい案が浮かぶといいな。
犯罪者とかは別だけど、真っ当に生きようとスラムから抜け出したい人は、できるだけなんとかしてあげたい。
別に俺は聖人君子じゃないから、無条件で全員助けてやりたいとかまでは、さすがに考えていないしそもそも無理だろうけど――。
「ワフゥ?」
「ん、レオ……どうした?」
「タクミさん、いつもより食が進んでいないように見えますけど……どうかされましたか? レオ様も、心配しているようです」
「あー……ちょっと考え事をしていたから。心配してくれてありがとうな、レオ」
「ワフ」
ニックとの話から少し経って、昼食を頂きながらスラムの事を考えていると、レオが首を傾げて鳴く。
考えに集中していたからか、レオが何を言いたいのかわからず俺も首を傾げると、クレアからのフォローというか心配そうな表情と声。
いかんいかん、せっかく美味しい料理をヘレーナさんが用意してくれているのに、考え事に夢中になってしまっていた。
心配する事ではないと示すように、クレアに笑いかけ、レオにお礼を伝える。
「考え事ですか? それは私が聞いても……?」
「うん、隠す事じゃないから。さっき薬草を渡す時に、ニックから相談されたんだけど……」
「タクミ様、失礼します。旦那様よりの報せが届きました」
「え、俺にですか?」
悩み事とか、誰かに俺が心配されるような内容ではないんだけど、相談するつもりだったしクレアにニックからの話を伝えようとする。
その途中で、セバスチャンさんが裏庭に出て来て、俺にとの事で説明が中断された。
そういえばセバスチャンさん、ニックと入れ替わりで誰かが来たと、対応していたな……エッケンハルトさんからの報せだったのか。
というか、俺にってなんだろうか?
「クレアお嬢様にもありますが、旦那様からの報せは主にタクミ様にです。おそらく、向こうから来る執事などに関してだと思われます」
「そうですか、わかりました。少し待って下さい、今食べてしまいますから。――クレア、さっきの事はまた後で……心配するような事じゃないから」
「はい、わかりました。お父様からですから、そちらの方が優先と言えば優先ですから……」
本年もよろしくお願い申し上げます。
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