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934/1998

レオがお迎えに来てくれました



 頭の中が大混乱している中、二人で見つめ合う。

 おそらく数秒程度だと思うが、数時間にも時が止まったようにも思えるくらいだ。

 そうして……。


「ワフ、ワフー!」

「はっ!」

「あっ!」


 レオのものだと思われる聞き慣れた鳴き声が、周囲に響いてクレアとお互いハッとなって正気に戻った。

 お互いそんなに早く動けたんだ……と思うくらいの速度で、咄嗟に離れて背中を向ける。


「ワフー! ハッハッハッハ……!……ワフ?」

「あははは……まぁ、気にするな」

「……なんでもありませんよ、レオ様」

「ワフゥ……?」


 暗い宵闇の中、月明かりを反射した銀色の毛をなびかせて、俺とクレアの横を一度通り過ぎたレオが、すぐに方向転換して戻って来る。

 舌を出して嬉しそうな表情をしていたが、すぐに俺とクレアの様子に気付き、首を傾げた。

 苦笑して、クレアと一緒にとりあえず誤魔化したけど、レオの方は納得していないようで、訝し気だ。


「そうだ、フェル達にハンバーグを持ってきたんだけど……」

「ワウ!? ワフ、ワフ……スンスンスンスン!」

「いや、レオはさっき村で食べただろうに」

「ふふふ、レオ様はまだまだ食べたいのですね。美味しいですものね、タクミさんが作ったハンバーグ」

「ワウ!」


 とりあえず誤魔化すために、持って来ていたハンバーグが包まれている袋を持ち上げると、すぐにそちらに気を取られたようで、鼻先を近付けて匂いを嗅ぎ始める。

 ……レオは村でたらふく食べたから、フェルや村に来てなかったフェンリル達の分なんだが。

 微笑みながら話すクレアさんは、気持ちを切り替えたようでさっきまでの、なんとなく気恥ずかしい雰囲気はなくなっていた……残念なような、ホッとしたような……。

 というかレオ、村にいる時も見ていただろうけど、作り方を教えたのは俺でも、村の人達と協力して大量に作ったから、全部俺がつくったわけじゃないんだが……まぁ、いいか。


「それにしてもレオ、俺やクレアさんが来ているってよくわかったな? まぁ、レオにとっては難しい事じゃないんだろうけど……ハンバーグの匂いに釣られたか?」 

「ワフ? ワフワフ、ワフー」

「クレアさんの声が聞こえたから、か。成る程な」

「私の声……あ、さっきの……」


 レオなら気配なりなんなりで、俺達が近付いている事に気付いてもおかしくないが、どうやらさっきクレアが躓いた時に出した声が聞こえて、様子を見に来たらしい。

 色々とぶち壊された感はあるし、さっきから視線がずっとハンバーグの入った袋に向いているけど、俺やクレアを迎えに来てくれたのは素直に嬉しいからな、撫でておこう。


「とりあえず、エッケンハルトさんの時のように、怒るわけにはいかないね……」

「そうですね……お父様と違って、レオ様は私達に何かあってはと考えてくれたようですし。――ありがとうございます、レオ様」

「ワフー! ハッハッハッハ!」


 なんだか、クレアと二人で雰囲気が作られると、何かしらの邪魔が入る運命になっているような気がするけど……それはともかく、覗きに来たとか面白そうだからってわけじゃないので、レオは怒れない。

 クレアも俺の言葉に頷いて、レオにそっと近づいて体を撫でた。

 撫でられて気持ち良さそうに鳴くレオだが、その目線は俺が持つハンバーグから離れない……涎も出ているから、バレバレだ。

 ……フェル達が満足するくらい、ハンバーグが残るか少し心配だ――。



「申し訳ございません、クレアお嬢様。レオ様が急に走り出して、追い付く事ができませんでした……」

「いいのよ。レオ様が走ったら、私達で追う事なんてできないわ」


 しばらくレオを撫でた後、フェルやフェリー達フェンリルと、屋敷から来た使用人さん達が野営している場所に到着する。

 その少し前に、レオを追おうとしていた使用人さんと合流し、クレアに謝っていた。

 どのくらいの勢いでレオが走り出したのかはわからないが、あの大きな体が突然動いたら止めようもないし、追いかけるのも難しいだろうからなぁ。

 クレアの言う通り、使用人さんは悪くない……あんまり急に走り出したりしないよう、レオには言っておこう。


「それで、レオ。なぜかフェルがお腹を出して転んだまま、放っておかれているんだが……?」

「ワフ、ワフワフ」

「躾け? えーっと……?」


 謝る使用人さんと一緒に、テントや焚き火が設置されている野営地へと来ると、その端の方でひっくり返ったままのフェルを発見した。

 仰向けでお腹を見せているのに、誰かが撫でているわけでもない。

 どうしてかとレオに聞いてみると、躾けをしているんだとか……。


「あ、はい。レオ様やフェリーは村の方で夕食を食べたとの事でしたが、フェル達には私達がご用意させて頂いておりました。その際、フェンやリルルはおとなしく待っていてくれたのですが、フェルが……」

「ワフ! ワウワウ!」

「あー、成る程。それで罰というか、教えているんだな……」

「……まぁ、レオ様がその場にいなくて、美味しそうな匂いがしたから、我慢できなくなっても無理はありませんね」


 詳しい説明を求めて一緒にいる使用人さんを見ると、頷いて説明してくれた。

 さらに追加で、レオからお怒りの言葉……早い話が、準備中の食事を横から食べたとか、つまみ食いしたって事らしい。

 クレアにもレオが言った事を教えると、苦笑いしていた。


 元々、ずっと村の近くでデリアさんを見守っていたとはいえ、野生で生きて来ていたんだから、匂いに我慢できなかったんだろう。

 フェルやリルルがいても、レオとフェリーは村で食べている時なので、この場にいなくて止められなかったのもあるか。

 そして、レオがこちらに来た際に話を聞いて、フェルを叱ったのでひっくり返った状態に……というわけらしい。

 まぁ、我慢とか覚えるのは難しいからな……レオもこちらに来てようやく、ちゃんと我慢できるようになったくらいだし。


「キャウー! キャウー!」

「あら、シェリー。迎えに来てくれたのね、ありがとう」

「キャゥ!」


 フェルの事を聞いて納得していると、今度は別の場所から聞き慣れた声と、小さな影が駆け寄ってクレアにじゃれついた。

 小さな影はシェリーで、フェンやリルルと一緒に、親子水入らずで……みたいな感じでこちらにいるようにしたんだけど、やっぱりクレアが来てくれて嬉しい様子。

 尻尾がブンブン振られているからな。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


別作品も連載投稿しております。

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■7巻書影■mclzc7335mw83zqpg1o41o7ggi3d_rj1_15y_1no_fpwq.jpg


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申し訳ありません、更新停止中です。
夫婦で異世界召喚されたので魔王の味方をしたら小さな女の子でした~身体強化(極限)と全魔法反射でのんびり魔界を満喫~


― 新着の感想 ―
[一言] 更新有り難う御座います。 やはり、レオちゃんが居ると安心感が……。
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