子供の相手はレオのおかげで慣れました
「ほら、それじゃレオの方に行って一緒に遊んで来るといいんじゃないか?」
「うん!」
「おじ……じゃなかった、お兄さんありがとう!」
危ない危ない、レオの方に誘導したはいいが、男の子がおじさんと言いかけたので、目を見開いてしまった。
これじゃ、俺の後ろから圧力をかけていたデリアさんとあまり変わらないなぁ……ちょっとどころじゃなく大人げなかったな。
「タクミさん、凄いです! 私が言っても全然聞いてくれなかったのに!」
「ははは、頭ごなしに注意するよりも、ちゃんと目を見てしっかり話してあげると、わかってくれると思うよ。ほら、ティルラちゃんも行かないと置いて行かれるよ?」
「そうなんですね……あ、リーザちゃん待って下さいー!」
俺が男の子を諭したのを見て、感心するティルラちゃん。
あのくらいの年の子は、頭ごなしに注意されると反発する事が多い。
あと、女の子から言われると尚更、という繊細な男心を持った子もいたりする……十代の頃、学校で真面目な女子に注意されると反発する男子、みたいな事が往々にしてあったりな。
まぁそのあたりはティルラちゃんには関係ないので、とりあえずレオに向かって駆けて行くリーザ達を示し、置いて行かれないよう促した。
「タクミさん、やっぱり子供達の扱いが上手いですね?」
駆けて行く子供達を見送った後、椅子に座り直す俺に、クレアが微笑みながら言った。
今の子供達とのやり取りを観察されていたと思うと、少し恥ずかしい。
「そうかな? まぁ、前にも話したけど、レオと子供達を遊ばせる事が多かったからだと思うよ」
レオを散歩させる時、近所の子供達が集まって来て一緒に遊ばせるようになった。
その際、今は多少の無茶もレオ自身がなんとかするんだろうけど、あの時はまだマルチーズで体が小さかったからなぁ……子供が無茶な事をしようとするのを止めたりと、最初は大変だったな。
子供って、無邪気な代わりに加減を知らないから……それもあって、今のように子供の扱いはある程度できるようになった。
というより、ラクトスやランジ村でもそうだけど、こちらの子供達は素直な子が多いから、諭しやすい。
日本の子供達はなんというか、擦れている子とか時折いたし、親からなのかはわからないけど、変な知識を持っている子とかいたからなぁ……ゲームにしか興味のない子もいたり。
生意気なくらいなら元気だなぁで済ませられるけど、口が達者な子とかもいて、それに比べるとこちらの子供達はやりやすい方だと思う。
それに、子供だからと上から話すと反発されやすい、というのはあるかな。
「私は、孤児院で子供達との接点はありますが……タクミさんのように上手くできません。妹のティルラの事でさえも、タクミさんがいなかったらもっと寂しい思いをさせていたでしょうし……」
「ティルラちゃんに関しては、姉妹で家族だからっていうのもあると思うよ。ほら、エッケンハルトさんともそうだけど、家族だから、姉妹だからで言わなくても自分の事はわかってくれている、みたいに考える事が多かったみたいだし。お見合いの話とかね?」
「タクミさん、その話は……もう!」
「はははは、あれは結局エッケンハルトさんと話していれば、もっと早く解決できた事だから」
「そうなのですけど……」
以前の事を思い出して、恥ずかしそうにむくれるクレア。
最近は本当に、色んな表情を見せてくれるので、からかうセバスチャンさんの心境がわかってしまうなぁ……いかんいかん、やり過ぎないように注意しないと。
ともあれ、家族だから、近い存在だから自分の事が言わなくてもわかってくれる、という事に甘えてはいけない。
これは、伯父さん達に引き取られて、俺が経験した事からそうなんだけど……やっぱり、言葉にしないと伝わらない事って多いからな。
「……どうしたら、タクミさんのように子供達に好かれるんでしょうか?」
「俺の場合は、レオがいるからというのが大きい気がするけど……そうだね。単純に、目線を合わせる事が大事かな? あと、子供だから何もわかっていない、と考えるのは止めた方がいい」
「目線を……タクミさんは、よくティルラや子供達と話す時、しゃがんでいますね。それに、子供だからと……ですか」
ちゃんと目線を合わせて、わかりやすく言ってあげると納得してくれる……というのも、レオを通じて子供達と接したおかげでわかった事。
子供だから、やっぱり大人と比べれば知識が少なかったり、感情のままに、というのが多くはあるけれど、それでも子供だって色んな事を考えている。
でも子供だからという理由で、相手を侮ったり下に見ているとすぐに察してしまうからな……。
子供は子供で、ちゃんと大人を見ているし、色んな事を勉強中ながらも考えているものだ。
……時折、何も考えない子供もいるけれど、それは大体大人の対応が悪くて、考えるだけ無駄という結論を出してしまっているだけだと、俺は考えている。
実際には、色んな子供がいるから、俺の考えが通用しない子供もいるんだろうけど。
「しゃがんで目線を合わせて、同じ高さで見ているんだよって示している感じかな。人と話す時は目を見て話す、がこちらで通用するかはわからないけど……ちゃんと君の事を見て、話しをしているんだと示す事が大事だと思う。それに、子供は子供で大人達を見て色んな事を考えているはずだから……」
「そうなのですね……確かに、カレスからも商談の際には目を見て話すのも重要、と言われました。私は、お父様も含めて貴族の娘として育てられたので、ある意味当たり前の事ではあるのですけど」
「貴族同士の付き合いの際、気もそぞろで目線を外して話せば、腹に一物を抱えているのではないか? と疑われたりもしますからなぁ」
レオに群がって、楽しそうな笑い声を出しながら遊ぶ子供達を眺めて、クレアと話す。
公爵家のご令嬢だから、カレスさんが言わずともそういった教育はされているようだけど……貴族同士の付き合いかぁ。
ドレスを着て、ダンスをしたり立食形式で豪華な料理を食べている華やかなパーティが浮かんだ……実際にはどうなのかわからないし、想像自体も日本でそれっぽいのを見たからだろうけど――。
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