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異世界転移したら飼っていた犬が最強になりました~最強と言われるシルバーフェンリルと俺がギフトで異世界暮らしを始めたら~【Web版】  作者: 龍央


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男の子とリーザを諭しました



「デリアさんはデリアさん。リーザはリーザで、それぞれ違うんだ。君だって、他の男の子とは違うでしょ? 誰かの好き嫌いが、別の人にとっても同じかどうかはわからないんだ」

「……うーん……よくわかんないよ」

「そうだなぁ、例えば君が好きな女の子がいるとするだろ?」

「そ、そんなのいないよ!」


 おっと、男の子が怒ってしまった。

 ティルラちゃんと同じくらいの男の子にとっては、こういう話はデリケートだったかな。

 まぁ、素直になれないお年頃っていうのはあるもんだ。


「それじゃあ、好きな食べ物にしよう。君も好きな食べ物があるだろう?」

「えっと、爺ちゃんが作る燻製肉が好き! 母ちゃんが炙ってくれると美味しいんだ!」

「……まさか、フィリップさんと同じ好みだとは……将来有望なのかどうなのか……まぁ、それはいいか」


 アウズフムラのお肉を焼いた物、とかならわかりやすかったんだけど……意外と渋い趣味をしている男の子だな。


「でも、そんな燻製肉も、あんまり好きじゃないって言う人もいるんじゃないかな?」

「……うん。妹が、あんまり好きじゃないって。だから、僕は我慢して母ちゃん達には燻製肉がなくてもいいよって……」

「そうかぁ、妹思いで偉いなぁ。でだ、リーザは尻尾を乱暴に触られるのが好きじゃないんだ。デリアさんは、掴まえられるのが好きみたいだけどね。つまり、人によって好きだと思う事や、嫌いだと思う事が違うって事、わかるかな?」


 妹思いの男の子だとわかって、これならちゃんと言えば理解してくれるだろうと確信。

 世の中には、人が嫌がる事をするのが楽しいという、性根が捻じ曲がっている人もいるからなぁ……。


「うん……多分」

「た、タクミさーん。私は別に尻尾を掴まれるのが好きってわけじゃ……」


 自信なさそうだけど、素直に頷く男の子。

 他の子供達も一緒に頷いているから、俺の言う事が少しはわかってくれている様子だ。

 後ろから、小さくデリアさんの抗議する声が聞こえる気がするけど……まぁ、尻尾を狙うようになった原因でもあるので、我慢するか後で子供達に弁解するかして欲しい。

 いや、デリアさんが悪いわけじゃないのは、わかっているんだけど。


「よーし、それじゃもうリーザの尻尾を追いかけたりしないね?」

「うん。ごめんなさい……」

「謝るのは、俺じゃないだろ?」


 男の子に確認すると、頷いて小さな声ではあるけど謝る。

 でも本当に謝る相手は俺じゃないから、男の子の頭をくしゃっと撫でて、他の子供達と一緒にデリアさんの足に抱き着いているリーザに向かわせる。


「はい……えっと、ごめんなさい。もう尻尾を掴んだりしないよ……」

「えっと、パパ?」

「うん? リーザの好きなようにしたらいいと思うよ。許して仲よく遊びたいならそれでもいいし、どうしても嫌で許せないのなら、許さなくてもいいから」


 ちゃんと謝る男の子と一緒に他の子達も頭を下げた。

 こういった経験が少ないリーザが、どうしたらいいのかと俺に困った顔を向けたので、許すも許さないもリーザ次第だと伝えた。

 スラムにいた頃は、謝られるなんて事はなく、ただいじめられるのを我慢するだけだったから、むしろ初めてなのかもな……これもいい経験だ。


「許さなくてもいいんですか!?」


 俺の言葉に、なぜかデリアさんが一番驚いていた。

 リーザが驚くならまだしもなぁ……でも、デリアさんの反応はちょっと面白かったりする。


「なんでデリアさんが驚いているのかわからないけど、許せる事と許せない事も、人それぞれだと思うからね。どうしてもリーザが嫌なのに、俺から言われて渋々許すっていうのも、我慢させている事になるでしょ?」

「まぁ、それはそうですし、タクミさんの考えもわかりますけど……てっきり、こうして謝っているんだから、許してあげてって言うのかと……」

「共感はしてあげられるだろうけど、嫌な事をされたのって、本人以外はちゃんとわかってあげるのは難しいと思うんだ。だから、こういうのは本人同士で解決させるのが一番だと思うよ。大人が押し付けるのはよくない」

「そうなのですね……タクミさん、子供達の事をよく考えているんですね……」


 あくまで、俺の考えなんだけども、デリアさんは納得してくれたようだ……というより感心までされているようだけど。

 結局、後々お互いが気にせず仲良くなれるとしても、大人から押し付けられてというのは、子供達だって居心地が悪いと思う。

 それなら、子供達が考えて仲良くなれそうなら許せばいいし、今はまだと思うなら後回しにしていいはずだ……いずれ、何かの機会があった時に、また仲良くなれるかもしれないから……なれないかもしれないけど。


 そんな事をよく考えている、かというと実際そこまででもなく、子供は子供達でちゃんとそれぞれ考えているから侮らずに、一人の人物として接していれば、ちゃんと答えてくれるだろう、くらいにしか考えていなかったりする。

 ……感心しているデリアさんには言いづらいから、心にしまっておくけど。


「んー……本当に、もうリーザの尻尾を掴もうとしない?」

「う、うん。約束するよ」


 俺やデリアさんのやりとりとは別に、リーザが考えて男の子に聞く。

 尻尾を掴まないと約束する男の子の視線は、リーザの尻尾に向いている。

 体で隠し切れないくらい大きいし、二本あるし、ゆらゆら揺れているから視線がそちらに行くのは仕方ないかな。

 揺れる尻尾はすぐ近くのデリアさんの足をくすぐっているけど、いい場面なので、頑張ってもう少し我慢してデリアさん!


「それじゃあ、もうリーザの尻尾を追いかけないなら……いいよ?」

「ほんと?」

「うん! いいよね、パパ?」

「あぁ、リーザがそう決めたんなら、それでいいんじゃないかな?」

「うん、リーザ決めたの!」


 皆に注目されているからか、初めての事だからか、恥ずかしそうにもじもじするリーザは可愛い……じゃない。

 もじもじしながらも、男の子を許して謝罪を受け入れる事を決めたリーザ。

 俺を見上げて窺うのに頷くと、満面の笑みになった。


「くっ……うぅ……タクミさん、そろそろ……」


 おっと、そろそろデリアさんの我慢が限界だ。

 ほぼ解決したので、もう我慢しなくてもいいんだけどな――。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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■7巻書影■mclzc7335mw83zqpg1o41o7ggi3d_rj1_15y_1no_fpwq.jpg


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神とモフモフ(ドラゴン)と異世界転移


完結しました!
勇者パーティを追放された万能勇者、魔王のもとで働く事を決意する~おかしな魔王とおかしな部下と管理職~

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夫婦で異世界召喚されたので魔王の味方をしたら小さな女の子でした~身体強化(極限)と全魔法反射でのんびり魔界を満喫~


― 新着の感想 ―
[一言] 更新有り難う御座います。 キチンとパパしてる!
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