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お見合い話に決着が付きました

「私が止めたにも関わらず、クレアはお見合い相手を探して来ると言って本邸を飛び出してな……そんな突拍子もない行動で相手を見付けられても困ると思った私は、自ら信用できる相手を選んでお見合い話を持って来る事にしたのだ」

「……そんな事が……全然覚えてないわ……」

「原因がクレアお嬢様の行動力だったとは……」


 クレアさん……お見合い相手は自分で外に探しに行くものじゃないですよ……。

 これにはさすがに俺も呆れる顔をしてクレアさんを見てしまった。

 行動力があるのは良い事だと思ってたが、こんな弊害もあるんだなぁ。


「しかも、クレアは生まれたばかりのティルラの相手も見つけると言ってな。まだ幼いクレアが結婚相手の男を選ぶなんて出来るわけがないからな。そちらも私が選ぶことにしたんだ。クレアが暴走すると私でも止められんからな」


 つまりエッケンハルトさんは、クレアさんが暴走しないようにお見合い相手を選んで、持って来ていたようだ。


「……初代当主様がお見合い結婚してた話を聞いたのは覚えてます……それに、その後の夫婦仲も良く、幸せに暮らした事も伝え聞いています……ですが、そんな行動をした事を覚えていないなんて」

「……まぁ、それも無理も無いのかもしれんな……ちょうどその後すぐにあいつが亡くなった事で、しばらくクレアは泣いて過ごしたからな。その事が衝撃でお見合い関連の行動を忘れていたのかもしれん」

「……お父様があいつと言うのは……お母様の事ですか?」

「うむ」


 初代当主様は夫婦円満だったようだ。

 そんな事より、クレアさんの母親は亡くなってたのか……。

 そういえばと今気付いたが、クレアさん達から父親であるエッケンハルトさんの話は聞いていたが、母親の話を聞いた事が無かった。

 ティルラちゃんは生まれたばかりだから覚えて無いだろうし、クレアさんは辛い記憶を思い出さないように避けてたのかもしれない。

 もしかして、クレアさんがティルラちゃんの病を心配するあまり屋敷を飛び出したりと、シェリーの事も含めて多少過保護な面があるように思うのは、母親が早くに亡くなってその代わりをと考えてたのかもしれないな。


「お母様……私は覚えていません……」

「ティルラは産まれたばかりだったからな、仕方ない」


 悲しそうに呟いたティルラちゃんに、優しく声をかけるエッケンハルトさん。

 クレアさんは、母親を亡くした時の気持ちを思い出してるのか、少しだけ目を潤ませている。

 エッケンハルトさんはそのまま続けた。


「あいつ……私の妻は産まれつき病弱でな。クレアを産んだ時も危なかったんだが、何とか持ちこたえてくれた。しかし、ティルラの時はどうにもならなくてな……そのまま……しかしな、クレア、ティルラ。あいつは二人を産めた事に満足してたぞ」

「……そうなのですか?」


 ティルラちゃんの問いに頷くエッケンハルトさん。


「あぁ。二人を産めて幸せだったとな。あいつが逝ってから、私が二人を立派に育てなければと考えた。幸い、二人共私に似たのか体は丈夫だったのが唯一の救いだな」


 クレアさんとティルラちゃんはエッケンハルトさん似なのか。

 ……まぁ、容姿に関しては似てないようだけど……あくまで、丈夫さが似たという事だろうな。


「お母様……」


 母親が亡くなった時の事を思い出して涙を流すクレアさん。

 まさかお見合いの話を持って来る理由から、クレアさんの母親が亡くなった時の話になるとは思わなかった。

 ティルラちゃんの方は、母親の事を覚えていないからか、泣く事は無かったがいつもの元気は無く、しんみりとした雰囲気だった。

 俺も人の話とは言え、お世話になっている人の事でもあり、自分の事とも重ねて色々な事が頭をよぎっていた。

 俺の両親は早くに亡くなった。

 事故だったらしいが、幼かった俺はその時の状況をよく知らない。

 父の兄、つまり俺の伯父にあたる人に引き取られ、そこでは随分と可愛がってもらったもんだ。

 伯父家族は優しく接してくれたが、俺は親じゃない伯父の世話になるのが嫌だった。

 反抗期と親恋しさが重なったのかもしれないと今では思うが、高校進学を機にバイトをしながら一人暮らしを始めた。

 伯父家族は色々と心配してくれていたが、それを振り切る形でバイトに打ち込んだ。

 そんな事をしてても、やっぱり寂しかったのもあって、レオを拾って育てる事にもなった。

 レオのおかげで寂しさは紛れたが、伯父さん達に恩を返す事が出来ないままこの世界に来てしまったな。

 仕事を始めたら、今までの恩を返して孝行しようと考えてたのになぁ……結局仕事ばかりで何も出来ていなかった事が悔やまれる。

 ……まぁ、俺の話はここまでにしておこう。


「……お父様、覚えていない事ではありますが、あの時はすみませんでした」

「ははは、お前が初代当主様に興味があったのは良く知ってるからな。気にしないで良い」


 時間が過ぎ、心の整理が出来たクレアさんは、エッケンハルトさんに以前の事を謝った。

 エッケンハルトさんは、笑いながら許し、大きな手でクレアさんの頭を撫でる。

 撫でる手付きが優しいのは、俺の目から見てもはっきりわかる……やっぱり山賊と見紛う風貌でも、父親なんだな……おっと、これはさすがに失礼か。


「それでお父様。お見合いの話は無かった事にしてもよろしいでしょうか? 私は、自分の相手は自分で選びたいと思いますので」

「お前がそう言うなら、そうしよう。今回の相手先には私から断る事にする」

「ありがとうございます」

「ティルラも、それで良いか?」

「私はまだ結婚とかわかりません。だから今はお見合いしなくても大丈夫です」


 ティルラちゃんは結婚がどんなものかまだわからないみたいだな。

 女の子は早熟だと聞くけど、ティルラちゃんは違うようだ。

 まぁ、あのくらいの年頃ならわからなくてもおかしい事ではないだろう。


「わかった。それじゃあ、この話はここまでだな。セバスチャン、私の部屋は用意してあるか? ここまであまり休まずに来たからな。クレア達の顔を見て安心した、一旦休みたいのだが」

「はい。既に用意は済んでおります。ですが旦那様、お休みの前にもう一つお話が」

「……? 珍しいな、お前からそういう事を言うのは。何の話だ?」


 エッケンハルトさんが不思議そうにセバスチャンさんを見るが、そのセバスチャンさんは俺の方にチラリと視線を向けた。

 もしかして、薬草を販売するという話かな?



読んで下さった方、皆様に感謝を。


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