セバスチャンさんが楽しそうでした
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「デリアさん、タクミさんの事、ありがとうございました」
「いえそんな! 私は大した事は……」
「ふふ、そんなに畏まったり緊張しなくていいんですよ?」
「そう言われましても……」
フェンリル達の事や、街道整備の話をある程度済ませたのち、クレアがデリアさんに礼をする。
ラクトスで話した事はあるけど、さすがにまだクレアから直接話しかけられるのは、デリアさんにとって緊張する事のようだ。
尻尾や耳をピンと伸ばしている。
そんなデリアさんの反応を見て、微笑むクレアだけど……まぁ、相手が公爵家のご令嬢だから仕方ないか。
「デリアさんがいてくれたおかげで、村の人達にもすんなり受け入れられたから、助かったよ。……一部、勘違いされたりもしたようだけど」
デリアさんのおかげで、今回食事も含めて色々助かっているのは間違いない。
ただ、一緒にいる事が多かった事や、デリアさんが俺に撫でられている際の様子を見られて、あらぬ噂が立ってしまっていたりする。
まぁこれは、フィリップさんが村の女性達にちょっかいを出そうとしていたのも、原因の一つなんだけど……男女として云々、という話を思い浮かべやすかったんだと思う。
「勘違いですか、タクミさん?」
「えーっと……」
「すみません、クレア様。その、木こり衆の親方を含めて、村の人達の中で私とタクミさんが……その……」
「ほぉ、つまり男女のいい仲だと思われているという事ですな?」
「んな!?」
ちょっと言いづらい内容なので、キョトンとするクレアにどう話したものか。
デリアさんも同じく、話しづらそうだ。
その様子を見てピンと来たのか、セバスチャンさんがズバリ言い当てて、クレアが目を見開いて驚愕。
「クレアお嬢様、男女が常に行動を共にしているのです。そういう話になってもおかしくありません。特に、少々閉鎖的になりがちな村では、そう見られる事が多いでしょう」
「あははは……まぁ、そういう事です」
確かに、外から人が来る事が少ない村にとって、男女の話題というのは娯楽になるだろうし、興味も引く事なんだろうなとは思う。
俺もデリアさんも、苦笑しかできないけど……。
「すみません、クレア様がいらっしゃるのに、私なんかが……」
「……い、いえ。デリアさんが自分を卑下する必要はありませんが、そうですか……」
「ほっほっほ、本人達は困惑しているだけのようですが、クレアお嬢様も大変ですなぁ」
「セバスチャンさん、変に煽るのは少々……」
「おっと、ライラさんに怒られてしまいましたな。ここまでにしておきましょうか」
デリアさんに謝られたクレアは、眉根を寄せて何かを考えている様子。
ただ、こういった話になるとセバスチャンさんは本当に楽しそうにするなぁ……説明している時とは別で、こちらも趣味みたいなものなんだろう。
相手が自分の主人なのは、今までもそうだけど、それでいいのかと思わなくもないけど。
隣に座るライラさんから注意されて、ようやくセバスチャンさんがクレアをからかうのを止めた。
まぁ、貴族として澄ました対応をしている時と違って、表情豊かなクレアの反応を見るのが楽しいのはわかるけど。
なんて考えていたら、俺もセバスチャンさんと同類なのかもしれない。
……でもこれ、デリアさんが俺を飼い主だとかっていう話は、しない方が良さそうだ……余計に場を混乱させてしまうだろう。
またそのうち話す、くらいでいいかな。
「あ、そうだ。この後少しレオの所に行って来ますね」
「そうですな。フェン達にも分けてあげなればいけません」
「はい。フェン達、ハンバーグを気に入ったみたいですからねぇ」
夕食は、クレア達が食材を持って来てくれていた事や、村からの歓迎もあって少し前に狩ったアウズフムラのお肉を使ったハンバーグ。
オーク肉のミンチを使ったハンバーグとはまた違った味わいで、屋敷に戻ったらヘレーナさんに教えなければ、と思う程美味しかった……肉汁もたっぷりだったし。
フェリー達が、駅馬などに協力する条件として、ハンバーグや調理した食べ物を欲しがっていたので、お裾分けしないとな。
レオやフェリーは一緒に食べたんだけど、村まで来ていないフェン達は食べていないし、食べさせてあげたい。
フェルにもハンバーグの美味しさを知って欲しいというのもある。
元々お裾分けするために、村の人達にも協力してもらって大量に作っているから、レオやフェリーが追加で食べるとしても大丈夫だろう。
あと、村の人達はアウズフムラのお肉でこういった物が作れると喜んでくれていたし、オーク肉でもできる事を教えておいた。
「……私も、タクミさんと一緒にレオ様の所へ行きます!」
「クレア? でも、夜も遅いから暗いし……」
「畏まりました」
「え、いいんですか?」
デリアさんとの話から、少し考えていたクレアが顔を上げ、俺と一緒にレオの所へ行くと宣言。
でもさすがに、真っ暗な中村の外に出るのは……と思ったら、あっさりセバスチャンさんが頷いた。
「行く場所はレオ様の所ですし、危険はほとんどないでしょう。タクミ様に同行するだけですからな。それに、先程の話から……これ以上は、野暮ですか」
「そ、そうですね。わかりました。それじゃクレア、一緒に行こう」
「はい!」
「……私もと思いましたが、この雰囲気は一緒に行かない方が良さそうですね」
レオがいる場所は森の近くだけど、他の使用人さん達もいるし、そもそもレオやフェリー達フェンリルがいるから、危険というのもほとんどない。
あるとしたら、夜歩きで足下が見えづらいくらいか……そのあたりは、灯りの魔法でなんとかなるだろう。
あと、さっき男女が一緒にいたらという話を気にしてだと雰囲気で伝わり、セバスチャンさんやデリアさんはここで見送るつもりのようだ。
まぁ、ライラさんがセバスチャンさんをジト目で見ているのも、理由の一つなのかもしれないけど。
「はぁ……そういえば、クレアと二人で話す事はあったけど、こうして夜一緒にどこかへというのはなかったか。まぁ、そもそも夜で歩くような事自体がほぼないんだけど」
大量のハンバーグが入っている包みを持ち、家の外で夜空を見上げて息を吐く。
何やら準備をするからと言われて、俺だけ先に外で待っているわけなんだけど……ハンバーグ以外に準備ってなんだろう?
まぁ、女性には何事も準備が必要なんだと思っておこう。
ハンバーグがすっかり冷えてしまっているけど、向こうで温め直せばいいか――。
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