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942/1998

本人から話を聞く事に決めました



「村という一つの集合体として考えれば、それも無理はないでしょう。誰も、不安定になる事は望みません。先程村長を交えて話を聞いた際にも、村の者達を不安にさせる事はしたくないと仰っていました」

「ペータさんなりに、考えての事なんですね……」


 村に余裕がないというわけではないんだろう。

 だけど、新しい事を始めるのはそれだけ、今とは違う手間をかけてしまう事になる。

 現状で満足している状況で、無理をしたり、失敗するかもしれない事への挑戦は賛同されないか……デリアさんの話を聞く感じだと、ペータさん自身も新しい事と考えてはいても、何をどうやればいいのか、と詳細が分かっているわけではなさそうだしな。

 何か挑戦しなければ村の生活が……という状況ならまだしもな。


「私が話を聞いた限りでは、決意は固いようでした。まぁ、本当にタクミ様やクレアお嬢様が雇うかは、別の話ですが」

「セバスチャンさんは、どう思いますか?」

「ふむ……タクミ様の事もあるので、不必要に人を増やし過ぎるわけにはいきませんが……私としては良い事ではないかと。成功するとわかってはいますが、それでも初めての試みではあるのです。ですから、畑に詳しい方を雇うのは賛成です。元々、タクミ様は詳しい方を求めておりましたからな。それに、栽培して放っておいた際の状況も考えねばなりません」

「そうですか、セバスチャンさんは賛成側ですね。まぁ、俺もペータさんがいてくれたら心強いなとは、ここで話していて感じていました。相談できる相手も欲しいですから。でも、あの砂漠化をどうにかできる方法ってあるんでしょうか?」

「それは私にもわかりませんが、何か対処法はわかるかもしれませんな。向こうは畑に詳しい……であれば、土の改良なども手掛けているはずです」


 砂漠化は、『雑草栽培』で作った薬草が成長したり増えたりする状況を、何もせずに放っておいた場合に起きる。

 単純に、土からの栄養を吸い過ぎたために、不毛の土……というより砂漠にある砂のようになる、という事だけど。

 そうなる前に摘んだりするなどで、対処は可能だけど、もしもなった場合やどうしてもそうせざるを得なかった場合に、どうにかするための方法は必要だ。

 それをペータさんができるかはともかく、ヒントなどは得られるかもしれない。


「私にとってのカレスのように、相談できる相手は必要ですね。私も賛成です、タクミさん」

「クレアも賛成……デリアさんは?」

「え、私ですか?」

「もちろん。デリアさんはリーザの家庭教師になってもらうつもりだけど、この村で育ったわけだから、ペータさんを雇っての影響とかも考えてくれるだろうからね」


 本当なら、村にいる他の人達にも聞いてみたいけど、さすがに一人一人話を聞くのは時間がかかり過ぎる。

 この村で育っているデリアさんなら、俺がもしペータさんを雇った際の影響とかも考えてくれると思った。


「えーっと、そうですね……私は同じ村のペータお爺ちゃんが、一緒なら安心と思います。畑仕事の方は、ペータお爺ちゃんはもうほとんどやっていないはずなので、影響は少ないかな。肥料の作り方とかも、教えているはずです。ただ……」

「ただ?」

「この村ではなく、ランジ村に行くとどうなるのか……タクミさんも会ったからわかると思いますけど、年齢が年齢なので。移動はできても、頻繁にブレイユ村に戻って来れるかな? と……」

「それは確かにそうかぁ……」


 ペータさんの年齢は聞いていないけど、見た目で言うなら大体六十代くらいだろうか。

 セバスチャンさんと違って、若々しく元気という事はなく、腰も曲がって来ているようだし、畑の様子を見るのにも椅子に座ってだった。

 ずっと立ちっぱなしでいるのは辛い、とか言っていたからな。

 無理じゃないだろうけど、馬車や馬に乗って移動するのはかなり体力を使うから、ブレイユ村とランジ村を往復するのは簡単ではなさそうだ……。


「……まぁ、そのあたりはなんとなくだけど、どうにかできそうではあるかな?」

「そうなんですか?」

「まだ、はっきりとした事は言えないけど、多分」


 移動に関して、馬車や馬での移動は揺れたりとかもあるけど、時間がかかる事も体力を使う原因の一つだ。

 それに対しては、今フェンリルに協力してもらってやろうとしている駅馬で、解決できるかもしれない。

 駅馬に宿も併設すれば、途中で休息するのも簡単になるだろうし。


「とりあえず、デリアさんも賛成側で考えて良さそうだね。まぁ、俺もどちらかというと賛成なんだけど……畑に関して相談したり話したりする人は欲しいから」


 『雑草栽培』を使うからとは言っても、畑に関する事はちゃんとしておきたい。

 もし砂漠化が広まったら、ランジ村に迷惑がかかってしまうしな。

 この場にいる皆と同じく、俺もペータさんを雇う事には賛成側だ。


「ただ、タクミ様の事は話さなければいけませんな。雇う人員には、元々話す予定でしたので大きな問題ではありませんか」

「タクミさんの事、ですか?」

「デリアさんには、見せたし話した事だよ」

「あ、あぁ!」

「タクミさん、デリアさんにはもう?」

「うん。ちょっと薬草が必要だったし、デリアさんはリーザといてもらうつもりだから……先に話しておこうと思って」


 セバスチャンさんが言うのは、『雑草栽培』の事だろう。

 他の人もいるので、この場ではっきり口には出せないけど、デリアさんには伝わったようだ。

 クレアが首を傾げていたので、デリアさんに説明した事を伝えた。

 セバスチャンさんが何故か悔しそうな表情になったけど……これは『雑草栽培』の説明機会を失ったとか考えていそうだから、気にしなくても良さそうだな。


「なんにしても、ペータさんと一度話してみます。聞いた限りでは、雇う方向で考えていますけど、本人が近くにいるんですから、本人からも話を聞いてみないと」

「そうですな、わかりました。村長にも伝えて、ペータさんとタクミ様が話せる場を作りましょう」

「はい、お願いします。……村長さんからは?」

「本人が希望するのであれば、止めはしないと伺っております」

「なら、ペータさんと話して決めて大丈夫そうで……うん?」

「遠くから何か……?」


 とりあえず、雇う方向で考えながらも本人から話を直接聞いてみようと思い、セバスチャンさんにお願いする。

 面談という程大袈裟じゃないと思うけど、話す場を設けてくれるみたいだ。

 村長さんの方も、ペータさんを引き留めるわけではなさそうなので、安心して話せる……と思った瞬間、遠くから何か声のようなものが聞こえた。

 セバスチャンさん達も聞こえたようで、キョロキョロとしている――。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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申し訳ありません、更新停止中です。
夫婦で異世界召喚されたので魔王の味方をしたら小さな女の子でした~身体強化(極限)と全魔法反射でのんびり魔界を満喫~


― 新着の感想 ―
[一言] 更新有り難う御座います。 砂漠化かぁ……保水性ポリマーだな……。
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